人口戦略会議が先月発表した「2020年から50年までの間に、日本全国1729の自治体のうち実に4割にあたる744の自治体が消滅してしまう可能性がある」との分析、驚くというより、結局「地方創生」の掛け声は威勢がいいが、あまり効果を生んでいないということが明白になりました。
その消滅の根拠とされているのが、20歳から39歳の女性人口が半分以上減ってしまうというもの。つまりその自治体での出生率の低下が原因だというのです。ただ、人口の減少、とりわけ若い女性たちが出て行ってしまう、もしくは移り住んで来ないという背景にはさまざまな問題があり、私が特に気になったのは、雇用とその仕事自体を取り巻く女性に投げかけられる「視線」についてです。
例えば、飛騨高山のある酒造メーカーは、それまでの酒造りという男性寄りの製造現場中心の仕事を、ラベリングやパッケージの開発に女性を多く雇用することで、社内の活性化と売り上げの向上につなげることができたといいます。若い女性たちの地元での雇用が生まれ、新しい発想の製品が作られ、利益が上がるという、まさにウィンウィンの事例です。
こういう男性中心に動いてきた地場産業は、往々にして「オトコたちの仕事場」になってしまって、女性が参入しにくい空気に満ちていたりします。女性の雇用を増やすだけでは、この空気、つまり女性への「視線」の解消にはなりません。
その職場全体の空気を窓を全開にして風通しをよくして、結婚してもしなくても、子供を産んでもなお、堂々と仕事を続けていきたいと思わせる環境づくりが必要です。ジェンダー・ギャップの解消は、遠回りに見えても実は、脱消滅自治体への大切なパワーワードだと思います。(キャスター)