長野県・中野市4人死亡事件 周囲が羨む市議長長男の「家庭環境」と順風満帆な「経歴」

父親(57)は3期目の長野県中野市議会議長(26日に辞職)、母親(57)はフラワーアーティスト、自身は13代続く果樹農園の後継ぎで、4年前に始めたジェラート店は盛況。家庭環境に恵まれ、順風満帆な人生を送っているようにみえた長男に何があったのか──。
25日夕、中野市の路上で近所に住む村上幸枝さん(66)と竹内靖子さん(70)がサバイバルナイフで刺殺され、通報で駆けつけた警察官2人が散弾銃で銃殺された事件。発生から約12時間後、立てこもっていた自宅から投降し、殺人容疑で逮捕された青木政憲容疑者(31)は「(被害者の)女性に悪口を言われたと思って殺した。射殺されると思ったので警察官も殺した」と供述しているという。
女性2人が殺害された場所は地元住民たちの散歩コースで、村上さんの自宅は青木家から約700メートル離れたところにあった。
近隣住民がこう言う。
「殺害された村上さんと、青木さんの息子さんに接点はないと思います。あの辺りは、普段から散歩している人が多いんですよ。私も犬の散歩で青木さんの家の前を通りかかりますが、息子さんが農作業をしたり、犬と遊んでいる姿をよく見かけます。息子さんが果樹園の仕事をするようになってから、市内から離れたところでも畑を借り、果物を育てていました。以前、親御さんから息子さんが小学生の頃、家にひきこもっているという話は聞きました。愛想はよくありませんが、道で会えば会釈はします。おとなしく物静かな感じです。学生時代からマジメで優秀で何の不自由もなく育ったのに、何で突然、キレちゃったのか。ただジェラート屋もやり手のお母さんの発案のようですし、農業だって本人が本当にやりたい仕事だったのかな」
■「悪口を言われたと思った」と供述
父親は農薬販売などを手がける「アグリサポート」を経営し、10年ほど前、青木容疑者にはその名前にちなんだ果樹園「マサノリ園」の園主を任せていた。2019年には、長野県産業振興機構の支援を受けて、軽井沢にジェラート店を出店。昨年、地元に2号店をオープンした。果樹園で栽培した桃やシャインマスカットを青木容疑者が店に卸し、家族3人で運営。ジェラートはふるさと納税の返礼品に選ばれるなど順調に売り上げを伸ばし、両親は息子と一緒に働けることを喜んでいたという。
「農産物のブランド化を推進していたご主人もそうですが、お母さんも立派な方で、PTAの役員や児童委員を進んで引き受けていた。近所の奥さんを集めてフラワーアレンジメントやフルーツのカッティング教室を開くなど、責任感が強く、地域の行事に積極的に参加したり、地元のために一生懸命、活動していました。選挙の際もご主人のことを支え、はたから見れば仲が良く、幸せそうなご家族でした。近所の人たちとも、何で、何でって話をしています」(別の近隣住民)
青木容疑者がマサノリ園を継いだのは10年ほど前のこと。その数年後、狩猟免許を取得して散弾銃や空気銃など、4丁の所持許可を得ていた。昨年11月には父親名義の土地に抵当権を設定し、自分の名義で地元の金融機関から300万円の融資を受けた。
「悪口を言われたと思った」だけで、なぜ凶行に走ったのか。