圧倒的な走行性能から「ナナハンキラー」の異名をとったヤマハ発動機の名車「RZ350」。最近では人気漫画『東京リベンジャーズ』で乾青宗が駆る愛車として描かれ、再び注目が集まっているかもしれない。今回はレストアで蘇ったRZ350に出会うことができたので、その実力は今でも健在なのか、試乗して確かめてきた。
○750ccバイクを凌駕したハイスペックマシン
高いパフォーマンスから「400キラー」と名高い「RZ250」の兄弟機として、今から40年以上前の1981年に登場した「RZ350」。当時の日本で高性能なバイクといえば750cc(ナナハン)だったのだが、その半分以下の排気量でありながら大きなバイクに負けない走りを見せたRZ350は「ナナハンキラー」と呼ばれ、数々の伝説を残した。
RZ350の外見上の特徴は、「ソノートヤマハレーシングチーム」と同じ配色のホワイトにブルーのラインが入る通称「ゴロワーズカラー」を採用しているところ。性能面でのRZ250との違いはエンジンの347cc化とフロントブレーキのダブルディスク化が挙げられる。
搭載するのは最高出力33kW(45ps)/8,500rpm、最大トルク3.8kg・m(37.3Nm)/8,000rpmの水冷2気筒2ストロークエンジン。車両重量162kg(乾燥重量143kg)の軽量な車体も相まって、パワーウェイトレシオは当時の750ccクラスに肩を並べる3.17kg/psを記録した。
○40年以上前のマシンとは思えない抜群のコンディション
試乗したRZ350は、バイク王&カンパニーが開催するCSコンテスト(整備部門)でグランプリを獲得した車両だ。もともとボロボロだった車体をいったんバラバラにして、現在の形に蘇らせたという。
安全面の問題もありブレーキパッドなどの制動部品は全て新品に交換してあるものの、重要保安部品以外のステーなどはあえてメッキがけやバフがけをせずそのまま使用。これにより、経年劣化による旧車然とした自然な味わいを残しながら、安全に乗れるバイクに仕上がっている。
試乗に向けて、さっそくバイクにまたがる。今では主流となっているセルスターターが付いていないため、エンジンの始動はキックスタート方式だ。
キックペダルを踏み込むと1発でエンジンが始動。そのままアイドリングが安定していることからも、状態のよさがうかがえる。白煙とともにエンジンオイルの焼けた匂いがするのも2ストロークエンジンの特徴だ。
アクセルをひねって走行開始。走りは非常に軽やかで、カーブを曲がるときもキビキビと反応してくれる。今回はワインディングなどの峠道は走行していないが、ナナハンキラーと恐れられた当時の面影の一端が垣間見えた。
走行中は気持ちよく吹けあがるエンジンが奏でる少し甲高いチャンバーサウンドと小刻みに感じる振動が心地いい。これも現行モデルにはないRZ350の魅力といえるだろう。
試乗したRZ350はバイク王の広報車で、イベントなどの際には一般ユーザーも試乗できるとのこと。直近では4月1日~2日に開催予定の「茅ヶ崎絶版車館 OPENING FES」で「憧れの名車を実車体験! 絶版車試乗会」を実施するそうなので、興味があればチェックしてみていただきたい。試乗会にはヤマハ「RZV500R」、ホンダ「NSR400R」、カワサキ「Z1」「500SS」、スズキ「GSX1100Sカタナ」などの貴重なマシンが集結するそうだ。
安藤康之 あんどうやすゆき フリーライター/フォトグラファー。編集プロダクション、出版社勤務を経て2018年よりフリーでの活動を開始。クルマやバイク、競馬やグルメなどジャンルを問わず活動中。 この著者の記事一覧はこちら