“裏金”“統一教会”の萩生田光一を応援する極右勢力と有名テレビコメンテーター 一方、新たな裏金疑惑を検察が捜査開始の報道も

石破茂首相の「大義なき早期解散」により、今月27日に投開票がおこなわれることとなった衆議院選挙。無論、選挙の争点となるのは「自民党とカネ」の問題だが、なかでも審判の行方に注目が集まっているのは、萩生田光一氏が立候補する東京24区だ。
言わずもがな、萩生田氏といえば5年間で2728万円もの裏金が発覚したのに国会の政治倫理審査会にも出席せず、記者会見では安倍派幹部であったにもかかわらずキックバックについては把握していなかったと主張。挙げ句、「党の役職停止」1年という大甘処分に終わった。
しかも、今回の衆院選では政倫審に出席しなかったことによって非公認での立候補となったが、「週刊文春」(文藝春秋)の直撃取材に「ていうかさ、政倫審出ますってちゃんとオンで言ってるから、俺」と返すなど、萩生田氏に反省の色はまるでなし。いや、反省どころか、完全に開き直って「自民党」を前面に押し出した選挙を展開しているのだ。
実際、15日におこなわれた出陣式には、東京25区から出馬している自民党東京都連の井上信治会長と有村治子・参院議員が駆けつけて演説。裏金上位ランカーの非公認候補にもかかわらず、自民都連会長が直々に応援したのだ。
その上、萩生田氏の選挙ポスターや街頭演説の聴衆に配布されたビラには、自民党のシンボルマークとともに「比例代表も自民党へ」の文字が。「比例代表も」って、これではまるで自民党の公認候補のようではないか。
だが、萩生田氏がさらに姑息なのは、選挙戦において「安倍晋三元首相の後継者」をアピールしていることだ。
たとえば、16日にメディアをシャットアウトしておこなわれた萩生田氏の後援会女性部主催の総決起大会では、安倍元首相の妻・安倍昭恵氏が出席。出席者によると、昭恵氏は「主人の後を引き継ぐのは萩生田さん」と応援メッセージを送ったといい、SNS上にも〈萩生田光一さんには何としても当選してもらいたい…と主人が思ってるはず〉と投稿した。
また、17日の街頭演説には、安倍派の極右議員やネトウヨから絶大な支持を集め「反石破」の旗頭となっている高市早苗氏が登場。「萩生田光一という政治家は何をやっても結果を出す。私にとってもまぶしい存在」などと褒め立てた。
さらに、公示前の13日には、安倍応援団の筆頭だった櫻井よしこ氏が「萩生田光一候補国政報告会」に出席。ジャーナリスト・横田一氏のレポートによると、櫻井氏は「私は萩生田さんの応援に徹しようと思います」と宣言した上で「(メディアは)萩生田さんに『裏金議員』とレッテルを貼って(いる)」「安倍さんと同じように左のメディアに不条理に理不尽に叩かれている萩生田さん」などと述べ、萩生田氏と同じ東京24区から出馬した有田芳生氏について「スターリンの名前をもらった共産党主義者のような人が戦いを挑んできている」と攻撃をおこなったという。
安倍派の裏金問題の真相究明も果たされておらず、そればかりか、安倍元首相や萩生田氏らが統一教会幹部らと総裁応接室で面談し、選挙支援を依頼していたという新事実も判明したというのに、逆に「安倍カラー」をウリにして極右の支持を取り付けるとは……。恥も外聞もないとはまさにこのことだ。
しかも、萩生田氏の援軍はこれだけではない。テレビのコメンテーターからも、まるで「萩生田応援団」のような発言が飛び出しているからだ。
たとえば、9月22日放送の「サンデージャポン」(TBS)では、前述した安倍元首相や萩生田氏らと統一教会幹部らの面談問題が取り上げられたが、番組に出演した元経産官僚で「安倍応援団」のひとりだった岸博幸氏は、「総裁応接室を使ったから組織的関係(がある)とは無理がある」とコメント。さらに、「知り合いがいるので萩生田事務所に確認した」「(萩生田氏は)おそらく当日呼び出された」と述べ、「安倍さんが(個人的に)自分でやってる」として安倍氏による独断の結果ではないかと解説したのだ。
