【森永卓郎の本音】見栄っ張りのシブチン

今月20日、岸田総理は訪問先のインドで演説し「自由で開かれたインド太平洋」の新たな推進計画を発表し、途上国のインフラ支援として、2030年までに官民で9兆8000億円の資金を投じるとした。また、インドのモディ首相を5月に広島で開かれるG7サミットに招待した。
その後、岸田総理はチャーター機でポーランドに向かい、陸路でウクライナ入りした。ゼレンスキー大統領との会談で総理は、殺傷性のない装備品支援に40億円と、エネルギー分野などに620億円の無償支援を行う方針を伝えた。さらにゼレンスキー大統領に対し、G7サミットにオンライン参加での招待をした。
岸田総理は、国際舞台でのパフォーマンスが大好きだ。そのためには惜しげもなくカネをバラまく。最近広島空港を訪れたら、空港からの道路を舗装し直していた。G7サミットの準備だという。
その一方で、政府が22日に決めた物価高対策では、5000億円の予算で、住民税非課税世帯に3万円と子供1人あたり5万円を配ることを決めた。21年の「国民生活基礎調査」によると、日本の世帯のうち住民税非課税世帯は22%しかない。しかも、住民税非課税世帯は高齢世帯に集中しているから、高齢者世帯以外でみると、その割合は12%だけだ。現役層の9割は、何の給付も得られないことになる。
物価高で苦しんでいるのは、低所得世帯だけではない。なぜ一律の支給をしないのか。そもそも安倍政権のとき、特別定額給付金の予算は12兆8000億円だった。それと比べると今回の予算は、26分の1だ。
見栄(みえ)を張るためには湯水のようにカネを使い、国民生活のためには徹底的に出し渋る。そんな岸田内閣の支持率がなぜ上昇しているのか、不思議でならない。(経済アナリスト・森永卓郎)