アメリカと中国の熾烈な覇権争い、「世界システム論」から見た次…の画像はこちら >>
アメリカのブリンケン国務長官は、6月18、19日に訪中し、秦剛外相、外交を統括する王毅政治局員、そして、習近平主席と会談した。今の米中関係は最悪の状態にあり、この1回の米高官の訪中で問題が解決するわけではない。会談では、双方が主張を展開し、それは平行線のままであったようだ。
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たとえば、両国の軍隊が偶発的に衝突することを回避するために、ブリンケンは国防当局間の対話再開を求めたが、中国側はそれを拒否した。
中国側は、ブリンケン国務長官の訪中を歓迎したわけではなく、仕方なく受け入れたという高圧的な姿勢に終始した。それは、習近平との会談での座席配置を見ればよく分かる。格の違いを見せつけ、相手を朝貢相手のように見下す演出であった。
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王毅は、アメリカが中国脅威論を煽り、中国に制裁を科していることを厳しく批判し、中国の科学技術発展に対する圧迫を放棄しなければならないとした。アメリカは、対中輸出規制はアメリカの安全保障上で極めて重要な物資や技術に限定していると説明している。
中国は、台湾は中国の一部であり、台湾独立には反対すべきであるとブリンケンに求めた。台湾問題は、まさに「核心的利益の中の核心」なのである。アメリカは、「一つの中国論」に立っているが、要人の台湾訪問などを繰り返したり、武器を売却したりしている。これが、中国の神経を逆なでしているのである。中国は、このアメリカの言行不一致を指摘する。
ウクライナ戦争を巡っても、米中の見解の相違は埋まらなかった。アメリカは、中国がロシアに重大な軍事支援を提供する可能性があるとして警告を発した。しかし、中国は、和平への努力を継続することを強調するとともに、ロシアとの協力関係の断絶には反対した。
中国は、核兵器の使用には断じて反対であることをロシアに対して宣言しており、戦争のエスカレーションを抑える努力を展開するであろう。しかし、戦争がどういう形で終わるにしろ、中国の最大の関心事は、戦争の後の国際秩序がアメリカの一強支配となることを回避するにはどうすればよいかということである。
ウクライナへのNATOの武器支援が続くかぎり、ロシアの全面勝利という形で戦争が終わることはまずあるまい。ウクライナの全面勝利という形も、ロシアが核大国であることを考えると、予想できない。停戦の時期、その態様も分からないが、世界システム論を援用すると、頭の整理ができる。それによれば、近世以降の世界システムの変遷は、4つの特色がある。
第1は、ほぼ100年の周期で覇権国が交代するということである。
第2は、ナンバー・ワンである覇権国の支配に対して挑戦するナンバー・ツーの国が必ず存在するということである。しかし、覇権国にチャレンジしたその挑戦国とは別の国が、次の次期にヘゲモン(覇権国)の座を占めることになる。
第3は、世界の覇権の交代の契機が世界的規模での戦争であるという考え方である。その時代の軍事大国すべてを巻き込むような戦争が、ほぼ30年間続くと、覇権国が入れ替わる。別の表現をすれば、「30年戦争」が国際秩序を変えるという。
第4は、海軍力を国力の指標としていることである。第二次世界大戦までは、海軍力をほぼ経済力と正の相関関係にあり、この指標を基準に世界各国の国力順位づけを行っても現実からさほど乖離することはなかった。
世界システム論を2023年の今日に適用すると、まず第2番目の論点であるが、覇権国はアメリカであり、ウクライナに侵攻したロシアが挑戦国である。しかし、このロシアではなく、別の国、つまり、中国が次期の覇権国となる。第一次、第二次世界大戦で、イギリス(覇権国)にドイツ(挑戦国)が挑戦したが、次の覇権国になったのはアメリカであった。それと同様なことが起こりつつある。
第1番目の論点の100年周期であるが、パックス・アメリカーナが成立したのが、1945年、それから100年は2045年である。習近平は、中華人民共和国樹立から100年後に世界一の大国になることを目指して、国力を増強している。覇権国がアメリカから中国に交代する。つまり、パックス・アメリカーナからパックス・シニカに変わる。
第3番目の「30年戦争」であるが、2022年2月に始まったウクライナ戦争は、実は2014年のクリミア併合から始まっていたと考えると、30年間、台湾有事も含めてこのような戦争が続くことが予想される。その結果、アメリカの国力は低下し、2045年頃には、覇権国が中国に移行する。
第4番目の海軍力については、中国が猛烈な勢いで軍拡、とくに海軍力の増強を図っていることは周知の通りである。中国は、国産空母も動員して台湾海峡で軍事演習を行っている。
以上が世界システム論から見た30年後の世界であり、中国の天下となる。そのときに、日本は、アメリカの属国から中国の属国となって生き残るしか道はないのかもしれない。
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今週は、「米中覇権争い」をテーマにお届けしました。