「主翼もエンジンも操縦席も付け替えできます」超斬新な戦闘機、実現なるか? その全容や強み

用途に応じて最適化されたパーツを付け替えることで、様々な任務に使用できるという斬新なコンセプトを持つ軍用機の開発を、英国ベンチャー企業が進めています。どのようなものなのでしょうか。
英国のアエラリス(Aeralis)というベンチャー企業が、斬新なコンセプトをもつ軍用機の開発を進めています。コア(中核)となる前部胴体へ、用途に応じて最適化されたパーツを付け替えることで、様々な任務に使用できるというコンセプトを持つ「モジュラージェット」というものです。計画中の練習機・軽攻撃機の初飛行は、2025年を目指しているとのことです。
「主翼もエンジンも操縦席も付け替えできます」超斬新な戦闘機、…の画像はこちら >>「モジュラーエアクラフト」のイメージCG(画像:AERALIS)。
2022年3月、中東カタールでの海上防衛・安全保障イベントで発表された、モジュラージェットの実物大モデルは、横からの外観がイタリアとロシアが一時一緒になって開発したM-346とYak-130にやや似ていました。
ただし、アエラリスの公式サイトに見る動画はユニークです。「最初から最後まで真のデジタル事業」と説明された工程を紹介する公式動画は、コア部分に操縦室・主翼を取り付けたのち、機体下部に、ジェット・エンジンと空気の取り入れダクトを取り付けながら流れていきます。こうして練習機、軽攻撃機双方へ最適化されたモジュール化された各々のパーツを組み合わせることで、機体は完成します。

このモジュラージェットは、有人機も無人機もできたり、エンジンは1基にも2基にもできたりします。とある海外の航空誌によると、2022年6月段階で、初飛行は2025年を目標にしていると紹介されています。
航空機はこれまでも、基本的な構造を一緒にしつつ目的に合わせた機体を派生させるなどして開発されてきました。例えば、F-35は主翼の面積を変えたりリフトファンの搭載を当初から計画したりしてA、B、C各型を開発。古くは米軍のF-111も空軍型と海軍型を一緒に開発しようと試みられました。
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カタールで発表されたアエラリス製「モジュラーエアクラフト」の実物大モデル(画像:AERALIS)。
しかし、アエラリスのように主要パーツを大胆にモジュール化した例は聞きません。1940年に開発された英国の戦闘機スピットファイアMk. Vは武装によって4タイプの主翼構成を展開していましたが、これがモジュール化とやや似ているのかもしれません。
アエラリスはモジュール化することで、運用コストを3割減らすことができると主張しています。研究資金は、練習機「ホーク」の後継を探る英国側からの提供もあったとされているほか、2022年12月には、デジタルエンジニアリングを活かし開発コストとリスクを下げる研究ミッションを英国防省から獲得したとも発表しています。
そして、もしかすると、モジュラージェットは日本に関係するかもしれません。これらの研究は、英国のFCAS(将来航空戦闘システム、Future Combat Air System)も含まれているとされ、FCASは日本の次期戦闘機にもつながっています。また、日本では航空自衛隊のT-4練習機の後継が視野に入っていますが、防衛装備品の輸出が可能になったことから、もしT-4後継機を国内開発し輸出も視野に入れるのであれば、こういったモジュール化の応用というのもアリなのかもしれません。
もっとも、航空機は輸出となった場合、往々にして希望する装備品は輸出先の国によって異なり、自国品の使用を購入条件に求めるケースも一般的です。こういった折り合いをどのようにつけるかは、課題といえるでしょう。とはいえ、この大胆にモジュール化した機体が実際に飛び立つのか、また、新しい生産様式としてスタンダードなものになりうるのかは注目されるところです。