[社説]深まる分断 対話あきらめぬ社会に

社会の分断や排外主義が広がっている。
ドイツ、フランス、オーストリア、オランダなどの選挙で極右政党が躍進した。国民の所得格差、中東などからの移民や難民の増加が背景にあり、暮らしに対する不安や伝統的な政党への怒りを反映する。
米国では来年1月にドナルド・トランプ氏が大統領に就任する。
選挙の討論会で、不法移民が犬や猫など住民のペットを食べていると主張するなど、差別をあおるような言動を繰り返した。
米国民はトランプ氏を選んだ。こちらも移民急増で生活が追い詰められたといった不満が要因の一つとなった。移民大国として寛容さを誇りとしてきた米社会が変わりつつある。
トランプ氏はメキシコとの国境封鎖や不法移民の大量送還などを就任初日に独断すると宣言している。
大衆の支持を得た指導者の「独裁化」にも注視しなければならない。
日本では人々の怒りや不信を引き起こすSNSのうわさやデマが選挙結果に影響を与えた。
他の候補を応援するために立候補したり、選挙ポスターを悪用したりするケースも起きた。
候補者を敵か味方かと判断するような考え方の広がりは、従来の選挙制度では対応できない事態を招いている。
沖縄では、名護市辺野古の新基地建設を巡り、政府の強行が続く。
対話を通じて合意形成を図る民主主義の基本が揺らいでいる。
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自然災害とどう向き合うかを考えさせられる一年でもあった。
能登半島地震は、孤立集落の支援の課題を浮き彫りにした。
老朽化した家屋や社会インフラは崩れやすく、復旧に困難を来している。
過疎化が進む地域の被災だ。コストをかけて元に戻すことは現実的ではない、との議論も出ている。
被災地は9月の豪雨の被害も受けた。自然災害の多い日本で、「複合災害」を見据えた対策の必要性を突き付けられた。
沖縄本島北部の豪雨では県が災害救助法を適用できなかったことや、川の氾濫を予測できなかったことなど、初動対応の遅れや事前防災の取り組みに批判が集まった。
経験や教訓をどう生かすか。被災地と対話を重ね、真に望む復興の在り方を模索しなければならない。
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沖縄では今年も、米軍基地から派生する事件や事故が相次いだ。
米兵による少女誘拐暴行事件では、女性団体を中心に抗議する県民大会が開かれた。
参加者たちが「米軍基地問題は人権問題」と改めて訴えたのが大きな特徴だった。
米軍基地が集中し、さらに自衛隊との一体化が進む。住民の負担も不安も増している。
県民の命や暮らしを脅かす不条理を放置せず、一つ一つの具体的な解決策を示すべきである。