日本の平均寿命が最大で92歳になる!?最新の人口推計にみる日本の未来

岸田政権は「異次元の少子化対策」を掲げ、人口減少への対策整備を急いでいます。世界的にみても急速に少子高齢化が進んでいる日本ですが、その勢いは年々増しています。
国立社会保障・人口問題研究所は、5年に1度調査を実施している人口推計を公表。その数値によると、2020年の国勢調査時点で1億2614万人いる人口は、2045年に1億880万人、2056年には1億人を割って9,965万人となり、2070年には8,700万人になるとしています。
大きな要因となっているのが出生数の減少です。15~49歳までの女性の出生率で表される合計特殊出生率は2020年時点で1.33。前回の人口推計調査では1.43だったので、0.1ポイント減少したことになります。このままいけば、2024年には1.27まで減少するという見込みも発表されました。
その一方で、平均寿命は延び続けています。2020年時点では男性81.58歳、女性87.72歳ですが、同推計では2070年には男性85.89歳、女性91.94歳になるとしています。加速度的に子どもの出生が減少するなか、高齢者の寿命が延びているため、少子高齢化は今後もますます深まると考えられます。
現在の高齢者数は3,603万人で、総人口の28.6%を占めていますが、ピークは2043年の3,953万人だと推計されています。また、65歳以上の総人口比率(高齢化率)は2070年に38.7%となり、3人に1人以上が高齢者になる計算です。
仮に合計特殊出生率が改善して1.64の水準となっても、2070年の高齢化率は35.3%。逆に合計特殊出生率が減少して1.13になると、2070年の高齢化率は42%にまで上昇します。そうなれば、およそ2人に1人が高齢者という社会が到来します。
2030年以降、平均年齢が50歳を超えるなど、高齢化が顕著になります。そうなれば、社会保障といった制度面だけでなく、社会のあり方にも大きな影響を及ぼすでしょう。日本の平均寿命が最大で92歳になる!?最新の人口推計にみる日…の画像はこちら >>
平均寿命の延伸によって介護業界に出る影響を考えるうえで大切なのは「健康寿命」です。
健康寿命とは、健康上のトラブルによって、日常生活が制限されずに暮らせる期間を指しています。入院や介護を必要とせずに自立した生活を送れることを示す寿命だとも言い換えられます。
つまり、平均寿命と健康寿命の差は、高齢者が医療や介護にかかる期間でもあります。2019年の数値によれば、男性で8.73歳、女性で12.07歳でした(内閣府発表)。
仮に平均寿命と健康寿命との差が拡大すれば、医療費や介護給付費用を消費する期間が増大することになり、医療や介護にかかる人も増えると考えられます。
高齢者が増加する一方で働き手世代が減少するので、当然ながら介護人材の不足感はさらに増すことになります。
厚生労働省は定期的に介護人材に関する調査を行っていますが、その不足する数は2025年に37万人、2050年には50~60万人ほど不足すると見込まれています。
なお、この推計は、先述した国立社会保障・人口問題研究所の2015年時のデータを基に作成されています。
しかし、今回新たに発表された推計値では、働き手世代の減少スピードが前回調査を上回っており、より多くの人材が不足するとも考えられます。
今でも介護現場での不足感が高いことを踏まえると、より一層人材の確保や離職防止などの取り組みが重視されることでしょう。また、業務効率化は避けられない課題となり、ICTなどの技術の導入が進む可能性もあります。

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このまま人口減少が加速するのであれば、介護業界には大きな負担がかかることでしょう。対策としては人材を海外に求めるか、介護にかかる高齢者を少なくするしかありません。
平均寿命と健康寿命の差が、限りなくゼロに近くなれば、介護を必要とする高齢者が減少すると予想されます。
政府も「疾病予防と健康増進、介護予防などによって、平均寿命と健康寿命の差を短縮することができれば、個人の生活の質の低下を防ぐとともに、社会保障負担の軽減も期待できる」と明言しています。
実際に、健康寿命の延びは、平均寿命の延びを上回っています。2010年から2019年にかけて延びた年数を比較すると、男性で0.4歳、女性で0.61歳、健康寿命のほうが数値が高くなっています。
そこで、政府は高齢者の定義を再検討するワーキンググループを設置。現在の65歳以上から75歳以上に変更するという検討も行われています。仮に高齢者の定義が75歳以上になると、医療・介護保険や年金の受給といった制度面も大きく変わる可能性もあります。
とはいえ、忘れてはならないのは少子化問題。現政府が取り組む少子化対策に効果があるかどうかはわかりませんが、もはや待ったなしの状況にあるのは事実です。
健康寿命の延伸は喜ばしいことではありますが、75歳以上を高齢者とする提言については賛否両論があります。
今後は有効な少子化対策を行いながら、高齢者が健康で自立した生活を歩めるような社会が求められているといえるでしょう。
そのためには、さまざまな観点からの介護予防を進めることが大切であり、現在進めている地域包括支援のあり方を実態に沿って検証していくことが大切ではないでしょうか。