3割以上の荷物が届かない?迫る2024年問題

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4月11日(火)放送後記
1年後に迫った「物流の2024年問題」、来年から宅配便などが大混乱するかもしれない!という問題です。来年4月から、トラック運転手の過酷な労働状況を改善するため、法律で時間外労働に年間960時間の上限を設けることになっています。
運転手の健康のためには必要かもしれませんが、今は人手不足なので、業界では「配送が追いつかなくなるのでは?」という危機感が高まっています。このままだとどうなってしまうのか?野村総合研究所の小林一幸さんのお話です。
野村総合研究所 小林一幸さんこれまではトラックドライバーさん、例えば長時間労働で長距離を走っていても許されたものが、許されなくなるので今まで通りの運び方だと物が運べなくなるという事態が発生しうる状態です。今のまま時間外労働規制が始まるとすると、2030年時点で全国で35%の荷物が運べなくなってしまう可能性があるという推計をしました。インターネットで通販をしても翌日とか、翌々日とかには届くという話があるんですが、時間通りに届かなくなるとか運ぶのが2日に1回、3日に1回になっちゃう、あるいは倍の料金を払わないと運んでくれない、そういうインパクトになってくると思いますので、インパクトの大きな数字が出たなという印象を持っております。

来年から新しい法律が始まって、2030年時点の需要と供給を推計して、出てきた数字が「35%の荷物が運べなくなる」ということなんです。小林さんは解決策として「配送業者が一緒に運べるものは協力して共同配送などに取り組んでいく必要がある」と話していました。
一方私たち、宅配利用者にできることはあるのか伺うと「再配達を減らすこと」という答えが返ってきました。国土交通省の調査では、去年10月の時点で、荷物全体の1割以上が再配達になっていて、国交省は今月=4月を「再配達削減PR月間」として荷物を1度で受け取ってほしいと呼びかけています。
みなさんは再配達にしないために、また配達ドライバーの負担を減らすためにどんなことを心がけているのか、街で聞いてみました。
●「再配達はならないように自分の予定を立てて。知り合いが運送会社で働いている人がいて、時間指定だけど行ったのにお風呂だったのか他の用事だったのか出なかったことがあって、また再配達になると他の分も遅れちゃうというのを聞いたことがあって、受け取れなかったときはどんどん他のが遅れていくんだなということに気付いて、それはちょっと自分も嫌だし気をつけようかなと思ったのがきっかけです。」
●「誰かしらに言っておきますね、うちは。今日届くからとか。」
●「注文はなるべくまとめるっていうのと、日時指定とかをうまいことやるかなと思いますね。ドライバーさんの待遇はもちろん大事なことなので、一利用者としては最大限尊重すべきかなと思います。」

再配達の経験がある人は多かったんですが、それぞれ意識して気をつけていました。「コロナ禍になって宅配を利用する人が増えて、自宅に宅配ボックスはあるものの、ボックスがいっぱいで空きがなくて再配達、ということもあった」という声もありました。私たちも少しでもドライバーさんの負担を減らせるように心がけていきたいですね。
ではこの2024年問題について、現場のトラック運転手の方、当事者はどう感じているのか?働き方の改善になるので好意的かと思いましたが、意外な答えが返ってきました。8年間大型トラックの運転手をしているという藤原加代さんのお話です。
大型トラックの運転手 藤原加代さん働く時間が短くなったからお給料も減っちゃうよ、じゃ困っちゃうんですよね。荷主さんとかが運賃を上げてくれたりとか国が高速道路をトラックは無料にしようよとか、そういう方向性に変わらない限りは大きくは変わらないと思います。運賃が上がれば、じゃあ高速使っても給料みんなに支払えるよねっていうシステムになると思うんですね。運賃が変わらないよってなってしまうんだったら、じゃあ高速道路を無料にしてくれれば、その分今までかかっていた拘束時間って短くできるわけじゃないですか。もう1個、もう2個って仕事ができるようになるから絶対にやって欲しいです。いろんな思いをして働いてきた運転手さんがいい方向に報われるように変わって欲しいなって思います。
大手の配送業者にとってはいい方向に変わることはあっても、藤原さんが勤めていらっしゃるような中小企業には、特にいい影響はないと思うというお話もありました。「もっと現場のことをしっかり見てほしい」とおっしゃっていました。とはいえ、1年後には始まってしまいます。現在、物流関連団体などは問題解決に向けて、荷主などの経済団体に運賃改善を訴える活動を始めているようです。