フランスの安全保障にかかわる企業の親会社であるカナダ企業を、アメリカの多国籍企業が買収。これがフランスで大きな波紋を呼んでいます。
2023年2月、フランスの中小企業セゴーの親会社であるカナダ企業のヴィランを、アメリカの多国籍企業であるフローサーブが買収しました。これが、フランスで大きな波紋を呼んでいます。というのも、セゴーがフランスの安全保障に関わる技術を持っていたからです。
原子力潜水艦のデビューに“外国の許可必要です” 軍需企業の買…の画像はこちら >>ゼゴーのパーツが使われている原子力空母「シャルル・ド・ゴール」(画像:フランス海軍)。
セゴーという会社自体は従業員80人ということで、決して大きな企業ではありません。しかし、1950年以来、同社はフランスで、原子力部門や航空試験台などに使われるバルブを設計および製造してきました。
同社の部品が使われている代表的な兵器には、フランスすべての原子力潜水艦と原子力空母の「シャルル・ド・ゴール」が該当するそうで、原子力ボイラー室に船舶用バルブを提供しています。
ヴィランとその関連会社の買収手続きは、2023年の9月の終わりには完了する予定とのことですが、親会社がアメリカ資本になると、セゴーの技術がアメリカの定める「国際武器取引規則」に抵触する可能性もあり、場合によってはフランスでの部品の供給・販売を拒否されるという事態もありえます。これにより、フランスが現在開発している原子力潜水艦「シュフラン級」に関しても、引き渡しにアメリカの許可が必要になる可能性も出てきました。
ヴィラン買収に関わる最悪の事態を危惧したアルノー・モンテブール前経済相は、同企業の持つ技術を軍事機密であると位置づけ、買収を阻止せよとブルーノ・ル・メール財務相に訴えたとのことです。
モンテブール前経済相は、本国では「メイド・イン・フランスの守護者」と言われるほど、自国企業を海外企業が買収することに敏感な人物だとか。現地報道によると「フランス産を維持するためなら自分で購入することも可能だ」とまで述べているそうです。
なお、セゴーに関しては、政府が既にフランス資本の買い手を探すために動いていると報じられています。
このような事態は、日本で起こったことも。たとえば、日産自動車が1999年3月に仏ルノーと資本提携し、その傘下に入ったことを受け、日産は宇宙航空部門を2000年7月1日に石川島播磨重工業(現・IHI)へ事業譲渡しています。日産は経営効率化を事業譲渡の理由としましたが。国産ロケットのほか、ミサイルにも技術転用可能な固体燃料ロケットの技術を持っていたため、そうした技術が海外企業の傘下にあるのはよくないという判断も働いたのではないかと噂されています。