「死ね」SNSで殺害予告 “足の感覚なくなる”難病も 不運重なる中日ドラゴンズ福敬登投手が復活登板 家族と乗り越えた「福の開幕」

4月4日、199日ぶりの復活登板を果たした、中日ドラゴンズの福敬登投手。2020年に最優秀中継ぎ投手賞も受賞した左腕ですが、その後はSNSトラブルや、国指定の難病に直面しました。復活を支えたのは家族の存在でした。
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4月4日、二軍戦の試合で復活登板した中日ドラゴンズの福敬登投手。1イニングで三振2つ。0点に抑えた姿に、ファンからは大きな拍手が送られました。
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(中日ドラゴンズ 福投手)「ウルウル来るくらいのものなんですよ。満場一致の歓声は。汚いものは是非とも見せていただきたくないな」
汚いもの…。その事実は、21年11月に行われた、契約更改の記者会見で明らかになりました。
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(中日ドラゴンズ 福投手)「打たれた試合になると、おびただしい数の”殺害予告”が来ます」
中日ドラゴンズの福敬登投手。元々、ファンとの交流のために始めた情報発信の場に、自らを誹謗するメッセージが来たことを明かしました。(中日ドラゴンズ 福投手)「『ホテルのロビーで気をつけて』とか。添付写真に包丁とか。『家の玄関に亡骸二つあるから気をつけろよ』とか。受け手の心境次第で、すごく変わる。球場で言うヤジと次元が違う」
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一方、福投手の妻は、直接恐怖を感じることはなかった、と言いますが…
福投手の妻
(福投手の妻)「誹謗中傷に対して声を上げることが、野球の妨げにならないかな、と不安に思っていました」折しも、SNSでの誹謗中傷を苦に、自ら命を絶った女子プロレスラーのことも問題になっていた頃でした。22年3月。福投手に対し、SNSで「死ね」と書き込んだうちの一人は、愛知県警に侮辱容疑で書類送検されましたが、福投手と示談が成立し不起訴になっています。本人は軽い気持ちで書き込んだことを詫びたといいます。

やっと野球に打ち込めるようになった頃、今度は「病魔」が、福投手を襲いました。
マウンド上で左足を気にする福投手
22年9月、試合中に左足がしびれ、1週間もしないうちに、足の付け根から感覚がなくなっていきました。(中日ドラゴンズ 福投手)「ヤクルト戦で投げて、明らかにおかしい。(足の感覚が)試合中に完全になくなっちゃって。1アウトも取れず、2点取られた。2日後くらいにはもう病院に行って…」
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検査の結果、『黄色靭帯骨化症(おうしょくじんたいこっかしょう)』と診断されました。
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靭帯の一部が骨となり、背骨の神経を圧迫する、国指定の難病で原因も分かっていません。(福島医科大学 加藤欽志講師)「この黄色靭帯骨化症という病気自体が東アジア人、特に日本人と韓国人に多いと分かっています」
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主に50代から60代で発症すると言いますが…(福島医科大学 加藤欽志講師)「20代とか30歳ぐらいで発症するケースは極めて珍しい。世界中でも、日本人の男性の野球選手にしか、医学文献上、報告されていない」「過去のプロ野球選手でも、重症な方だと(症状が)完全に回復しなかったり、しびれが残ったりした選手が何人もいると聞いている」引退したプロ野球選手も過去にはいました。
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福投手は22年10月に手術を受け、成功。23年2月の沖縄キャンプでは、実戦的練習に参加できるまで回復していましたが、桜が開花した頃に開幕した二軍戦には、間に合いませんでした。

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SNSトラブルや国指定の難病、度重なる壁に福投手の妻は…。(記者)「『なぜ夫にばっかりこんなことが起きるんだろう』って思いませんでしたか?」(福投手の妻)「それは思わなかったですね。色んなことを乗り越えたからこそ今がある、と思ってるんで。そこはもう、そういう運命だなと思っています」
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福投手自身は、度重なる不運を嘆いて、やけを起こすことはなかったのでしょうか。(記者)「例えば今独身だったら、野球を辞めていますか?」(中日ドラゴンズ 福投手)「ちょっと考えていたと思います。すごく萎えた気持ちで今いるだろうなって、腐ってたなっていう気持ちはありますね。(そうならずにいられたのは)もうそれこそもう家族のおかげですよ」
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23年4月、葉桜になり始めたころ、ようやく福投手の実戦登板、「福の開幕」がやってきました。
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実戦のマウンドでは思った以上にスピードが出ました。福投手を近くで見てきたコーチは…
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(中日 浅尾拓也二軍担当コーチ)「思った以上に球速が出ていてビックリしたと伝えたら、本人が一番ビックリしていました」マウンドに上がった福投手。首からさげた何かを握りしめていました。
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(中日ドラゴンズ 福投手)「結婚指輪とネックレスです」
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結婚前に妻からプレゼントされたネックレスと、結婚指輪。登板前に握りしめるのが福投手のルーティンです。(記者)「きょうは長かった?」(中日ドラゴンズ 福投手)「長かったですね。今日は長かった。普段あまり考えない娘がどうのこうのとか」
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まずは一歩、わずかに一歩。踏み出し始めた福投手。ファンの待つ一軍のマウンドへ、家族と共に向かいます。