拳銃で射殺された6代目山口組の3次団体「湊興業」(神戸市須磨区)の組長は、司忍組長と杯を交わした弘道会直参の大物極道で、普段は中華そば「龍の髭」の店主として厨房に立ち、人気メニュー「長田テールラーメン」(750円)を作っていた。
22日午前11時ごろ、神戸市長田区東尻池町のラーメン店の厨房内で、店主の男性が鼻や口から血を流してあおむけに倒れているのを買い物から帰った女性従業員(65)が見つけ、119番した。ケガの状況から口に銃口を突っ込まれた可能性もあるが、店内に争った形跡はなく、CT検査で頭部に銃弾が残っているのが確認された。
亡くなった男性は湊興業の余嶋学組長(57)。兵庫県警は暴力団同士の抗争に巻き込まれたとみて捜査を進め、付近の防犯カメラには犯行時間に若い男が店を訪れ、走り去る姿が写っていた。
ネット上には、余嶋組長について《東尻池のラーメン店で昼間厨房に立ってるのは、神戸では有名であり紛れもない事実。現在、山健組からの返しを恐れ厨房にも立てず、逃げ回っているのも事実》という4年前の書き込みがあった。
湊興業は6代目山口組の中核組織「弘道会」(名古屋市)の神戸唯一の直系組織。一方、山健組(神戸市)は当時、対立を続ける神戸山口組の中核組織だったが、2021年、一部が6代目側に復帰。神戸側には現在も山健組の残留勢力がいる。
「弘道会総裁で6代目山口組の高山清司若頭は、上納金の取り立てが厳しく、余嶋組長も組からカネの支払いを求められ金銭トラブルを抱えていたという話もある。警察の取り締まりが厳しくなりシノギに困っていたのではないか。他に組員はおらず、湊興業の事務所も使用禁止になっていた」(捜査事情通)
■7年前から「二足のわらじ」
山口組が分裂したのは15年8月。余嶋組長は9カ月後の16年5月、ラーメン店をオープンしたが、その2カ月前、須磨区の組事務所が何者かに荒らされている。その後、須磨区から、店を構える長田区に転居。
店の前には、「姫路」や「和泉」ナンバーの黒塗りの高級車が、しょっちゅう止まっていたという。
「深く付きおうたらあかんタイプいうことは分かったんやけど、さすがに『あんたヤクザちゃうんか』とは聞かれへんしな。口さがない人は『ヤクザちゃうの』と言うとったけど、事件後、組長やったって聞いて、皆『そんなVシネみたいなことあるんやな』ってびっくりしとったわ。ヤクザの世界も厳しいんやろうな。長田名物のぼっかけが入ったラーメンが550円と安く、具材は製麺屋と精肉屋から仕入れる本格的なラーメンで、バイトやパートも雇うとった。厨房に入って汗をかきながらマジメにラーメン作ってはったし、食べログの評価も高かった」(近隣住民)
19年には、息子が経営する尼崎市の居酒屋を手伝っていた神戸山口組の幹部が、弘道会系の元暴力団員に自動小銃で射殺される事件が発生。幹部は当時、シノギに困り、捜査員に「金がないんや」とコボしていた。
ヤクザ稼業では飯が食えず、糊口をしのぐためにラーメン店を始め、抗争に巻き込まれたとしたら、哀れな人生だ。