GWまでスタッドレスタイヤなの? どう考えても危険で不経済な理由 結局は手痛い出費に?

スタッドレスタイヤから夏用タイヤへの履き替えを、GW頃まで先送りするケースが見られます。地域によっては4月も雪が降りますが、全国的に路面の温度は上昇。そうなると、スタッドレスのままでは何一ついいことがなさそうです。
「マジか、夏タイヤに履き替えちゃったよ…」「札幌山間部、まさかの積雪と吹雪です」 2023年4月16日から17日にかけ、北海道では広い範囲で積雪に見舞われ、Twitterでは「北海道雪」「夏タイヤ」といったワードがトレンドになるほど、多くの人を驚かせました。スタッドレスタイヤから夏タイヤへの履き替え時期は地域により異なりますが、北海道では履き替えたばかりという人が少なくなかったようです。
GWまでスタッドレスタイヤなの? どう考えても危険で不経済な…の画像はこちら >>スタッドレスタイヤ、いつまで履き続けるのか。写真はイメージ(画像:写真AC)。
こうした突然の寒の戻りを心配する人もいるのかもしれませんが、スタッドレスタイヤを、ゴールデンウィークの時期まで履き続けているケースが例年よく見られます。しかしながら、まだ雪が残り気温が低い地域をのぞいては、夏タイヤへ履き替えるべきでしょう。
物価上昇の折、新しい夏タイヤを購入する決断がつかない人もいるかもしれません。しかし、履き替えを躊躇していると、安全面のリスクをともなうほか、ゆくゆく大きな出費を強いられる可能性もあります。

スタッドレスタイヤは、路面温度が低い、路面が凍結している、積雪といった状況でタイヤのグリップを確保するように設計されています。すべりやすい路面でグリップを確保するために、ゴム部分は柔らかい素材で、タイヤを雪面に食い込ませるため、パターンはブロック状になっています。また1つ1つのブロックの接地面には、氷上に薄く張った水膜を排水するためのサイプ(細溝)が刻まれています。
これらはあくまで、上記したような冬の路面でグリップ力を発揮するための構造です。したがって、路面温度が高く、路面が乾いている状態で路面に水が溜まっているという場面が出てくる春以降は、グリップ力が発揮できなくなるのです。
雪や凍結のない路面では冬と比べ車速が上がります。その場合、ゴム部分が柔らかいスタッドレスタイヤは、ゴムが変形しすぎてスリップしやすくなります。そうなるとコーナーで曲がりきれなかったり、ブレーキ制動距離が伸びるようになったりします。
さらに、これらの摩擦に加えて路面温度が温かいことで、タイヤが発熱しやすくなります。タイヤの温度が上がり続ければ、最悪の場合バーストしてしまいます。
また、雨で路面が濡れていると、スリップの危険性がさらに高まります。スタッドレスタイヤは排水機能をもっていますが、それは氷上に薄く張った水膜の排水性に特化しているため、水位の高い水たまりなどを通過することは不得手です。スタッドレスタイヤのブロックに刻まれているサイプは、水たまりの水を排水するには力不足なのです。

したがって、暖かい時期に小雨以上の雨が降る中、車速が高い高速道路などを走行すると、スリップやハイドロプレーニング現象のリスクが高まります。こうしたリスクを避けるために、車速を下げたり、制動距離確保のため車間に余裕を持たせたり、加速やブレーキを緩やかにするといった注意が常に必要になります。
そのような運転を強いられると、五月晴れの天候では目的地に着くまで時間がかかるうえ、運転中は常時ストレスを感じ続ける、ということになってしまうでしょう。
時間と精神面でのデメリットに加え、経済面でも不利なことが生じます。乾いた路面でグリップや転がり抵抗が悪化するので、燃費が悪化しやすくなるのです。
加えて、ゴム部分が柔らかいスタッドレスタイヤは、本来想定されていない温かい路面での使用を続けると、摩耗が急速に進みます。これは夏タイヤを路面温度が低い状況で使った場合も同様であり、タイヤはそれぞれ想定された路面温度で使用するようになっているのです。
Large 230417 stud 02
スタッドレスタイヤで春の雨を走るのは危険をともなう(小林祐史撮影)。
また摩耗が早まるとともに、偏摩耗の弊害も発生します。ブロックがノコギリ刃状に偏摩耗する「ヒール&トウ摩耗」の状態になれば、さらにグリップや制動、燃費が悪化し、次の冬シーズンにはもはやグリップ力を発揮できなくなってしまいます。
出費を躊躇して夏タイヤの買い替えを先送りにした場合、次の冬には新しいスタッドレスタイヤの購入を迫られるかもしれません。これでは経済的には何の意味もありません。経済性をきちんと考慮するなら、季節ごとに適したタイヤを装着する、もしくはオールシーズンタイヤの導入を検討するのが得策といえるでしょう。