地上では開いた状態となっている、旅客機の前脚を格納するドア。この「前脚ドア」には、赤い線が引かれています。どのような目的で引かれているのでしょうか。整備士に聞いてみました。
旅客機の前脚(ノーズギア)上部には、上空で脚をしまうときに閉じるドアが、開いた状態で見えています。そして、この前脚のドアには「赤い線」が引かれています。どのような意味があるのでしょうか。
旅客機の前脚ドアに「赤い線」何かの警告? もう一本「隠れ赤い…の画像はこちら >>JALのボーイング767の前脚。赤い枠のなかが前脚ドア(乗りものニュース編集部撮影)。
JAL(日本航空)機のとある整備士によると、この「前脚ドアの赤い線」は、地上で飛行機の支援を行うグランドハンドリングの際に用いるといいます。
「飛行機は原則、自力でバックはしないので、駐機場からバックして出ていく際には、『トーイングカー』という車両に押してもらいます。このトーイングカーは飛行機の前脚のステアリングを操作し、飛行機の向きを所定の方向に変えることができるのですが、この赤い線は、そのときトーイングカーの運転手に『これ以上前脚のステアリングを切れません』という目印の役目を果たしています」
また同氏によると、前脚のタイヤを支える支柱下部にも赤い線が引かれていることが多いそうで、この線がドアの赤い線を越さないようにけん引をするのだそうです。
なお、多くの旅客機では赤い線を超えてステアリングを横に切ることは物理的には可能ですが、ただ、その場合破損の危険性があり、安全が保障できない可能性も考えられるとのこと。そういうことがないように、トーイングカーの運転手は飛行機の方向を変えるとき、赤い線を目印としてステアリングを操作しているとしています。
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ボーイング737の前脚部分。ドアに赤い線が塗られている(乗りものニュース編集部撮影)。
なおJALによると、トーイングカーにはけん引するときに、棒(トーバー)を使うタイプと、使わないタイプがありますが、両方とも、赤い線を目印にステアリングを切るのは変わらないといいます。また、同社の新鋭機であるエアバスA350-900も、同様の目印がついているとのことです。
ちなみに、飛行機に引かれている赤い線はこれだけではありません。JAL機の整備士によると、たとえばボーイング737型機の胴体前方に引かれているものは、スタッフの安全を守る重要性の高いものだそうです。
「胴体前方の赤い線は、エンジンが回っているときに『これ以上エンジンに近づくな』という印です。飛行機を動かすエンジンはとても吸引力が強大ですので、近づきすぎると吸い込まれてしまう可能性もあります。そういったなかでも整備士やハンドリングスタッフが安全に作業できるよう、飛行機は人間に注意喚起してくれています。飛行機に引かれている線は、それぞれにきちんと意味があるのです」(JAL機の整備士)