事件があった射撃場では何が…現地で指導経験ある元自衛官「初めての実弾はピリピリ」候補生訓練の実情とは

隊員3人が自動小銃で撃たれ死傷する事件が起きた、岐阜市の陸上自衛隊・日野基本射撃場で指導経験がある60代の元陸上自衛官の男性が取材に応じ、自衛官候補生の訓練の実情を語りました。元陸上自衛隊員:「こういう事案が、事件があったらいけないことなんで、出さないように射撃は行っております。信じられなかったですね」 事件について「信じられなかった」と話す60代の男性は、以前、陸上自衛隊に所属し、事件のあった日野基本射撃場で教官として指導した経験もある元自衛官です。
元陸上自衛隊員:「射撃というのが新隊員教育の中で一番気を遣うところです。初めて射撃をする人間に実弾を撃たせるということで、ピリピリしています」 逮捕された18歳の男は、4月に入隊し訓練を始めた「自衛官候補生」。候補生は危険を伴う実弾射撃の訓練に至るまでに、自衛官に必要な心身を鍛えられます。元陸上自衛隊員:「(訓練は)前段の方で基本教練があるんですけど、そういうので服従心を養わせているんですよ。射撃が始まったころには命令に対してちゃんと行動できる、させるようにカリキュラムが組まれております」 心を鍛えてから実施される実弾射撃の訓練には、厳格なルールが設けられていました。元陸上自衛隊員:「『射撃号令』『3発弾込め』とかそういう号令はあります。(Q.1つ1つの動作を確認しながら?)そうです」 事件があった日野基本射撃場では、およそ300メートル先の的に向け射撃します。
男性によれば、候補生が射撃する際には、横に薬きょうを回収する役の別の候補生が1人、そして2人の後ろに指導役の隊員が立ち、3人1組で行われます。
5組が横に並びますが、さらにその横から小銃の動きを確認する役や、後ろから射撃の号令を出す役など、複数の指導役がいる中で訓練が進められます。
元陸上自衛隊員:「安全係が横から見ていますので、『銃を向いてないぞ』『銃を前向けろ』とかっていうのはすぐ。(Q.不審な行動をしたら押さえ込む?)なりますよね。(Q.弾数は?)勝手に取ったりはできません」 弾薬交付場というところで弾薬は係から手渡され、発射はもちろん、装填にも許可が必要です。元陸上自衛隊員:「射手(候補生)が弾込めをして準備をして、射撃係に報告して、射撃係がそれを確認して赤旗を上げて準備良しと。全部の赤旗が上がった段階で、射撃係幹部が『射撃用意』で構えて、『撃て』で撃つとなっております。監視はしています。それを振り切ってという話にたぶん今回はなっていると思うんですけど」
候補生の訓練期間は3カ月。終盤となり、実弾射撃の訓練も今回が最後でした。元陸上自衛隊員:「一般の生活から自衛隊の3カ月って、一番そこで自衛官に色が変わっていくところ。指導してくれた班長とは結構コミュニケーションが取れているっていうのが、僕は結構楽しかったんですけど」
男性にとっては楽しかったという候補生の3カ月間の訓練ですが、途中で辞めていく隊員もいるといいます。元陸上自衛隊員:「厳しいというか、ロッカーなんかを綺麗に整頓するように指導されますけど、それはなぜかというと、自衛隊って災害派遣とか有事の際、パッと出ていかなければいけないので、身の回りのものをちゃんとしっかり整理整頓しておくことが大事ということを教えていますね。厳しくて辞めるっていうのはないけど…団体生活とか自由がきかないことにちょっと不満を持って辞める子もいますね」 事件の背景に何があったのか…。男性は事件の影響を心配しています。元陸上自衛隊員:「トラウマに思ってしまう隊員も出てくるかもわかりませんので、心のケアをしてあげていただきたいなと思っています」