[社説]暴行米兵に懲役5年 少女の勇気に応えねば

少女の勇気ある告発が司法の裁きにつながった。
昨年12月、16歳未満の少女を誘拐し性的暴行をしたとして、わいせつ目的誘拐と不同意性交の罪に問われた米空軍嘉手納基地所属の兵長に那覇地裁が懲役5年の判決を言い渡した。
争点となっていたのは、少女の年齢に対する認識と同意の有無だった。裁判所は、少女が16歳未満であることを日本語・英語・指のジェスチャーで伝えたとする主張は防犯カメラの映像などとも整合しており「十分に信用できる」と認め、被告が年齢を把握していたと判断した。
同意の有無について、性的暴行を受けた際に「やめて」「ストップ」と言ったとの主張も「年齢や体格差もある中、恐怖を感じつつも取り得る精いっぱいの拒絶の意思表示としてごく自然だ」とした。
2023年に施行された不同意性交罪では、被害者が13歳以上16歳未満で加害者が5歳以上年上なら、同意の有無に関係なく罪が成立する。
判決は「若年の被害者に対する性的侵害の程度の大きい犯行」「若年の被害者の性的自由に関する意思決定をないがしろにしており悪質さが際立つ」と断じており、法改正の趣旨に沿ったものだといえる。
ただ、初犯であることが考慮され、不同意性交罪の量刑の下限である5年となった。
求刑は7年である。少女が受けた恐怖や心の傷と比べると、十分な量刑といえるのか。
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釈然としないのは、同意の有無に関して那覇地裁が、少女が「やめて」と言うまで、特段の拒絶の意思表示はなく、被告が「同意があるものと誤信していた可能性が残る」と結論付けたことだ。
性犯罪では、被害者が恐怖のあまり声を出したり、抵抗したりできないケースが多々ある。
昨年の法改正で、恐怖や驚(きょう)愕(がく)でフリーズ状態になった場合も不同意と認められるようになったにもかかわらず、疑問が残る内容である。
被害少女は公判に出廷し、5時間にわたる尋問で、つらい体験を詳細に語らなければならなかった。
事件後、自傷行為を繰り返し、夜は眠れず睡眠薬を服用していることを明かした。
継続的な心のケアが必要だ。「あなたは悪くない」と社会がメッセージを伝え続けたい。
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今回の事件のきっかけになった場所は地域の公園だった。生活圏に米兵がいる環境が沖縄では当たり前だ。米軍基地が集中していなければ事件は起きなかったはずだ。
事件を日本政府が県警や県に伝えず、起訴から約3カ月後の6月に報道で明るみに出るなど、公表の遅れも問題になった。
米兵による性犯罪は戦後、連綿と続き、沖縄の女性の人権が侵害され続けている。少女の勇気ある告発に応える責任が日米両政府にはある。これ以上被害者を出さないために。