フランチャイズ経営でありがちな「5つのトラブル」- 加盟時の注意点と共に徹底解説

起業を考えるとき、「フランチャイズへの加盟」を選択肢の一つに挙げている人もいるでしょう。フランチャイズに加盟すると、本部のサポートが受けられる、開業までスムーズに進むなど、さまざまなメリットが得られます。

しかし、メリットの多いフランチャイズでも、時にはトラブルが起こることもあります。フランチャイズで起こりがちなトラブルとは、どのようなものなのでしょうか。今回は、フランチャイズ経営でよくあるトラブルや、加盟する上での注意点を解説します。

■フランチャイズの概要
<フランチャイズとは>

フランチャイズとは、本部(フランチャイザー)から商品やサービス、経営のノウハウを提供してもらい、加盟店(フランチャイジー)として事業を行うビジネスシステムです。加盟店は、本部からノウハウをもらったりサポートを受けたりする代わりに、毎月の売上から「ロイヤリティ」を支払います。

フランチャイズの仕組みは、コンビニのほか、クリーニング店や飲食店、学習塾、ハウスクリーニングなど、さまざまな業種で採用されています。

なお、フランチャイズといっても、加盟店も独立した事業者になるため、開業届の提出が必要です。また、従業員を雇う場合は、雇用契約書の用意や社会保険の手続きをしなければなりませんが、これらも加盟店オーナーの仕事となります。
<フランチャイズのメリット、デメリット>

フランチャイズのメリットとして、まず、「加盟店オーナーは運営に専念できる」という点が挙げられます。フランチャイズにおいて、本部は、商品開発や仕入れルートの確保、マニュアル作成、人材育成のほか、広告・宣伝などを行い、ブランド価値の維持やサービスの向上に努めます。

加盟店は、こうして本部が高めてくれたブランドや知名度などを活用することで、開業当初から集客に困ることなく事業をスタートし、運営に専念できるのです。

また、本部のサポートがあることで、「未経験の業種でも始めやすい」というのもフランチャイズの利点です。フランチャイズに加盟すると、営業の権利や商標、経営ノウハウなどがパッケージになって提供されます。さらに、開業前には研修があり、開業後も、店舗運営や経営に関してアドバイスを受けることが可能です。

フランチャイズなら、起業が初めて、業界が初めてという人でも、本部の力を借りてチャレンジできるのです。

一方、フランチャイズのデメリットは、「ロイヤリティの支払いがある」という点です。ロイヤリティは、毎月の売上の一部を本部に対して支払います。算出方法や割合はフランチャイズによって異なりますが、思うように利益が出ない時にはロイヤリティが重い負担となる恐れがあります。

また、フランチャイズに加盟すると、本部の決めたマニュアル通りに運営する必要があり、自由な経営はできません。さらに、経営状況が悪くなっても、契約期間中は事業をやめられず、途中解約する場合は解約金がかかるケースもあります。
■フランチャイズでよくあるトラブル

フランチャイズに加盟するメリットは多いですが、その反面、注意しなければならないトラブルもあります。フランチャイズでよくあるトラブルについて解説します。
<本部の提示した売上予測と実際の業績に差がある>

フランチャイズ加盟前には、本部から売上予測や収益モデルを提示されます。しかし、この売上予測は、平均値や過去の加盟店の実績などであるため、その通りの売上が必ず得られるとは限りません。

売上予測や収益モデルを鵜呑みにしてしまうと、開業後、業績が伸びないことに悩んだり、本部との間でトラブルに発展したりすることもあるでしょう。

こうした状況を避けるには、加盟前に、売上予測の信ぴょう性を確認しておく必要があります。本部の担当者と直接会う機会に、予測数値の算出方法の根拠を質問しましょう。

また、本部から提示された数値をそのまま信じるのではなく、実際に店舗の予定地に行って人通りや競合店の存在を確認し、自分で売上の予測を立てることも重要です。
<近隣に新店舗が出店するトラブル>

フランチャイズでは、加盟店に対して、一定地域内で営業の独占権を与える「テリトリー制」という制度があります。定められた地域内では、競合する加盟店の出店は制限されるため、加盟店の立場を守ってくれる制度といえます。

ただし、コンビニなどのフランチャイズでは、テリトリー制を導入しないところが多いようです。

近隣に類似する新店舗が出店すると、顧客の奪い合いが起き、売上にも影響するでしょう。売上が下がれば、ロイヤリティの負担も重くなり、経営を続けること自体が難しくなるかもしれません。

テリトリー制は、全てのフランチャイズ契約書に盛り込まれているわけではありませんので、加盟を検討するフランチャイズがテリトリー制を採用しているのかどうか必ず確認しましょう。
<途中解約の解約金(違約金)トラブル>

