村上春樹の新作『街とその不確かな壁』重版決定、累計35万部に

新潮社は、村上春樹さんの新作長編「街とその不確かな壁」が、発売6日目で5万部の重版が決定したと発表した。

前作「騎士団長殺し」以来6年ぶりとなる、1,200枚に及ぶ長編小説は、気鋭の版画家タダジュンの装画も話題となっている。40年間の封印を解いて書かれたこの小説に、世代を超えた幅広い層の読者に静かな共感が広がっている。

○村上春樹の<秘密の場所>へ――

十七歳と十六歳の夏の夕暮れ。川面を風が静かに吹き抜けていく。彼女の細い指は、私の指に何かをこっそり語りかける。何か大事な、言葉にはできないことを……高い壁と望楼、図書館の暗闇、古い夢、きみの面影。自分の居場所はいったいどこにあるのだろう。

<古い夢>が奥まった書庫でひもとかれ、呼び覚まされるように、封印された「物語」が静かに動き出す。