日本唯一スタイルの航空機整備企業、「業務内容」も超ユニーク!? 担当者に聞く裏側 MRO Japan

那覇空港に本拠を構える、国内唯一の業務形態をとる航空機整備企業「MRO Japan」。ここで働く整備士たちは他社ではあまり例がないような、珍しい業務を担当している人たちもいます。
沖縄・那覇空港には、特定の航空会社の整備を担うのではなく、さまざまな航空会社から整備や修理などを引き受ける国内唯一の業務形態をもった航空機整備企業「MRO Japan」があります。そんな同社に所属する整備士たちは、他社ではあまり例がないような、珍しい業務を担当している人たちもいます。
日本唯一スタイルの航空機整備企業、「業務内容」も超ユニーク!…の画像はこちら >>那覇空港の「MRO Japan」格納庫(乗りものニュース編集部撮影)。
那覇空港に隣接し、滑走路などを共用する航空自衛隊那覇基地では、MRO Japaan、つまり旅客機の整備士が、「なぜか空自F-15J戦闘機の胴体を洗っている」という光景が見られます。
MRO Japanによると、同社の整備士による洗浄作業は2021年1月から開始されたとのこと。自衛隊では、那覇基地の「整備補給群」で実施されていた洗浄作業を担当する企業を探しており、これにMRO Japanが入札したことで実現したそうです。
洗浄に使う洗剤やプロセスなどは、民間機と戦闘機では大きな違いはないとのこと。ですが、「民間機の洗浄はどちらかというと、美観重視です。機体の年数はお客様が見てすぐわかるものではありませんので、見た目がきれいなことが旅客の安心感につながります。一方、軍用機の洗浄では、塩を落とすということを主眼においています」。担当するMRO Japanの整備士は、次のように話します。

このほか作業従事者からは「初めて間近で自衛隊機を見たので、旅客機といろいろ違って、新鮮味ややりがいがある」「民間会社として初の挑戦に参加できるということを、とても誇らしく思っています」といった声が聞かれています。
ただ、MRO Japanの整備士が行っている「ユニークな職務」は、これだけではありません。
同社の格納庫には「トーイングカー(飛行機けん引するための車両)」が装備されています。国内空港の格納庫では一般的に、旅客機の地上支援を行う専門スタッフ「グランドハンドリング」の人たちの運転によって、駐機場~格納庫区間のけん引作業が実施されますが、MRO Japanでは、整備士自らが運転を行っているのです。
担当者はこのメリットについて、「委託をしてしまうと、旅客便の発着が優先になってしまうこともありますが、整備士がトーイングカーを運転できるようにすることで、時間の融通が効きます」と話します。2023年現在、単独で運転できる資格を持った整備士は16人とのことです。
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整備士が運転するトーイングカーにけん引されるANA機(乗りものニュース編集部撮影)。
ただ同氏は「運転は怖さもある」としたうえ、次のように話します。
「車両自体もとても大きく、車内から見えない場所も多いなか、お客様からお預かりしている機体をきっちりまっすぐ入れなければならないのです。格納庫はほかの機体もあり、足場がせまくタイトです。多くのお客様(航空会社)から機体をお預かりしている立場なので、もし万が一の際には数社のお客様に迷惑をかけてしまいます。そういった意味では、かなり気を払って作業しますね」
とはいえ、普段から安全運航のため妥協が許されない作業を担い、そして高い技術力を持つ航空機整備士ということもあり、「とても慎重にハンドリングする人もいれば、一発で所定の位置に機体を納める人もいる」とのことです。