急増する“ボロボロ空き家”約385万戸 「瓦が落ちた」「トタンがどこに飛ぶかわからない」“壊すだけでは追いつかない”実態

放置された「空き家」は、そのままだと治安や住環境の悪化などにつながります。名古屋市中村区にも近隣住民を悩ませる崩壊寸前の空き家が。
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CBC
名古屋市は、3年前から県外に住む80代の所有者の男性に対し、撤去するよう指導を繰り返してきましたが応じてもらえませんでした。そして30日。名古屋市は持ち主に変わって解体する「行政代執行」に着手しました。いわば”最後の手段”に踏み切ったのです。
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空き家の放置が全国で問題になってきたのは2010年代に入ったあたりでした。(記者)「柱が完全に腐っている」名古屋市瑞穂区にある当時築50年以上のアパート。2階の通路を支える柱の根元は腐り、激しく老朽化。郵便受けの中もチラシやゴミであふれています。(当時の地元の区政委員・当時)「いたずらで(火のついた)たばこ投げられたら危ない」
一方、近くにあるこの住宅も。(当時の地元の区政委員)「瓦がないでしょ。1か月くらい前に瓦が落ちた」(記者)「天井も落ちている。壁と」土地と建物の所有者は介護施設に入っていた当時90代の女性。建物は完全に放置され。荒れ放題でした。
空き家は外壁がはがれたり、ひびが入るなどの破損が、周辺の住民に危険を及ぼすだけでなく、放火の現場やゴミの不法投棄場所になるなど、治安の悪化につながる恐れも。解体業者も当時、放置された空き家への懸念を強めていました。(解体業者 2014年)「倒壊寸前で壁がよりかかったり、未処分の建物が多い」
こうした中、国は2015年、空き家対策の特別措置法を施行。(空き家等対策の推進に関する特別措置法)危険なものについては、行政による強制撤去「行政代執行」ができるようになったのです。
2018年。三重県菰野町の住宅街では。(記者)「あちら、物置小屋が倒壊している」20年以上使われていなかった、トタン張りの物置小屋。壁は崩れ、隣の家へ倒れかかっています。
(記者)「トタン屋根が完全に抜け落ちていて、草木は隣りの家にまで伸びています」住民からは。「(物が飛んでくることが)ある。トタンが腐っている。台風などで強風が吹いたときはどこに飛んでいくかわからない」菰野町は10年以上にわたり、持ち主に撤去を求めていましたが、解体費用がないとして放置が続いていました。そして。(当時の町の職員)「行政代執行法による解体工事をすることを宣言します」ついに町が強制撤去することに。(当時の町の職員)「所有者に指導しても解体されなかった。第三者に危害が及ぶので、行政代執行に至った」
これが東海地方初の「行政代執行」でした。撤去費用50万円は町に返還されず、土地は行政のものとなり、今は道路になっています。
そして2020年、名古屋市南区でも。(当時の名古屋市空き家対策担当織田和隆さん)「見ての通り本当に危険な状態。所有者にいろいろ働きかけをして、ようやく取り壊しに結び付いた」長年放置が続いた原因は、相続人が多かったため。何十人もの権利者に同意を取ってようやく行政代執行にこぎ着けました。
核家族化が進む中、実家が空き家となって放置されるケースも増えているのです。当時の担当者からはこんな言葉も。(当時の担当者 織田さん)「行政だけではやりきれない。空き家壊すだけでは追いつかない。空き家になる前に使ってもらうのが大事」現在放置されている全国の空き家は実に385万6千戸。この数は今も増え続け、出口の見えない国の深刻な課題となっています。