「末期がん」で余命宣告を受けた男 夫婦強盗殺人で「差し戻し審」始まる 名古屋地裁

末期がんで余命宣告を受けた男の裁判が30日から始まりました。
男は6年前に名古屋市南区で2人を殺害し、現金を奪った強盗殺人の罪に問われ、名古屋高等裁判所が一審の無期懲役の判決を破棄し、差し戻していました。
1月、私たちは「ある男」と面会するため名古屋拘置所を訪れました。
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南区の無職、山田広志被告(48)。2022年2月に医師から余命宣告を受けました。
「すい臓がんでステージ4の末期。5年後の生存率は数パーセントと言われた」
CBC
山田被告は2017年3月、名古屋市南区の住宅で大島克夫さん(当時83)と妻のたみ子さん(当時80)の首などを刃物で刺して殺害し、少なくとも1200円が入った財布を奪った強盗殺人の罪に問われています。
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「自分の罪は重く、命のはかなさを感じた。もともと自分が死刑になることは受け入れていたが、余命宣告されたことで命の尊さを身近に感じる」
2019年に行われた一審では「強盗目的」だったかどうかが争点でした。
検察側は「金品を奪う目的で殺害した」として山田被告に死刑を求刑。
CBC
一方の弁護側は「強盗目的ではなく、殺人と窃盗が成立するにとどまる」と主張しました。
名古屋地裁は…。
「被告人を無期懲役に処する」
山田被告に借金があったものの「殺害してまで金品を奪おうと考えるほど経済的に困窮していたとは考えにくい」として強盗殺人罪を認めず、殺人罪と窃盗罪を認定。
山田被告に無期懲役の判決を言い渡しました。
しかし、その翌年の控訴審は…。

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「原判決を破棄する。本件を名古屋地方裁判所に差し戻す」
名古屋高裁は強盗目的が認められることを前提として、審理を一審に差し戻しました。
それから約3年。
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2022年2月、医師から末期がんの宣告を受け、余命も一緒に宣告されたという山田被告。迫りつつある自らの死と向き合い、犯した罪の重さをかみしめていますが、罪を償うことについては葛藤を抱えたままです。
「死刑判決が出ても、末期がんで先に死ぬと思う。そうなった時、遺族は感情的に納得できないのではないか」
30日、名古屋地裁で行われた差し戻し審の初公判。起訴内容について問われた山田被告は…。
「弁護士さんに全部おまかせしますので」
その後、検察側は一審での主張と同様、事件当日「借金の支払いができず被害者を殺害し金品を奪うことを決意した」と改めて指摘しました。
CBC
一方の弁護側は一審判決での認定と同じく「殺人罪と窃盗が成立し、刺したときは心神耗弱だった」と主張しました。
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裁判は今後、改めて証拠調べなどが行われ、3月2日に判決が言い渡される予定です。