[社説]防衛省概算要求 膨張に「歯止め」かけよ

現存施設の機能強化や部隊の増員に加え、運用基盤を新設する調査費も盛り込まれた。沖縄の「要(よう)塞(さい)化」を加速させかねない予算だ。
防衛省が2025年度予算の概算要求を決定した。要求額は8兆円の大台に乗り、過去最大の8兆5389億円となった。
23~27年度に計43兆円を防衛費に投じる計画の3年目。政府が掲げた「国内総生産(GDP)比2%」の目標に向け、防衛予算は今や青天井だ。
県内の自衛隊施設整備にも初の1千億円台となる約1108億円が計上された。前年度473億円の2・3倍に当たる。
那覇駐屯地の整備に関しては通信防護などを担う現在の電子戦部隊を増強し、新たに「対空電子戦部隊」を配備するなどとして約455億円が計上された。
他国の早期警戒管制機に対処する部隊で、陸上からの電磁波による妨害で管制機のレーダーを無力化し撃墜しやすくなるよう支援する。
電子戦部隊は新たに石垣駐屯地にも整備され県内全域に配備。より実戦に即した軍事拠点化が進む。
加えて先島諸島では、訓練場や物資補給拠点などの運用基盤となる適地を探す。今回初めて周辺地域への影響を検討する調査費が盛り込まれた。
うるま市への陸自訓練場新設を巡っては、突然の計画に地元の反発を招いた経緯がある。新たな調査については、どのような内容が検討されているのかまず県民へ説明すべきだ。
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防衛省の沖縄関係経費では宮古島市、石垣市、与那国町へのシェルター(避難施設)整備の助成経費が初めて盛り込まれた。
ただ、今後の予算配分決定まで金額は非公表とされた。
25年度の沖縄関係経費は前年度から約82億円増の2083億6900万円となったが、さらに増える可能性がある。
今回の概算要求では、敵基地攻撃能力の関連費用も大幅に増額された。
長射程ミサイルの配備が開始されるほか、開発と製造施設整備が盛り込まれた。また、自ら標的にぶつかって攻撃する「自爆型」の攻撃型ドローンの取得費も初めて計上された。
軍備拡張を続ける中国や北朝鮮への抑止力・対処力の向上を目的とするが、かえって軍拡競争を激化させる恐れがある。
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防衛予算は膨らむ一方だが、身の丈に合ったものなのか。23年度予算に計上した防衛費6兆8219億円は1300億円程度が使い残された。
自衛隊員のなり手不足も深刻だ。自衛官候補生の採用率は30%と低迷しており、このままでは高額な防衛装備を導入しても使いこなす隊員がいないという事態にもなりかねない。
米軍基地が集中する県内では標的となる恐れが高まるだけでなく、基地負担の増加も避けられない。
このまま防衛費が膨張すれば専守防衛の形骸化も招く。歯止めが必要だ。