物価の高騰、生産者の衰退、低い食料自給率……。「食」を取り巻く状況に危機感を抱く人は少なくないだろう。そんな折に、生協の宅配パルシステムによる学習会「もっといい明日へ 超えトーク」が開催された。学びの多い内容を紹介したい。
○■第1回テーマは「お米で超えてく-正しい栄養知識と魅力を知ろう-」
生活協同組合パルシステムは、首都圏を中心に約160万世帯が利用する食材や日用品の宅配サービス。そんなパルシステムのサステナブルな未来へ向けた取り組みテーマは、「もっといい明日へ 超えてく」である。
その一環として、パルシステムは食料自給率の向上を目指し「お米で超えてく」アクションを開始した。お米といえば、日本の食文化や歴史に深く関わる食べ物なのに、栄養や健康効果などについて知らないことも多い。そんなお米に対する意識や正しい知識、魅力を広く社会に発信すべく、4月6日にオンライン企画が催された。
○■ご飯は意外と太らない? 正しい知識にアップデートしよう
オンライン企画の柱は2部構成で、前半は「お米の正しい栄養知識」と題して女子栄養大学栄養クリニック教授の蒲池桂子(かまちけいこ)さんによる講演であった。
蒲池先生は、栄養学の知見を踏まえながら、「ご飯はエネルギー源となる糖質はもちろんのこと、鉄分も摂取できアミノ酸もバランスよく摂取でき、アレルゲンにもなりにくい」といったメリットを紹介。「ご飯(白米)は炭水化物で糖質が多く、肥満の一因となり得る」という思い込みから解放してくれる内容であった。
またご飯単体で食べるのではなく、多様な食品と組み合わせて食べることで血糖値の上昇を抑制する効果もあるのだそう。世界遺産として登録された「和食」だが、その背景を考えるとき、お米を主食とする日本の食文化における栄養的な要素も見逃すことができない。
ご飯とみそ汁に主菜・副菜を添えるのを基本とする伝統的な日本の献立は、三大栄養素であるたんぱく質・脂質・炭水化物(糖質)をバランスよく摂取できるものとして評価が高い。脂質が多めになりがちな欧米の献立と比較すると、その違いは明確だ。
○■ワンパンで和風パエリアも簡単! 調理中にお米でもう1品
ほぼ完全栄養食ともいえるお米だが、その美味しい食べ方は工夫1つで幾重にも広がっていく。温かいご飯とみそ汁はもはや鉄板の組み合わせといえるが、毎日の食事に取り入れるならば多様なアレンジも楽しみたいところ。
そんな要望に応えるべく企画後半に登場したのが、料理家で酒師でもある吉田愛さん。自炊初心者から料理愛好家の間で人気の「ワンパン料理(フライパン1つで調理が完結する手軽料理)」として、和風パエリアの作り方を指南してくれた。
パエリアのレシピは以下の通り。
赤魚に切り込みを入れ、塩をふる。アスパラを切り、玉ねぎとにんにくをみじん切りにする。
フライパンでバターを溶かし、赤魚を皮目から焼き、あさりを入れ、酒をまわしかけてふたをする。あさりの殻が全て開くまで蒸し煮にしたら、赤魚とあさりを取り出し、蒸し汁も取りおく。
蒸し汁に醤油、みりん、塩を加え、2カップになるように水を足す。
フライパンをふいてオリーブオイルを熱し、にんにくと玉ねぎを入れて炒める。しんなりしたら米を入れ、米の表面が透き通るまで炒める。
3を注いで強火にし、煮立ったら赤魚とミニトマトをのせ、ふたをして弱火で加熱する。
汁けがなくなったら、あさりとアスパラを入れふたをし、強火で30秒ほど加熱後、火を止め8~10分蒸らす。
ここでは、赤魚とアサリ、アスパラとミニトマトを使ったが、旬の素材ならなんでもOK。見栄えも良くお手軽なので、ぜひともレパートリーに加えたいところだ。
吉田さんがパエリアの加熱中に紹介してくれたのが、お米せんべいだ。子どものおやつにはもちろん、「お酒のおつまみにもピッタリ」と、利き酒師ならではの推薦コメントも興味深い。また、炊いたご飯があればあっという間に完成するのが嬉しいところ。
このように、日本が誇るお米の魅力を見直すことで、毎日の食事に積極的に取り入れようと思いを新たにした本企画。お米を食べて、今日よりも明るい明日へ超えていこう!
木村悦子 きむらえつこ 出版社勤務後、編プロ「ミトシロ書房」創業。紙・Webの企画・編集・執筆を行う。著書に『入りにくいけど素敵な店』『似ている動物「見分け方」事典』など。関心領域は、食文化・動物学・占いなど。 この著者の記事一覧はこちら