安倍元首相が存命中は安倍政権の擁護を連発していた岸氏が、安倍氏に責任をすべて押し付けて露骨に萩生田氏を庇う……。ちなみに、岸氏は先月公開されたYouTubeチャンネル「ReHacQ」(リハック)の番組でも萩生田氏と共演。SNSに〈萩生田さんって、顔はコワモテでとっつきにくそうだけどいい人じゃんと実感〉と投稿している。
「萩生田応援団」説が囁かれているコメンテーターは岸氏だけではない。10月13日放送の「ワイドナショー」(フジテレビ)では萩生田氏ら裏金議員が非公認となったことについて取り上げたのだが、タレントのヒロミが「たしかに裏金は悪いんだけど、僕らは政権を決めないといけないわけだから、自民党がダメだったらどこなのかという選択がわからないというか、ないというか」とコメント。立憲民主党の野田佳彦代表について「そこ(裏金)だけを突っついていると、俺はまだこの話やっているのかというのも少しある」と述べた。
違法な裏金事件を「まだこの話やっているのか」と言うのは問題の矮小化にほかならず、SNS上では批判が巻き起こったが、同時に注目されたのはヒロミと萩生田氏の関係。過去に撮影されネット上に残っているふたりのツーショット写真や、過去にテレビ番組でヒロミが「萩生田さんは我が町、八王子の俺の1個上の先輩なんで。萩生田さんには内閣に入っていただきたい」と発言していたことなどが拡散されたのだ。
公示前とはいえテレビでも萩生田氏を擁護するかのようなコメントが垂れ流される──。このように、裏金・統一教会ともに疑惑のど真ん中にいるにもかかわらず、萩生田氏は強力な援軍を得た選挙戦を展開しているのだ。
だが、果たしてこのまま萩生田氏は逃げ切れるのか。というのも、ここにきて「新たな疑惑」が浮上。それは、自民党東京都連の裏金問題で東京地検特捜部が捜査に乗り出した、という問題だ。
そもそも、萩生田氏には自身の裏金問題だけではなく、代表を務めていた自民党東京都連でも裏金疑惑が指摘されてきた。というのも、東京都連は2023年1月30日に政治資金パーティを開催し、そのために2022年に販売したパー券収入は7646万円であると政治資金収支報告書に記載していたが、「しんぶん赤旗 日曜版」が調べたところ、7団体が購入したパー券代である合計362万円が記載されていなかったのだ。
無論、この362万円はわかった範囲の金額にすぎず、実際にはさらに裏金化していた可能性が高い。現に、安倍派の裏金も、上脇博之・神戸学院大学教授が当初調べた際は4年分で4000万円だったが、安倍派の会計責任者が起訴された際の虚偽記入額は6億7500万円にものぼったからだ。
そして、この「しんぶん赤旗」の調査を受け、今年1月、上脇教授は当時、東京都連代表だった萩生田氏ら3人を刑事告発したのだが、なんと「東京地検特捜部が、水面下で自民党東京都連を捜査中」であると「週刊新潮」(新潮社)10月17日号が報じたのだ。
同誌によると、「特捜部は萩生田氏を捜査の本丸と位置付けている」とし、〈(石破政権の)新執行部は、特捜部の捜査が選挙中に止まると見越したうえで、新たな疑惑が噴き出す前に早期解散に踏み切った可能性は否定できない〉と綴っている。
もちろん、自民党派閥による裏金事件でも及び腰だった特捜部が、「萩生田氏を本丸」にして立件するとはにわかに信じがたい。だが、捜査とは関係なく、萩生田氏には東京都連の裏金疑惑について説明する政治的・道義的責任がある。
にもかかわらず、当の萩生田氏は都連裏金疑惑など、選挙戦においてどこ吹く風。それどころか、自民党が実施したとされる情勢調査の結果によると、萩生田氏は有田氏に差をつけてリードしているという。
萩生田氏が当選すれば、自民党から追加公認されるだけではなく、再び要職につく可能性もある。いや、自民が確実に議席を減らすことを考えれば、選挙後は高市氏を担ぎ上げて石破おろしを本格化させ、党内で再び実権を取り戻すことになるのは間違いない。
裏金2728万円の元安倍派幹部を、そのまま国会に戻していいのか。有権者の意識が問われている。