ホンネは出稼ぎ感覚?技能実習生受け入れの現場で聞いた 今や約33万人が“労働力”に ミニトマト栽培学ぶ外国人女性は「服の店を開きたい」

外国人労働者への賃金未払いや虐待など、様々な問題が報道される「技能実習生制度」。その制度には課題も多い反面で、彼らは農業や介護、製造業などの現場では今や欠かせない「労働力」となっているのも事実です。政府が「技能実習生制度」の見直しを表明した今、実際に外国人労働者を受け入れている現場や、そこで働く実習生たちの声を追いました。
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国内有数のミニトマトの産地である、愛知県田原市。今は収穫の最盛期で、早朝6時からハウスでの作業が始まります。小久保将啓さんのハウスでは、フィリピンとカンボジアから来た技能実習生ら外国人4人が働き、慣れた手つきで赤く熟したトマトを収穫していきます。働く彼女たちに、家族同然のように接することを心掛けているという小久保さん。
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(ミニトマト農家・小久保将啓さん)「この子らがいないと、全然手が回らない。ミニトマトは手入れで(肌が)真っ黒になるし、暑いときも常に手袋をしなきゃいけないし、なかなか(日本人で)やってくれる人がいない」
農業の人手不足が深刻な中、週5日・1日8時間働く彼女たちは、農家にとって実習生というより欠かせない“労働力”。だからこそ良い関係を築けるよう努めています。小久保さんは、彼女たちを自宅の空いている部屋に住まわせています。カンボジアからやってきた実習生に、来日の目的を尋ねてみると…。
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(技能実習生 セン・テアラさん)「日本はお金たくさん(稼げる)。カンボジア少ない…」

カンボジアでは年間約24万円しか稼げませんが、日本では月収約17万円。月に10万円ほど母国への仕送りができて嬉しいと話します。では、学んだミニトマト作りを、カンボジアでどう生かすのでしょうか。(技能実習生のセン・テアラさん)「日本から帰ったら、服の店(を母国で開きたい)。(Qトマトは全然関係ない?)多分、カンボジアではできない…」
本人たちも、技術を学ぶというより“出稼ぎ”の感覚。これが制度の本質ともいえます。
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元々は日本の技術や知識を途上国へ伝える「国際貢献」の位置づけで、1993年に始まった「技能実習制度」。今や33万人近い外国人実習生が、全国で製造業や農業に従事し、実態は“安い労働力”扱いとなっている側面があります。受け入れ先での虐待や、給料未払いなどの実習生への人権侵害はたびたび指摘され、海外からは“奴隷制度”だという批判すらありました。
2023年4月10日、政府の有識者会議でついに技能実習制度の廃止と、労働力確保のための新制度を検討することになったのです。“国際貢献”から“労働力”へ。30年を経て、本音が表に出てくる形で大きく舵を切りました。
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技能実習生を受け入れている、愛知県高浜市の「公益社団法人 トレイディングケア」。主に介護職の実習生を受け入れ、日本語や介護についての指導を行うほか、実習生が孤立しないよう、地域ぐるみで支援しています。技能を身につけてもらう実習を大切にしていますが、介護の現場でも今や彼らは、なくてはならない存在です。

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(公益社団法人トレイディングケア・新美純子代表)「(外国人に)助けてもらわないと日本は成り立っていかないので、彼らが安心できる地域をつくらないといけない」
実習生たちに、日本の方向転換をどう受け止めているのか聞いてみると…。
(インドネシアから来た技能実習生)「技能実習制度がなくなるのはいい。(他の実習生は)日本語できなくて、仕事もちょっとできないとか(問題があった)」
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新しい制度では日本語ができなくても来日しやすく、来日前後に言葉を学べる仕組みもできる予定で、実習生からは期待の声が聞かれました。
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また、新制度では受け入れ先での人権侵害を厳しく排除することも盛り込まれていますが、団体を運営する新美さんからはこんな指摘も。
(公益社団法人トレイディングケア・新美純子代表)「私、変わらないと思っているんですよ。新制度になっても。どんなに監理団体を選びますって言っても、書面が整えば監理団体の許可を出すから…。(悪質な団体は)制度の隙間を縫って商売を考えますから…」
田原市で実習生を受け入れる、ミニトマト農家の小久保さんも懸念を持っています。
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(ミニトマト農家・小久保将啓さん)「より(給料が)高いところに行きたいだろうし、きれいな仕事がやりたいだろうし、女の子は特に。こんな仕事(農業)は嫌だよというのもあるだろうし」

新制度では、これまで認められなかった“転職”も可能になる見込みです。小久保さんも、今は最低賃金ギリギリの給料を何とか出していますが、たとえ働きに来ても、すぐに都会のもっと給料のいい仕事に逃げられてしまう心配があるといいます。
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(ミニトマト農家・小久保将啓さん)「コロナ禍にウクライナ情勢もあり、打撃を受けたので、これ以上(給料が)高くなっちゃうと使えない」
技能実習生の存在なしには国内の農業も製造業も、もはや成り立たない現実があるなか、どう外国人労働者を受け入れていくのか。日本にとって重い課題です。CBCテレビ「チャント!」5月1日放送より