「最後のJAL国内用777で”航空ファンの聖地”へ超特別乗り入れ」その機内とは 「泣かせやがって」演出が続出!

JALが退役が迫る旅客機を用いて、羽田発の「下地島行き」というレアな旅客便を運航。取材すると、機内では通常の旅客便ではまずありえない光景が続々と見られました。
JAL(日本航空)が2023年5月、羽田発・沖縄の「下地島行き」というレアな旅客便を運航しました。使用した旅客機は2023年度上期に退役が決定している「ボーイング777-200ER」でした。
「最後のJAL国内用777で”航空ファンの聖地”へ超特別乗り…の画像はこちら >>JALが実施した「ボーイング777-200ERを用いた下地島空港発着の日帰りチャーター企画」の様子(2023年5月1日、乗りものニュース編集部撮影)。
下地島空港は、2023年現在、JALの定期便乗り入れはありません。いまでこそLCC(格安航空会社)のジェットスター・ジャパンなどが就航しているものの、下地島空港のバックグラウンドはかなり特殊なもので、かつては「パイロットの訓練空港」としての役割を担っていました。ボーイング777シリーズを担当する人たちを含め、JALのパイロットもかつて同空港で訓練を実施していましたが、2013年をもって撤退しています。
その一方で下地島空港には、沖縄特有の青い海と機体との距離感などから航空ファンにとって「航空機見学の聖地」とされる国内屈指の航空機撮影スポット「17エンド」があります。もちろんパイロットにも”聖地”といえる空港。ここにJAL機が同空港を発着するのは、レアな光景ということができるわけです。

そしてこの旅客便を担当した777-200ERは、JALで長年にわたり大型フラッグシップの役割を果たしてたボーイング777シリーズのひとつでした。777-200ERは2002年8月に運航を開始。導入以来長らく国際線をメインで担当したのち、近年になって国内線を担当していた機材です。
なお、同型機の退役により、JAL国内線からはボーイング777シリーズが姿を消すことになります。そして、担当機である「JA703J」は、JALで商業運航に投入されている777-200ERの最後の1機です。
今回のフライトは、聖地・下地島空港へ「最後のJAL国内線777」を用いて、日帰りのチャーター(貸切便)便フライトを軸とするファン向け企画です。同社のパイロットが企画・発案したもので、約150人のファンが搭乗しました。
JAL3977便(サン・キュー・ナナ・ナナ)の便名が付与されたこのチャーター便の機内では、通常の旅客便とは大きく異なる、ディープな航空ファン向けの仕掛けが随所に見られました。
フライトを通して流れるのは、現役パイロットによるフライトの実況解説。コクピットには、実際の運航担当のほかに解説担当が乗り込み、「(羽田空港のD滑走路を指す)ワンウェイ05へのプッシュバックを開始します」「ライトエンジンが順調に始動しております」「このフライトでは、VR(離陸時に機首を引き起こす速度)139ノット(約257km/h)で離陸します」といった放送が離陸前にアナウンスされています。

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JALが実施した「ボーイング777-200ERを用いた下地島空港発着の日帰りチャーター企画」の様子(2023年5月1日、乗りものニュース編集部撮影)。
下地島空港への着陸前には、その打ち合わせの様子が実況され、着陸直前には、コクピットから流れる「高度の読み上げの自動放送」も機内に流れました。そして、「17エンド」側を超低空で通過する空港北側からの進入ののち、着陸復航(ゴーアラウンド)。今度は南側から進入を実施し着陸しています。結果的に、同便に乗った乗客は同空港両方向からの着陸を体験することができました。
下地島空港到着後は、空港敷地内のバスツアー、パイロットによるファンミーティングなども実施されたのち、羽田行きの復路便へ。ここでは離陸直後、手を振るように、機体を左右に傾け翼を振る「ロッキング・ウィング」が実施されています。これはメモリアルフライトなどでよく実施されるもので、通常の旅客便では、まず体験できません。
自らもボーイング777のパイロットとして活躍する、今回のチャーター企画の担当者は、次のように話します。
「『下地島空港を舞台とする退役チャーターフライトをやりたい』と提案したのち、退役する旅客機のスケジュールなどの調整が始まったのが、2022年12月ごろからでした。普段定期便を就航させていない『オフライン』の空港にJAL機を飛ばすというのは、空港要件などを満たす必要があり、そこをほかの担当者の方などと調整するのが、一番苦労したポイントです」