居住用の物件でも、投資用の物件でも、気になるのはその資産性。今後、価格の上昇が見込まれる都内の注目エリアについて、不動産ナビゲーターの渕ノ上弘和さんが解説します。
○有明
「有明」は、国家戦略特区の有明ガーデンを軸にした「シティタワーズ東京ベイ」の流通価格の好調な価格上昇が地価の上昇を押し上げ、東京都・住宅地の基準地価上昇率でトップ5に入りました。未開発である広大な空き地も残っているため、その開発可能性にも期待が高まります。
さらに12日には、複合型スポーツレジャー施設「有明アーバンスポーツパーク」を開業するなど、都・区が単純に「住宅を積み重ねる計画」を採用していないことが、勝どき・晴海などの他の湾岸エリアとの差別化になるとも考えています。
今後の街づくりに注目したいエリアです。
○港区港南
「リビオタワー品川」の盛り上がりは記憶に新しいですが、田町駅と品川駅の間で開発が進んでいるエリアです。現在、最寄り駅となる高輪ゲートウェイ駅へは、駅の西側からしかアクセスができませんが、2025年3月には線路を挟んだ駅の東側・港南地区つながる、歩行者専用道が整備される予定です。駅からのアクセスが向上し、より魅力的なエリアとなるでしょう。
新しい街がつくられ、そこにリビオブランドのマンションができるということは、個人的にはゲームチェンジであると感じています。
ただ、今想定されているマンションの”平米単価200万円”が、妥当か否かは丁寧に考える必要があるでしょう。
○成増
湾岸エリアは、東京の居住用住宅地のベンチマークになりうると考えています。理由は以下の通りです。
キャッチーな好仕様物件が多く供給されている
無電柱化(共同溝)をはじめとした各種防災上のケアが公表されている
歩道・道路等が広くフラットである
こういった住宅地としての魅力は理解できるものの、費用対効果が合わないのでは……? という疑義が生ずると、翻ってもともと人気の高い、「ゲートシティへの利便性が高いエリア」が再度見直される状況が生じます。
このような観点から、各沿線のゲートシティである渋谷・新宿・池袋を軸にその街の利便性を勘案した際、板橋区は私が数年前から注目しているエリアの一つです。
特に直近で割安感があるのが「成増」です。東武東上線、副都心線・有楽町線で主要オフィス街まで30分程度という、現状の住宅としての人気要件を満たしており、賃料を含め伸びてきているエリアと言えるでしょう。
○目黒
2009年のリーマンショック以来の、ファミリータイプ(60平米オーバー)の賃料上昇率は高くないと言えますが、東急沿線として強く、そもそも住宅地ブランディングが優れているエリアです。
ただコロナ禍以降に著しく伸びた湾岸エリアの物件価格を勘案すると、ここ2年程度で割安に見えてしまう状況になっている目黒駅界隈は、もうワンストレッチがあってもよいと思います。
○価格の「上限」なのか「踊り場」なのかを見極めよ
自宅用として購入する物件価格の上限範囲は、住宅ローンの上限範囲の影響を受けます。つまり、年収・収入の観点から上限があると言わざるを得ません。人口の5%と言われる年収1,000万円以上でもペアローンとならざるを得ない、現状成約を見かける1.5億円は一つの価格上限のハードルであると言えるのではないでしょうか。
一方で投資用物件としてみると、若干異なる景色が見えます。利回りだけで動くべきではない、というのは不動産投資の基本ですが、賃料価格が全く上昇しないようなエリアにベットすることも間違いです。投資用物件を購入する際は、賃料をベンチマークに、需給のバランス、マーケットトレンドを見据え、投資家が喜ぶレジデンスを絡めた開発案件がどれだけ続くかがカギになります。
物件購入の際には、価格の「上限」を各街・建物が超えていけるのか、どのように超えていくのかを個別丁寧に見ていく必要があると言えます。
○渕ノ上弘和(ふちのうえ・ひろかず)/不動産ナビゲーター
2000年に立教大学法学部法学科卒業後、コンサルタントとしてECサイト運営会社を起業すると同時に不動産コンサルタントとしても業務を開始。区分所有建物の資産価値マネジメントに従事するため、2008年より住友不動産建物サービス株式会社、2013年より株式会社東急コミュニティーにて区分所有建物の共用部分・専有部分のマネジメントに従事した後、不動産の資産性を流通の側面から評価するために、2018年にコンドミニアム・アセットマネジメント株式会社の設立代表に就任。2022年2月より株式会社MFS不動産投資事業部執行役員として不動産投資総合プラットフォームサービス・INVASEの事業責任者に就任。