飛行機の後ろに細く長く筋をひく「飛行機雲」。飛行機が飛ぶだけでそのような雲ができる理由はひとつではありません、また、どのようなときに出現しやすいのかといった傾向も存在します。
高い空を飛ぶ飛行機の後ろに細く長く筋をひく「飛行機雲」。なぜ飛行機が飛ぶだけでそのような雲ができ、どのようなときに出現しやすいのでしょうか。
「飛行機雲が見えたら雨降る」は本当か 長~い飛行機雲ができる…の画像はこちら >>大空を行く飛行機の後ろに筋を引く飛行機雲。写真はイメージ(画像:photolibrary)。
飛行機雲ができるのは、「飛行機の排ガス」「飛行機が作る空気の渦」のふたつがおもな原因とされています。
まず「排ガス」については、冬の寒い朝に息を吐くと白くなる現象に似た仕組みです。旅客機が飛んでいる高度は、実は超低温。高度が100m上がると気温は摂氏にして約0.6度下がるため、たとえば地上の気温を摂氏20度とすると、一般的な飛行機の巡航高度である約1万m上空の外気は、単純計算でおよそ摂氏マイナス40度になります。
その一方で、飛行機の排ガスは、摂氏300度から600度になるといわれています。超低温のなかでジェットエンジンの排気を放出すると、ガス中の水分が急速に冷やされ、氷の粒となり、飛行機雲として形づくられるというわけです。
なお、飛行機雲は一般的に、地上から約6000m以上で発生するとされています。よって、排ガスを原因として飛行機雲が発生する外気温の条件としては、およそ摂氏マイナス16度以下ということができるでしょう。
ちなみに、飛行機雲の“本数”は、飛行機のエンジン搭載数と関係があります。「世界最大の旅客機」といわれているエアバスA380であれば4本、「世界でもっとも売れている旅客機」エアバスA320では2本です。
一方、飛行機は飛行する際、主翼の後ろなどに少なからず空気の渦を作るのですが、この渦が部分的に気圧と気温を下げます。このとき空気に含まれる水分が冷やされるため、結果「空気の渦」を原因として飛行機雲が形作られることがあります。原因のふたつ目「飛行機が作る空気の渦」とはこのようなメカニズムで、竜巻が漏斗(ろうと)雲を作るのと同じものでもあります。
このふたつは複合的に生じることもありますが、後者は翼端や、着陸前などの低速飛行時に、翼の表面積を大きくすることで揚力を保つ動翼「フラップ」を展開したときなどに比較的よく見られる現象とされています。
Large 02
上がエアバスA320シリーズ、下がエアバスA380。エンジン数が異なることが見て取れる(乗りものニュース編集部撮影)。
なお、飛行機雲は、いつも発生するわけではありません。飛行機の飛行する高さ、上空の気温、湿度、空気の流れなど条件はさまざまあり、いわゆる飛行機雲ではなく「すじ雲」などとも呼ばれる繊維状に散らばった白い雲「巻雲(けんうん)」が発生することもあります。
巻雲は糸状のものや毛髪状のものなど、形はさまざまで、5000mから1万3000mの高さ(気温がおよそマイナス10度以下)に現れます。この雲が発生する環境が、飛行機雲のそれと重なるのです。
そして、飛行機雲は、その有無から、その後の天候を予測できるということも広く知られています。飛行機雲が発生しやすいということは、上空に水蒸気が増えているためともいえ、発生したあとの時間は雲の多い天気になる可能性が高いという説が有力です。これは巻雲が広がると雨が近いという経験則(観天望気、気象伝承とも)にも重なります。その一方で、飛行機雲が現れてもすぐに消えるような場合は、上空の湿度が低いと考えられるため、その後の天候は晴れになるという見方もあるようです。
また、飛行機雲がまっすぐではなくうねっている場合、上空で強い風が吹いていることを示しているともいわれ、急激に天気が変わる可能性があるといった説もあります。