妻と1歳の娘を殺害後…不倫相手に「大好き大好き」 元看護師・渡辺健被告(29)の初公判 何度も殺害企てた事件の経緯

2021年11月、新潟市の自宅で29歳の妻と1歳の娘を殺害した罪などに問われている男の初公判が10月29日に新潟地裁で開かれた。男は殺害については起訴内容を認めたものの、それ以前に妻と娘の殺害を企てた殺人未遂事件などについては殺意を否認した。検察側は「不倫を継続するために犯行に及んだ」と指摘。また、男は2人を殺害後に不倫相手に「大好き」などとメッセージを送っていたことが明らかとなった。裁判では、殺人未遂事件などの殺意について争われる見通しだ。
殺人と殺人未遂・殺人予備・窃盗の4つの罪に問われている新潟市南区の元看護師・渡辺健被告(31)。起訴状などによると、渡辺被告は2021年11月、新潟市南区の自宅で、妻・春香さん(29)と娘・純ちゃん(1)の首をロープで締めつけて自殺を装い殺害した罪などに問われている。10月29日の初公判で小林謙介裁判長から起訴内容について問われた渡辺被告は殺害については「間違いありません」と認めた一方で…渡辺健 被告:私は妻と娘を殺そうとしたわけではありません。塩化カリウムの持ち出しは間違いありませんが、妻を殺すつもりではありませんでした2人を殺害する2021年11月以前に起こしていた殺人未遂など2つの事件については殺意を否認した。
冒頭陳述で事件の時系列について検察が説明した。2018年5月に春香さんと結婚した渡辺被告。しかし、その8か月後の2019年1月から職場の看護師と不倫関係が始まる。一度、春香さんに不倫関係がバレ、渡辺被告と春香さんとの間に長女の純ちゃんが誕生するも不倫は続いていたという。そして、2021年1月以降から渡辺被告は「妻殺害 水死に偽装する方法」「生命保険 死亡時保険金」などと検索していたことがスマホの解析から明らかに。こうした中、2021年2月中旬、渡辺被告は不倫相手から不倫関係の終了を告げられる。ここで不倫関係は終了したものの、春香さんに対して睡眠薬を何らかの手段で飲ませ、春香さんは意識を消失して失禁したり、記憶が無くなってしまうなどの症状が出ていた。3月中旬になると再び不倫関係が再開。渡辺被告は「溺水 低酸素脳症」などと検索する。そして3月29日に、渡辺被告が借金返済のため春香さんの口座から無断で金を流用していたことを知った春香さんが怒り、実家に帰ると告げた後、渡辺被告は飲料に睡眠薬を混入。その飲料を飲まされた春香さんが交通事故を起こす殺人未遂事件が起こっている。3月後半から8月初旬まで不倫相手の家で寝泊まりしていた渡辺被告は、この期間も春香さんに殺意を抱いているようにもみえる検索を繰り返していた。【渡辺被告の検索履歴】「毒薬・劇薬と毒物・劇物」「気管 塞ぐ」「塩化カリウム 致死量」「妻がいなくなった 行方不明」
新潟市南区に新築を建てていた渡辺被告は8月10日から春香さんと純ちゃんとの新居での生活を始めたが、その前日には不倫相手から「年内中に離婚についての動きがなければ諦める」と不倫関係についての期限を宣告されていた。この後、塩化カリウムに関する検索を続けていた渡辺被告は9月10日に勤務先の病院から塩化カリウムを盗む事件を起こす。不倫相手との同居生活が終わった後も不倫相手と密会したり、相手の家に泊まったりを繰り返していた渡辺被告は10月30日には殺害事件に使われたロープを購入。その間も春香さんへの殺意を抱いていたかのように「看護師 実刑 免許」「自殺 保険金」「自殺による死亡の場合、保険金はどうなる?」などの検索履歴が残っていた。そして、11月7日午前1時29分ごろに不倫相手と密会した渡辺被告。午前4時33分ごろに春香さんに帰宅する旨のメッセージを送り、帰宅後に就寝したのち、午前10時ごろに起きてから10時半ごろに春香さんと純ちゃんをロープで自殺に見せかけて殺害した。殺害後には春香さんのスマホから自殺をほのめかすような偽装メッセージを自身のスマホに送り、自殺かのような通報を消防と警察にしていた。その後、渡辺被告は不倫相手に対し、「大好き大好き」などとメッセージで送っていた。
何度も殺害を企て、最終的に自殺に装った形で2人を殺害した渡辺被告。検察側は「渡辺被告が職場の同僚女性と不倫関係を継続するにあたり、障害となっていた自身の妻子を排除しようと考えていた」とその動機について指摘した。検察側:殺害の約8カ月前となる2021年3月、妻に睡眠薬入りのコーヒー牛乳を提供。それを飲んだ妻が娘を乗せて車を運転しようとしたことを認識したにもかかわらず、2人が死ぬことを狙い、あえて妻の運転を制止せず、妻に自動車を運転させ、意識障害等を起こした妻に新潟市南区の広域農道で交通事故を起こさせた。この事故で妻と娘が死亡しなかったことから、2021年9月には妻を殺害しようと当時、看護師として勤務していた病院から塩化カリウム10本を盗んだ検察側がこう主張するのに対し、弁護側は…弁護側:渡辺被告が競馬投資の副業を始めるも詐欺だったことが分かり、約400万円の借金を負った。借金返済のため、妻の口座から無断で金を返済に流用したものの、妻には言えず、妻が銀行などに口座の確認に行ったりしないように、自宅で寝ていてもらおうと睡眠薬入りのコーヒー牛乳を提供した。カリウム10本を盗んだのも、妻との別居中に不倫相手との生活を経験し、その後、新築の家に妻と暮らした際に以前よりストレスを強く感じるようになり、妻を憎むようになったことから、「本当はいつでも妻に勝てるんだ」と精神的安定が欲しかったため。看護師だから塩化カリウムを使えば殺害したのが発覚するとは知っていた睡眠薬入りの飲料を飲ませた時も、塩化カリウムを盗んだ時も殺意はなかったと主張した。
今回の裁判ではこの2つの事件における殺意の有無などが主な争点となっている。検察側:数か月にわたり「運転中に心肺停止」「塩化カリウム致死量」「妻殺害 水死に偽装する方法」「生命保険 死亡保険金」などと検索するなど強く執拗な殺意を持っていた弁護側:渡辺さんは行き当たりばったりで、その場しのぎで生活してきた。自分に何か不都合なことがあったり、ピンチになったりすると、その場をしのげればと思って行動していた。事前に下調べしたり、準備したりして殺害するようなことはしていない。どうか判決にあたり、渡辺さんを色メガネで見ないようにしてほしい
その後行われた証拠調べでは、大阪府警の科学研究所の職員が証人尋問され、妻の毛髪鑑定結果の考察を説明。妻は睡眠薬を常用していなかったのにも関わらず、「複数回にわたって睡眠薬を摂取している形跡が見られる」と検査結果について証言した。裁判は11月12日に結審し、11月22日に判決が言い渡される予定だ。