【先取りレポ】八芳園「ENJYU」が食文化を想像するレストランに生まれ変わる – 驚きの料理も登場!?

創業80年、東京・白金台にて広大な日本庭園を有す「八芳園」。昨年4月より、新型コロナ感染拡大防止のため営業を休止していた同館内の「ENJYU(えんじゅ)」が「イノベーティブフュージョン」をコンセプトに掲げる食文化創造レストランとして、4月25日にリニューアルオープンする。今回は一足先にその全貌を紹介しよう。

■全国の厳選食材をイノベーティブフュージョン料理に

上品な土壁や「槐樹(えんじゅ)」の花をモチーフとした壁画、趣ある照明、一枚板のカウンターテーブル、額縁のように景色が切り取られた個室など、上質でこだわり抜かれた空間が広がる「ENJYU」。

以前はティーサロンとして親しまれていたが、この春「イノベーティブフュージョン」をコンセプトに掲げる食文化創造レストランへと生まれ変わる。この度のリニューアルでは、メニューを一新し、和・洋・中などのジャンルにとらわれない新しい料理スタイルを提供するという。

食材なども「八芳園」がこれまで築いてきた全国の自治体や生産者とのつながりを生かして調達。それを自由な発想と卓越した技術によって、五感で楽しめる料理へと昇華している。

■日本を旅するように美酒と美食を楽しめる珠玉のコース

リニューアルオープンメニュー(15,000円/人・サービス料別)は、アミューズからデザートまで9品で構成。コース料理に合わせソムリエがセレクトした、日本酒やワインのドリンクペアリングも6杯6,600円で味わえる。

旬の食材を使うため、コース内容は季節に応じて変わるというが、フランス・サヴォワ産の9カ月熟成の生ハムを使った料理は、通年形を変えアミューズとして登場する。一般的な生ハムよりも熟成期間は少し短いが、その分舌触りが良く、しっかりとした塩気とうま味が特徴の生ハムだ。これをイタリア製の手動生ハムスライサー「ベルケル」を使うことで限りなく薄く、肉質を劣化させずにスライスしている。

訪れた際は、三重県鈴鹿産の松の炭を練り込んだイタリアの揚げパン「ニョッコフリット」と、山形県にある「かほくイタリア野菜研究会」が育てたホワイトアスパラガスの炭火焼きを合わせていただいた。生ハムはホワホワと口の中でほどけて溶けていく、いままでにない味わいが印象的だった。

ペアリングの一杯目は、日本人の舌にも合うことからセレクトされたシャンパーニュの「Herve MALRAUD Extra Brut」。存在感を放つ生ハムにも、しっかり寄り添う味わいだ。

そのほか、ドーナツ型をした特製の南部鉄器「タミパン」でフォカッチャ生地を焼き上げる「タミパンフォカッチャ」も通年登場予定。一般的なフォカッチャよりも、外がカリッと、中がふんわりと仕上がるこちらには、お好みでスペイン産のオリーブオイルとマルドンの塩をつけるのがおすすめ。

料理長を務める古山哲シェフはイタリアン出身ということもあり、コースの中でもイタリアンのエッセンスを随所に感じられるのが面白い。

見た目も味も驚きあふれるスペシャリテ
「お店のスペシャリテになるかもしれません」と料理長が話すのは、「甲州ワイン????肉のタルタル」。お肉は実際に食してゲストが当てるスタイルなので、ここではあえて何の肉かは伏せておこう。

ヒントはタルタルの上にトッピングされた鳥。山梨ワインの搾りかすを餌にして育った”ある鳥”のヒレ肉を使ったタルタルは、はね返すような肉肉しい歯ごたえと力強いうま味が舌に残る。クレソンと長ネギのピューレ、石川県能登にある「あんがとう農園」のミックス野草が料理のワイルドさをアシスト。さらに卵ソースがまろやかさを、ピスタチオが小気味いいアクセントをもたらしてくれる。

力強い味わいの一皿に合わせるのは、南フランスのシャルドネワイン「SOLAS」。料理に負けないしっかりとした味わいが特徴で、温度が上がると味わいが変わるため、ゆっくりとその変化も楽しめる。

「阿波尾鶏のトルテリーニ」は、イタリアン出身シェフの技術と食材の実力を遺憾なく発揮した一皿。徳島県のブランド鶏である阿波尾鶏のあんを、自家製パスタで餃子のように包み、阿波尾鶏でとったスープをかけ、イタリア野菜と羊のミルクから作るチーズ「ペコリーノ・ロマーノ」を添えている。

■和食やフレンチのエッセンスも盛りだくさん

このほか、有明産の海苔でサーモンを巻き、鰹出汁ベースのジュレと白ワインビネガー、大葉とパセリのオイルで味付けし、タルティーボという高級イタリア野菜のピクルスを合わせた「八幡平サーモンのモザイク仕立て」も登場。さらに、那須塩原のウドと宮古島産の雪塩を添えた「富山湾白海老フリット」など、全国各地のおいしさが詰まった料理は圧巻だ。

また、今回印象的だったのが魚料理。静岡県産の金目鯛を、那須塩原産の菜の花、レンコンとともにせいろで蒸し上げている。そこに、キャベツとカブのソース、日本酒「東洋美人」の酒粕ソースをそれぞれプラスし、和な趣を演出。料理長をサポートする料理人が和食出身のため、イタリアンだけでなく和の要素が楽しめるのもうれしいポイントだ。

そして、最後のデザートに至るまで、ドリンクのペアリングも抜かりない。「スフレショコラと3種の柑橘 ミルクジェラート」には、ポートワインを合わせダークチェリーのようなコクのある甘さを添えている。

■特別メニューを届ける期間も

そのほか、ここで紹介したメニュー以外にも「ENJYU」では「プレミアムウィーク」(50,000円/人 サービス料込)と称し、年に数回、希少価値の高い食材を使用した特別メニューを期間限定で提供。全国各地で眠る希少な食材をシェフ自らが探し求め、素材の味わい生かして作る特別メニューを、ペアリングドリンクとともに振る舞う。6月21日~26日に行われる第一回目には、月に一頭しか出荷されない、現存する日本原種の牛・見島牛をメイン食材として使用するとのこと。

さらに、今回のリニューアルオープンに先立ちマクアケが運営する応援購サービス「Makuake」にて、乾杯酒シャンパン特典付きのチケットを3月29日~5月30日の期間、枚数限定で発売する。

全国各地の生産者と長年の信頼関係があるからこそ提供される、選りすぐりの食材、その食材の味を最大限引き出すシェフたちの技術、その料理をより一層おいしくするソムリエ厳選のドリンク。そんな魅力あふれる「ENJYU」でぜひ、四季折々の景色とともにジャンルを超えたクリエイティブな料理を堪能してみてはいかがだろうか。

中森りほ 中森りほ グルメ系Webメディアの編集を経て2017年よりフリーライターに。毎月各地を訪れ、ホテルや飲食店を中心に取材、撮影、執筆。フードアナリストの資格も持つ。 仕事実績:https://nakamoririho.com/portfolio/ この著者の記事一覧はこちら