南海トラフ巨大地震 2030年に発生確率が最速最大化!京大名誉教授が警鐘

「8月8日に、宮崎県で発生したマグニチュード(M)7.1の日向灘地震で、気象庁は南海トラフ地震の可能性が高まっているとして、巨大地震注意を発表。地震に備えるよう、呼びかけました。しかし1週間経過して、懸念される事象が確認されないため、15日に呼びかけを終了しました」(全国紙記者)
これで南海トラフ地震の危機は去ったと安心したいところだが、災害危機コンサルタントの堀越謙一さんは警鐘を鳴らす。
「巨大地震発生前には、地震活動は活発化すると考えられています。すでに今年に入ってからも、能登地方(M7.6)、佐渡付近(M6.0)、茨城県南部(M5.3)、岩手県沿岸北部(M6.0)、大隅半島東方沖(M5.1)、豊後水道(M6.6)、神奈川県西部(M5.3)と、M5以上の地震が頻発しており、巨大地震発生の危険性は高まっていると言えます」
南海トラフ区域は南海地震、東南海地震、東海地震の震源地が含まれているが、なかでも今回の日向灘地震は、南海地震との関連が指摘されている。
「注意したいのは、南海地震、東南海地震、東海地震は連動することです。1854年の安政南海地震は安政東海地震の32時間後に発生、1946年の昭和南海地震は昭和東南海地震の2年後に発生しているのです。3つの地震が連動した場合、未曽有の被害へとつながる可能性があります」
『M9地震に備えよ 南海トラフ・九州・北海道』(PHP新書)など多数の著書がある、京都大学名誉教授の鎌田浩毅さんも語る。
「過去、東海から四国までの沖合では巨大地震が規則正しく起きていますが、3回に1回は超弩級です。近い将来に南海トラフ沿いで起こる地震も、東海・東南海・南海の3つの震源域が同時に活動するため“超弩級地震”に当たると考えられます」
南海トラフ発生確率は今後30年で70~80%と予測されるが、鎌田さんはさらに踏み込む。
「過去の南海地震後の地盤の動きの規則性から予測すると、次の南海トラフ巨大地震は、2035年、約5年の誤差を見込んで2030~2040年に発生すると見ています。
また、内陸地震の活動期と静穏期の周期などから予測すると、’38年ごろに発生するという結果です。
こうした複数データを用いると、次の南海トラフ巨大地震の発生時期は2030年代でしょう」
早ければ6年後にやってくる南海トラフ地震では、どのような被害が想定されるのだろうか。
「国の被害想定では、九州から関東までの広い範囲が、震度6弱以上の揺れにおそわれるとしています。特に、震度7が想定される地域は、10県151市区町村に達すると予測されています」
地震予知学が専門の、東海大学・静岡県立大学客員教授の長尾年恭氏も、以下のように語る。
「恐ろしいのは、まず津波。南海トラフの地震は震源が海岸に近いので、駿河湾や静岡県の三保半島あたりは、揺れている最中に津波がくる可能性があります。地震発生から津波が到達するまで、最短で静岡でわずか2分、和歌山で3分、高知県で5分です」
■タワマンの揺れは激しく家具の固定は無意味なほど
さらに南海トラフ地震の場合、長周期地震動といって、強い揺れが長く続くのが特徴だ。
「都市が近代化したことで高層ビルが増えたため、これまで経験してこなかったような、新しい災害が発生しやすいです。
とくにタワマンの揺れは激しくなります。家具の固定も極論すれば無意味で、壁ごと壊れて、5~6m横に動いてしまいます。そもそも大きい家具は置かないほうがいいのです。エレベーターも要注意。大きな混乱が予想され、助けが来るまでに時間がかかることが予想され、最悪の場合はエレベーター内で餓死する可能性すらあるのです」(長尾さん)
経済的被害も人的被害も、甚大になる見通しなのだ。 経済的損失は、内閣府では220兆円を超えると試算。東日本大震災の被害総額16.9兆円の13倍以上。また、犠牲者総数(死者・行方不明者)は最大約32万人、全壊する建物は約238万棟、津波によって浸水する面積は約1千平方kmと、国では想定している。
「日本の総人口の半数、6千800万人が被災すると考えられているのです」(鎌田さん)
さらなる“想定外”に着目するのは、長尾さんだ。
「南海トラフ地震の後には富士山の噴火もありえます」
かりに、富士山の噴火が1~2週間続いたとすると、その間、東海道新幹線や東名高速など主要道路、空港も使用できない。支援物資などの運搬も滞ることになる。
「また、大都市圏に到達する火山灰は、非常に細かいガラス粒子で、電気を通します。パソコンなど精密機械類に入り込めば故障します。IT化された近代都市機能が麻痺してしまうことになるのです」
最悪のシナリオを念頭に、日ごろからの防災意識をより一層、高めておかなければならないのだ。