【千葉魂】走り続ける男小島 地道な積み重ねさらに 千葉ロッテ(第440回)

背番号「14」は黙々と走っていた。小島和哉投手は9月14日のライオンズ戦(ベルーナドーム)で7回を投げて無失点。10勝目を手にした。2年連続3度目の2桁勝利。そして、この試合で投球回数は149回3分の1となり、4年連続の規定投球回数到達となった。
一つの大きな通過点に到達した男は翌日、疲れを見せずにベルーナドームのグラウンドに現れると、いつも通り外野フェンス沿いを延々と走りだした。夏の名残を感じる蒸し暑さがこもる中、ライトポールからレフトポールの間を何度も往復していた。
4年連続の規定投球回数到達に関して小島は「本当に親に感謝です。強い身体に産んでいただいた」と口にした。そしてまた走り出した。
走ることは小島にとって大事な日課だ。甲子園を目指した高校時代から走ることの大事さを意識していた。ただ、本当の意味で走ることについて考えさせれられたのは早稲田大学時代。プロの世界で大活躍をしていた憧れの左腕であるホークスの和田毅投手の話を野球部関係者から聞かされた時だ。
「キミたちの4倍は走っていたよ」。それなりに努力を重ねている自負があったが、甘かった。プロに入り、活躍するために、そして憧れの存在に少しでも近づくためにさらに走ることを決めた。その地道な努力が積み重なり、今がある。マリーンズにおいて4年連続でローテーションを1年間、守り続ける唯一無二の存在として名実ともに君臨をしている。
ただ、小島は決して走ることがすべてとは言わない。走ることを積極的に誰かにアドバイスをすることもしない。「ボクにとってはランニングが合っていた。ただ、それがみんなにとって正解かと言われたらボクにはわからない。大事なのはこれと決めたことを継続してやることだと思う」と小島は言う。
アマチュア時代から輝かしい実績と共に歩み、プロでも確固たる成績を残し続けている左腕だが、それを支えているのは日々の積み重ね。小島は自分と向き合い走り続けることで土台を作り自信に変えてきた。
思えば、2年連続2桁勝利と4年連続規定投球回数到達を決めたベルーナドームはプロデビューの場所。2019年4月4日。当時の名称はメットライフドーム。ここで2回を投げて被安打7、4四球、8失点の屈辱を味わい、涙を流した。夜、寮の部屋に戻ると、とめどなく涙がこぼれた。
あれから月日は流れた。悔しさをエネルギーに変えて前に進んだ。そして今はプロの世界で確固たる多くの栄誉を一つ一つ重ね、しかしそれでもいつまでも変わらず地道に走り続けている。小島で始まった24年のペナントレース。チームの先頭を切って最後まで走る。まだまだ積み重ねないといけないものがある。
(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)