G7広島サミット、3日間終え閉幕 ゼレンスキー大統領“対面”参加がハイライトに

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先進7カ国首脳会議(G7サミット)は今日21日、3日間の日程を終え、閉幕した。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領や招待国の首脳らが広島県の平和記念公園を訪れたほか、ウクライナ情勢などを巡ってのセッションなどが行われた。
広島サミットの最大の目玉になったのが、ウクライナのゼレンスキー大統領が訪日し、対面で参加したことである。
ロシアに対する反撃の大攻勢を準備しているウクライナは、西側に武器支援の増強と加速化を直訴するという絶好の機会を得たわけである。広島サミットは主要先進国の首脳が集結することから、世界中に報道される。それだけに宣伝効果も大きい。
早速の効果は、欧州の同盟国がウクライナにF16戦闘機を供与することをアメリカが容認したことである。しかも、アメリカはウクライナ軍のパイロットの訓練を支援するという。
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これに対して、ロシアのグルシコ外務次官は、「甚大なリスク」に直面することになると欧米に警告した。
オランダやデンマークがF16の供与の意向を示している。NATOの武器支援は、戦車、長距離ミサイル、戦闘機と拡大している。そのおかげで、ウクライナ軍の戦闘能力は向上している。
しかし、ロシアが直ぐに屈服すると考えるのは楽観的すぎる。ロシアは核武装した軍事大国であり、石油、天然ガス、食料などの資源に恵まれている。
残念ながら、広島サミットでは、停戦への道筋は全く立たなかった。G7が結束して、ウクライナ勝利まで支援し続けるというメッセージが発せられたのみである。
ゼレンスキーの広島サミット参加は、インドのように対露制裁に積極的ではないグローバルサウスの国々を味方に引き入れようという意図もあった。しかし、各国とも自国の国益を最優先にしている。
たとえば、人口で中国を抜いて世界一になろうとしているインドは、14億の民の生活のために、安価な食料やエネルギー資源の輸入が不可欠である。
その供給にロシアが大きな役割を果たしている以上、西側諸国のような経済制裁は実行しないのである。また、兵器もロシア製を多く輸入している。
そうなると、ゼレンスキーはグローバルサウスにアピールしようとしたが、その目論見通りの成果が上がったかどうかは不明である。
G7の首脳宣言は、ウクライナ支援の継続をうたうとともに、核兵器のない世界の実現に取り組むとした。そして、被爆地広島で開催されたことを念頭に置いて、G7は核軍縮に関する首脳声明「広島ビジョン」を発表した。
具体的には、ロシアによる核の威嚇を「危険で、受け入れられない」と非難し、新戦略兵器削減条約(新START)の履行再開をロシアに求めた。
中国に対しては、透明性を欠いたまま核戦力を増強していることを、「世界及び地域の安定にとっての懸念」だとした。
さらに中国に関しては、ウクライナ戦争の停戦に向けてロシアに対して圧力を行使することを求めた。さらに、中国の強引な海洋進出を牽制し、「一方的な現状変更の試みに反対する」と強調した。
以上のようなG7の主張に対して、中国は、これを内政干渉だとして反発している。ロシアや中国にしてみれば、G7の中の核保有国、つまり英米仏の核戦力については不問に付したままで、自分たちのみに向けて要求を突きつけるのは説得的ではないという反発である。
「先ず隗より始めよ」という言葉があるように、核保有国が率先垂範しなければ、核兵器のない世界の実現は困難である。
広島サミットでは、ウクライナ、中国、核軍縮のほか、北朝鮮、経済安全保障、気候変動、エネルギー問題、食料安全保障、保健・医療、ジェンダーや人権、デジタル・生成AIなどについて幅広く議論された。まさに現在の人類が直面している課題について討議されたと言えよう。
そして、特筆すべきは、5月21日の早朝、韓国人原爆犠牲者慰霊碑に日韓首脳が献花したことである。このような取組が、日韓関係のさらなる改善につながる。シャトル外交の成果も上がりつつある。官のみならず、民間の交流もさらに活発にしていくことが必要である。
さらには、日米韓首脳会談が開催され、3カ国の連帯を示したが、バイデン大統領は、ワシントンでも3カ国首脳会談を開くことを提案した。
以上のように、広島サミットは、総じて予想以上の成果を上げたということができるが、ウクライナ停戦や核軍縮を早期に実現できるのか否かということが問題である。
G7の結束は誇示できたが、民主主義陣営と権威主義陣営の対立は深まるばかりである。グローバルサウスなど新興国の経済発展に伴い、世界経済におけるG7の重みは減っている。
今後も、G7が世界をリードできるのか、厳しい現実が待っていることを忘れてはならない。

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今週は、広島県で開催された「先進7カ国首脳会議(G7サミット)」をテーマにお届けしました。