「遺体をCTスキャンする病院」愛知の“異状死”は年間約8500件 ホテルの浴槽で死亡 自宅の布団の上で死亡 50代女性はなぜ亡くなったのか?画像診断で死因を探る 【チャント!特集】

病院の外で訪れた突然の死…その原因を探る人たちがいます。
(さくら総合病院 小林豊院長)「年間6000人くらいは体表の所見だけで死体検案書が書かれている現状がある。うやむやにせず正しい死因を見つけてあげることは大事」
それを支えるのは、最新の技術。死者の声なき声を聴く現場に密着しました。
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愛知県大口町にある「さくら総合病院」。30床の新型コロナ病床のほか、24時間体制で救急患者などを受け入れる地域医療の要です。しかし、それだけではありません。
CBC
病院に入ってきたのは、警察官。ストレッチャーに乗せられて運ばれてくるのは、遺体です。
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「これよりPMIおよび死体検案を行います。合掌をお願いします」そのまま遺体はCTへ。ここは遺体の“画像診断”を国内で最も行っている病院でもあるのです。
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CTでは、体の表面からは見えない傷や過去の手術歴、骨の状態などがわかります。ここから死因を探るのが「死亡後画像診断」です。
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この日、運ばれてきたのは54歳の女性。ホテルの部屋の浴槽内で亡くなっていたといいます。
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「あぁこれは…溺れているなぁ。全部胃の中は水分が充満している。溺水だとどうしても水を吸い込むので、胃の中に液体がたまる傾向がある」
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さらには、頬の空洞に水がたまっていることなど、溺れたと思われる症状が複数見つかりました。
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画像をみた後には、直接、傷がないかなどを確認。さらに、遺体から採血も。
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「青酸カリによる中毒がないかどうか、要は、溺死に見せかけた他殺を検査で否定する」CT画像、遺体の状態、警察から聞いた当時の状況を総合して、この女性の死因は「溺死」だと結論づけました。
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(さくら総合病院 小林豊院長)「家族はなんで亡くなったのか?と、54歳という若さで突然この世を去ったなんて納得できない。そんな中で、状況が画像を通じて分かれば、家族も納得できる。そういう意味では亡くなった人に施す医療も必要」
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死因が分からず、事件や事故との関連を否定しきれないものを「異状死」といいます。その数は愛知県では去年1年間でおよそ8500件。警察などがまず遺体の状態を確認する「検視」を行い、事件性の有無を考えます。事件性があると思われる場合、大学病院などで解剖しますが、1件あたり2~3時間ほどかかり、解剖できる医師も少ないため、数には限界があります。
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実際、解剖したのは異状死およそ8500件のうち470件で、解剖率はおよそ5%にとどまります。
そこで、遺体をCTスキャンして、解剖をするかどうかを決める判断や死因の究明に役立てるのが、この画像診断です。
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(さくら総合病院 小林豊院長)「解剖は遺体に傷をつけるし、マンパワーの少ない法医学の先生たちの手を煩わせることになる。そうした解剖を避けて、事件性を否定して死因が分かるのはとても大きな意義」
この病院では救急患者と同様、24時間体制で年間1000人以上の遺体の画像診断を受け入れています。きっかけは、救急医療に取り組む中での“ある葛藤”でした。
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(さくら総合病院 小林豊院長)「心肺停止状態で運ばれてくる人はCTを撮って死因が分かるのに、亡くなった状態で発見されると救急車では運ばれてこないので、体の表面だけを見て死因を推察しなきゃいけない。もし救急で運ばれていたらCTで分かる病気が分からないのがもどかしい」
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次に運ばれてきたのは、自宅の布団の上で亡くなっていたという55歳の女性。
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(院長)「頭は何もないね。体幹何かあった?」(放射線技師)「いや…」(院長)「何もないね。これまた55歳女性って若いね」「画像上明らかなものはない。これが死因だってはっきりするものはないな」
CTで脳の出血や骨折などは見つかりませんでした。
「手術痕はこれだけ。帝王切開ですね」
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体の表面にも外傷はありません。血液検査の結果、心臓の疾患によるものとの疑いが強いとわかりました。画像診断でも100%死因が分かるわけではありません。
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(さくら総合病院 小林豊院長)「だいたい20%強が画像だけで死因が分かる。(死因が分からなくても)今回は事件・事故は否定できて病死だとわかった」
画像診断1件あたりにかかる時間はおよそ20分。しかし、“医療は生きている人へのもの”とのイメージは根強く、死亡後画像診断を行う病院はまだまだ少ないのが現状です。
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(院長)「2件連続は?」(放射線技師)「よくあります。夜中に7件来たことも」
ただ、正確な死因を知ることは病気を予防する政策にもつながり、生きている人の命を救うことにもなるのです。
(さくら総合病院 小林豊院長)「異状死として死因が分からず見つかった人は全例、死亡後画像診断すべき」「死因は一番最後に下さなきゃいけない一番大事な情報であり、亡くなっている人に施すべき医療があることをもっと世の中の人に知ってもらいたい」
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