東京商工リサーチ(TSR)は、国内の主要食品メーカー200社を対象に、2023年1月以降の出荷・納品分で価格改定を公表した商品について調査した。
200社のうち、2023年1月以降の出荷・納品の値上げを公表したのは141社(構成比70.5%)で、値上げ対象は1万8,331品に達し、前回調査(1万5,012品)から3,319品増えた。
原材料の卵不足で、マヨネーズや練り物メーカーなどが値上げを公表したのに加え、調味料メーカーでは「だし」原料のサバや煮干しの供給不足を訴えている。
「だし」関連は、1月からの累計で690品目の値上げが行われている。さらに、海苔の不漁から、6月にかけ海苔メーカーが一斉に値上げを予定している。また、サバの記録的な不漁から「サバ缶」、生乳の生産コスト上昇でバター、チーズ、菓子類の値上げも控えている。
エネルギー価格や為替、人件費等の上昇に加え、卵や海苔など“原材料不足”の影響も広がり、食卓に並ぶ食品の値上げが時間の経過とともに品数を増やしている。
※同調査は、国内の主な食品メーカー200社を対象に、2023年1月1日以降出荷・納品分で値上げを表明した商品を開示資料等を基に集計した。同調査の実施は2023年2月に続き3回目。1回の値上げで複数の商品の値上げが行われる場合の値上げ幅は、平均値を集計した。値上げ、価格改定は、2023年3月24日公表分まで。
値上げ率が判明した120社のうち、各社の値上げ対象の商品から代表的な商品の変動幅を反映し、集計した。
値上げ率のトップは「10%以上」で74社(構成比61.6%)と6割を占めた。次いで、「5%以上10%未満」が26社(同21.6%)で続く。
「20%以上」も13社(同10.8%)と1割を超えた。加工食品や調味料など原材料の高騰を要因に挙げる企業で大幅な価格の見直しが行われている。
値上げ対象の1万8,331品の理由別は、「原材料」が1万6,998品(構成比92.7%)とトップ。次いで、「資源・燃料」が1万6,181品(同88.2%)、「資材・包材」が1万3,291品(同72.5%)と続く。
「原材料」は、鳥インフルエンザ等の影響で品不足が長引く卵に加え、ここにきて魚介系の不漁を挙げる企業が増えている。「だし」原料のサバや煮干しのほか、「海苔」は昨秋以降の不漁を背景に主要3社すべてが6月にかけて値上げを表明している。
価格改定の1万8,331品の分類別では、最多が加工食品の5,813品(構成比31.7%)で全体の3割を占めた。次いで、調味料が4,611品(同25.1%)と4分の1を占めた。
調味料の構成比は、1月の調査で17.4%だったが、2月20.6%、3月25.1%と2カ月連続で3ポイント超の上昇となった。特に、「だし」や「たれ」、「ふりかけ」類の値上げが相次ぐ。メーカーでは「原材料の煮干しやサバ、さんまの高騰が長期化しそう」と先行きを危惧している。
飲料・酒は、大手各社が缶コーヒーの値上げを控えるが、ミネラルウォーターも人気の輸入品で値上げを表明しており、品目数を押し上げた。
主要食品メーカー200社を対象にした集計で、2023年1月以降の出荷・納品分の食品価格の改定は1万8,331品だった。品目数はピークの2月が5,470品だったが、4月は2月に次いで多い5,075品の価格改定を予定していることがわかった。
6月の品目数もすでに2,362品が発表されている。夏商材などを中心に、食品の価格改定はこれからも品目数を押し上げそうだ。
大手企業の春闘は、賃上げ・ベースアップの引き上げが報道されている。だが、人件費の上昇を要因にした値上げ表明は25社にとどまるなど限定的で、これから本番を迎えるか注目される。
コロナ禍の出口を見据え、国内だけでなく中国やアジア地域でも経済活動は再開に動き出している。その余波を受け、国際的な原材料不足による商品価格の転嫁はこれから本番を迎える可能性があり、食卓への値上げの影響は今後も続きそうだ。