千葉交響楽団”楽器”に感謝 千葉県文化会館改修前、最後の公演 CF支援者が指揮披露

千葉県内唯一のプロオーケストラ「千葉交響楽団」=千葉市中央区=が、楽団設立時から拠点としてきた県文化会館で、改修前最後のコンサートを行った。5弦コントラバス購入目的のクラウドファンディング(CF)で集まった資金などを基に、恩返しの演奏会として企画。CFの支援者が指揮者やソリストとして登場するコーナーも。「演奏するホールは楽器の一部」と同会館を大事にしてきた楽団。慣れ親しんだ“楽器”との別れに、感謝の思いを込めた。
同会館は今月から改修工事のため全面で閉鎖。改修前最後の公演「千葉響春のオーケストラ祭り ありがとうコンサート」は3月30日に行われた。前半は、新しく仲間入りした5弦バスを紹介し、ベートーベンの交響曲第5番「運命」など5弦バスが生きる楽曲を披露した。
後半は、CFの返礼として指揮者やソリストのコースを選んだ支援者4人が楽団とともに演奏した。支援者の1人、佐々孝信さん(56)=同市美浜区=は、グリンカの歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲を指揮。普段は設備会社で現場監督などを務める傍ら、合間をぬってアマチュアの吹奏楽団でトロンボーンを吹くなどしている。
「吹奏楽やジャズ、ロックのバンドで演奏してきたが、オーケストラだけは経験がない。楽団に交じって演奏するレベルではないので、指揮者をぜひ」と支援を決めた佐々さん。歌劇を鑑賞し、スコアを暗譜して本番に臨んだ。力強い指揮で楽団を導き「とても気持ちが良かった。これからも音楽を続けたい」と誇らしげに話した。
公演はスメタナの連作交響詩「『我が祖国』よりモルダウ」でフィナーレ。壮大な音色がホール一体に響き渡り、観客は称賛の拍手を送った。
楽団の音楽監督、山下一史さんは、ホールの音響によって演奏の仕方を調整するため「演奏するホールは楽器の一部」と強調してきた。拠点を定め、ホールを熟知できたことが楽団の演奏力向上につながったとする。公演後、「お客さんやホールにありがとうが言えたコンサートだった。しばらくは県内を巡回することになる。応援よろしくお願いします」と話した。