暑い日が続く中、今日は、子どもたちについての気になる話題です。
実は最近「水が飲めない」子どもが増えているそうなんです。どういうことなのか、水ジャーナリストで武蔵野大学客員教授の橋本淳司さんのお話です。
水ジャーナリストで武蔵野大学客員教授 橋本淳司さん
去年の夏に、ある学校の学級通信を見たことが始まりでした。熱中症の疑いがあって保健室に来た子が、水を出しても水が飲めない、と書いていたんですね。幼稚園、小学校の先生50人にヒアリング調査をしたところ、クラスに2、3人くらい水の飲めない子がいると。背景としては、家庭での水飲みの習慣が大きく変化していることですね。少し前であれば、食事の時には水かお茶。でもそこに、ジュースでもいいよ、炭酸飲料でもいいよ、という時代が来た。冷蔵庫の中に、水道水、ミネラルウォーターを冷やしている時代があったんだけれども、今、カフェオレとかジュースとか、炭酸飲料だけがあって「水を飲む」という選択肢がない家庭があるんだと。「水って飲むの?」みたいなことをおっしゃるのに、衝撃を受けている段階です。
水のほかに、今はジュースなど味のついた色々な飲み物があるので、その結果「味のしない」水を飲むのが苦手な子どもが増えているということなんです。
では実際に、水を飲む機会は少ないのか、街でお子さんや保護者のみなさんに聞いてみました。
「中学3年生です。家では麦茶をいつも飲むので、お水は麦茶がきれたときしか飲まないです。味がある方が飲みやすいです。」
「嫌いじゃないけど、好きでもない。冷たい水ならまだ飲めるけど、冷たくないと、飲みたくないなと思ったりもします。」
「促さないと飲まないんですけど、500(ミリ)のペットボトルは飲まないくらいですね。半分くらい、少ないですね。基本は水でどうしても35℃、37℃とか暑い、汗だくみたいなときは、スポーツ飲料とか、使い分けている感じです。」
(子ども)スイーツとか食べているときは、水いけるけど、時によります。」 (母)水筒とかにいっぱい朝入れても、半分も減らないで帰ってきたりするので、ちょっと心配にはなります。コンビニとか行っても、いろんな飲み物があるのでそこから好きなの選んじゃったりとか、水を選ぶ機会が減っているのかなというのは感じますね。」
「冷たい水は飲めるけど常温は苦手」という声や、「水が飲めないわけではないけれど、そもそも飲む量が少ない」といった声もありました。保護者の方は、「学校にいるときなどは把握できないので、せめて家にいるときは積極的に水を飲むよう促している」とも話していました。
こういった「水を飲む習慣」の変化に、さらに2つの要因が加わっているのでは、と水ジャーナリストの橋本さんは指摘しています。1つは、新型コロナウイルスが流行したことで、当時、学校では感染対策として「共同で使う冷水機や水道から直接水を飲まないように」指導されていたこと。もう1つは、熱中症対策として、スポーツドリンクなどを利用しましょうと、呼びかけられたことで、水以外の選択肢がさらに加わったことが考えられると話していました。
子どもたちが「水が飲めない」ことに対して、現場の先生からは懸念の声が上がっているそうです。水を飲めるようにするにはどうしたらいいのかという点も、合わせて再び水ジャーナリストで武蔵野大学客員教授 橋本さんに伺いました。
水ジャーナリストで武蔵野大学客員教授 橋本淳司さん
災害などにあったとき、ペットボトルにしろ給水車にしろ、味のない水が出てくるわけですよね。そのときにこの子たちは飲めるだろうか、とまず心配しています。それからジュースとか、多くの糖分を含んでいるので、虫歯、肥満、糖尿病のリスクもある。家庭の習慣として、みんなで水を飲むということがとても大事で、朝起きたら家族で楽しく水を飲む。みんなで水を飲んでから寝ようね、という習慣をつけていく。学校でも意識的に水を飲ませるようにしている学校があって、「うちの子は水が飲めないので」と保護者の方がスポーツドリンクを持ってくることもあったそうなんですが、みんなで水を飲んだ結果、水が苦手だと言っていた子も次第に飲めるようになったという事例もあります。
最近大きな地震、台風と、災害の心配もあります。「どうしても水が飲めない人に対して強制はできないけれど、水がとれない弊害のようなことは、社会で共有していく必要がある」とも橋本さんは話していました。
水が飲めない子どもが多いというのは驚きましたが、いざというときのためにも、苦手意識はなくしておいた方がいいかもしれません。
(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』取材・レポート:西村志野)