散歩中の女性が耳食いちぎられる事故も…イノシシ捕獲等で山中に放される『猟犬』害獣駆除を行う猟師の思い

三重県度会町で2023年4月、散歩をしていた60歳の女性が、猟犬4頭に頭をかまれるなどして大ケガをしました。なぜこのような事故が起きてしまったのか、イノシシの駆除活動についてYouTubeで発信している猟師に話を聞きました。
三重県度会町の山間の道で4月9日、散歩をしていた60歳の女性に4頭の猟犬が襲いかかりました。襲われた女性は、頭皮や耳を食いちぎられるなどの大ケガをしましたが、命に別条はないということです。飼い主で狩猟免許を持つ67歳の男性が、度会町からの依頼でイノシシなどを捕獲するため、山の中に放していたということです。警察は業務上過失致傷も視野に、飼い主に話を聞いています。
害獣による農作物の被害は、東海3県では年間8億3000万円にのぼります(2021年度)。中でもイノシシによる被害が深刻ということで、猟犬などを使った駆除が行われています。
猟師の石田篤頼さんは猟師志望者を増やそうと、3頭の猟犬とともにイノシシの駆除活動をYouTubeにアップしていて、チャンネル登録者は4万人を超えています。
猟犬を使ったイノシシの駆除活動の様子を、石田さんが撮影した動画で見せてもらいました。道もない山の中で、GPSと鈴をつけた猟犬を離します。
鈴の音や端末を頼りに猟師たちが進んでいくと、猟犬の吠える声が聞こえました。イノシシがいるというサインです。猟犬の役割は、獲物を見つけたり追跡することです。そして吠えることで飼い主に伝えたり、イノシシを威嚇してその場にとどまらせたりします。

害獣駆除はチーム戦です。仲間とも連携しながらイノシシを待ちます。
猟犬が茂みに入り、しばらくした次の瞬間、猟犬を追いかけてイノシシが出現しました。さらに、イノシシがもう一頭出現。猟銃で発砲し、仕留めました。
このあと仲間がもう一頭を撃ち、無事に2頭を捕獲しました。
石田さんに、猟犬が人を襲ってしまうことはあるのか伺いました。石田さん:「僕の推測なんですけれど、おそらくその猟犬のうちの1頭が非常に興奮状態にあって、被害に遭われた女性を獲物だと勘違いしてかみついたと。実際は(襲うことは)ないんですよ」獲物と対峙するときに、かみつくことはまれにあるそうですが、人間にかみつくことは通常では考えられないといいます。
石田さん:「(ペットとの)大きな違いは、リードから離すか離さないか。一度リードから離れてしまうと、僕たち猟師の手の届かない所に行きます。リードを離しても、僕たち猟師が安心できるような訓練やしつけをしています」
手から離せば、最悪の場合、猟犬は凶器になる恐れがあります。猟犬に求められるのは、獲物に立ち向かう勇敢さ以上に、どんなときでも飼い主の指示に従うことができる信頼関係が重要です。石田さん:「序列を一度決めたら、その順番通りにエサをやったり、『人間の方が立場が上なんだぞ』ということをしっかりと教えることですね。褒めるときは一生懸命褒める、厳しくするときは厳しく怒る」
毎日の訓練を積み重ね、約3年かけてようやく猟犬としてデビューできるということです。石田さんは他にも、「駆除を行うときには、必ずその地域に注意喚起を行い、事故が起きないよう手を尽くしている。今回のようなことが起きると、被害者・猟師・猟犬など関係する全員が不幸になってしまう。訓練や配慮は絶対に怠ってはならない」と話していました。※画像はYouTube「猟犬たちと九州の猟師【イノシシハンター】」より2023年4月14日放送