泣く親も出る“免除の儀式”約2割か…500余りのPTAを対象に実態調査 アンケートを「捨てた」教頭も

社会の変化に伴いさまざまな問題に直面しているPTA。しかし、保護者らによる任意の団体ゆえ、文科省や教育委員会もその実態を十分に把握しているとは言えないようだ。そこで東海テレビは放送エリア内の県庁所在地、名古屋市・岐阜市・津市の市立小中学校、あわせて500あまりのPTAを対象にアンケートを実施した。(アンケート送付は2022年11~12月)
まず尋ねたのは多くの親たちを悩ませている「役員決め」についてだ。クラスごとなどに選出される役員(本部役員以外の「学級委員」や「学年委員」など)の選出方法を聞いたところ、「くじ引き」が40.1%、次に「保護者どうしの投票」が35%と続き、強制的な手法で役員を決めざるを得ない実情が浮かび上がった「立候補のみ」で決定しているとするPTAは13.7%。意外と多い印象を受けるが、後述する「在校中に一人一役」などのルールのもとでの“消極的”“半強制的”な立候補が少なくないようだ。一方、クラスごとの役員選出をしていないというPTAも10.2%あった。役員決めの強制感を減らすため、通年の運営は本部役員のみで担い、活動ごとに参加者を募るスタイルのPTAも増えつつある。
役員選出のルールの有無についても尋ねた。子どもの在学中に必ず一度はなんらかの係を担当しなければいけない「一人一役」制を取っているPTAが32%。役職ごとにポイントが定められ、卒業までに一定のポイントを取得しなければいけない「ポイント制」は6.1%だった。特にルールがないとするPTAは44.7%と多かったが、「“なんとなく”一人一役をお願いしている」といったコメントも寄せられるなど、明文化されていないルールや、やらなければいけない「空気」が引き継がれている場合もあるようだ。 くじなどで役が当たってしまったが事情があり引き受けられない場合の対応も聞いた。「無条件で辞退可能」としているのは19.3%に留まり、会長や教頭が辞退の可否を判断したり、代役を見つければ辞退できることにしているPTAが多かった。

選出の場で事情を説明し、他の保護者が了解すれば辞退可能というPTAも19.3%あった。大勢の前で病気や介護など個人的事情を話さなければいけない手続きは「免除の儀式」などと呼ばれ、泣き出す母親が出ることも少なくないという。
PTAは任意のボランティア団体で、本来は入退会自由のはずだが、入学と同時に自動的、強制的に加入する仕組みを取っている学校も少なくない。アンケートの回答では、「100%の世帯が加入している」というPTAが47.2%と依然多いことがわかった。その一方で、「“ほぼ”100%が加入」など、少数の非会員の存在を示す回答は35.5%。さらに、約1割やそれ以上の非会員がいるPTAも9.1%あった。最も低い加入率だったのは名古屋市緑区の小学校で、65%。津市はほかの2市に比べ「100%加入」の割合が多いなど、地域差も感じられた。 入会の意思確認についても聞いた。入会が任意だと広く知らせていると答えたPTAは、54.8%だったが、「周知の徹底が課題」とするPTAもあり、方法についてはばらつきがありそうだ。入会届(入会申込書)の提出を求めているとしたのは21.8%で、なかには会費の納入のための手続きを入会申込みとみなすところも含まれている模様だ。退会届を用意しているPTAは8.1%に留まった。新年度に向け入会届の準備をしているPTAも複数あり、変化が進んでいることも伺えた。

PTA会費の使い方として、物品やサービスを学校に寄付した実績の有無を尋ねたところ、数多くの情報が寄せられた。コロナ禍において消毒液を寄付したPTAが多かったほか、テントや大型扇風機、スポットクーラーなどの熱中症対策のための物品の寄付も確認できた。特別教室のエアコンや、プロジェクターといった設備など「学校の経費は設置者(市町村)負担」と定める学校教育法上の問題が疑われるケースもあった。給食調理器具を寄付したPTAがあることも判明したが、こちらは給食の施設・設備の経費を市町村負担とする学校給食法との関係が問われる。教室のカーテンのクリーニング費用やプールの清掃費を負担するPTAもあった。 慢性的に学校の予算が不足する中、PTA会費が都合の良い「第二のサイフ」とされているとの指摘は以前からあったが、PTAのあり方がこれまで以上に問われるようになり、各役員も会員にとって納得感のある会費の使い方にするべく苦心しているようだ。この問題については別途ニュースで報じたが、役員の交代などで寄付の実績や詳細が不明だというPTAもあり、アンケートで判明した内容は実態のごく一部とみられる。各教育委員会での調査が望まれるところだ。
今回のアンケートは学校の住所に「PTA会長」の宛名で郵送し、同封した依頼文にもPTA会長に手渡してもらうよう記した。しかし締め切りが近づいても回答はなかなか集まらず、調べると少なくない数の学校で、アンケート用紙がPTA役員の手元に届いていないことがわかった。そこで各学校に電話をかけ、アンケートが学校に届いているか、役員に渡したか確認することにしたが、何人かの教頭からは耳を疑う言葉が返ってきた。「校長と相談し回答する必要はないと判断しました」「学校の判断で捨てました」。アンケートは学校ではなくPTAを対象としたものと説明しても「私たちはPTAのTだ」とまったく話がかみ合わず、途方に暮れたこともあった。「捨てた」とは言わず、「見た記憶がない。手元にない」と繰り返す(しかしなぜかアンケートの内容は知っている様子の)教頭も複数いた。担い手不足の中、PTAの運営が教員任せになっている面もあるのだろうが、任意団体としてのPTAの自主性はかなりないがしろにされていると感じた。 アンケートを再送するなどして、最終的には対象のおよそ4割、197のPTAの協力を得ることができた。中には教頭名での回答もあったが、役員からは「PTAの実態を知ってほしい」と調査を歓迎する言葉や、「『PTAは不要だ』といった一方的な伝え方はやめてほしい」という注文など、様々なメッセージが寄せられた。 東海テレビ「かわるPTA」で取材を続けています。pta@tw.tokai-tv.co.jpまでご意見・情報をお寄せください。