フランチャイズに加盟して経営を始めてみたものの、「実際にやってみたら、なかなか売上が上がらず苦しい状況が続く」というケースも考えられます。しかし、思うように利益が出ないからといって、契約期間中にすぐに解約はできません。

契約期間満了前に解約すると、解約金が発生することがあります。本部と加盟店の双方が解約に同意していたり、契約書で途中解約を認めていたりしても、ほとんどの場合、解約金が発生してしまいます。

解約金が支払えないからといって、支払いが免除されることはありません。すると、「経営が苦しいけれど、解約金が支払えないから経営を続けるしかない」という状況に陥る恐れがあります。

途中解約のリスクを考え、あらかじめ撤退の基準を想定しておいたり、売上予測を厳しい目で判断したりと、事前にできる対応をとっておきましょう。
<加盟金を支払っても開店できない>

中には、「フランチャイズ加盟金を支払ったのに、開店できない」という深刻なトラブルも存在します。開店できない理由はさまざまですが、物件が見つからない、必要な設備が揃わないなどが多いようです。

また、必ずしも本部に問題があるケースばかりではなく、加盟店オーナーの事情で開店できない、という事例もあります。

せっかく加盟金を支払っても開店できなければ、加盟店オーナーは生活が圧迫され精神的にも追い込まれるでしょう。その結果、加盟金の返還をめぐり、本部と加盟店オーナーの間でトラブルに発展することもあるようです。

<競業避止義務による規制がある>

フランチャイズに加盟すると、本部のビジネスモデルや経営ノウハウを活用して店舗運営ができます。契約期間が満了したら、「これらを活用して類似したビジネスをしてみたい」と考える人がいるかもしれません。

しかし、フランチャイズでは、同業でライバルとして独立することを制限する「競業避止義務」が規定されています。これは、契約期間満了後も一定期間適用されますので、注意が必要です。

本部にとっては、自社のノウハウの流出を防ぐ大切な規定です。フランチャイズ契約満了後の将来のビジョンがある場合は、「どこまでが競業に当たるのか」をよく確認しておきましょう。
■フランチャイズに加盟する上での注意点7つ

最後に、フランチャイズに加盟する際の注意点を7つご紹介します。加盟時にはどのような点に気を付けるべきかあらかじめ知り、トラブルを回避しましょう。
1.本部に支払う費用の種類と金額を把握する

フランチャイズに加盟して開業するなら、本部にどのようなお金を支払うのか、その種類と金額をよく確認する必要があります。特に、毎月本部に支払うロイヤリティについては、その算出方法をしっかり理解しておきましょう。

ロイヤリティ以外にも、加盟金や研修費、システム使用料、設備費用、宣伝広告費などの名目でお金がかかる場合があります。よく確認しないと、加盟してから「想像以上にお金がかかって辛い」という事態になりかねません。

支払うお金の種類や金額を把握したら、どのくらいの利益が見込めるのか、必ず計算しておきましょう。
2.損害賠償金や違約金について知る

フランチャイズでは、加盟店による違反行為を防ぎ、本部のブランドイメージを守るため、損害賠償金や途中解約による違約金が設定されているところもあります。損害賠償金・違約金の規定の有無や金額はフランチャイズによって異なりますので、内容をよく確認しておきましょう。

損害賠償金や違約金が高いほうが、加盟店がルールを守ることを期待できますが、中には金額が低く設定されているところもあります。極端に金額が低かったり、そもそも損害賠償金や違約金の規定がない場合は、その理由を本部に聞いてみましょう。
3.商標や称号の使用条件を確認する

フランチャイズに加盟してロイヤリティを支払うと、本部が持つブランドイメージやマークなどの商標が使用できます。商標が使えることは、フランチャイズに加盟する大きなメリットの一つでしょう。

しかし、ブランドイメージを損なわないため、商標や称号の利用には条件が定められています。商標の使用許諾の範囲をあらかじめ確認し、不正利用によるトラブルが起きないよう注意しましょう。
4.契約期間や更新の方法、更新費用を調べる

フランチャイズ契約の期間や更新についても、よく調べておきましょう。契約期間はフランチャイズ契約を締結した日からなのか、店舗をオープンさせた日からなのか、契約期間満了後の更新は自動更新なのか、更新手続きが必要なのかなど、事前に確認が必要です。

なお、更新の際は、更新費用がかかるフランチャイズもあります。こちらもあわせて調べましょう。
5.テリトリー制導入の有無や種類を確認する

先ほどもあったように、フランチャイズによってはテリトリー制の導入があるため、加盟店は経営の安定化が期待できます。なお、テリトリー制には4つの種類があります。

1つめは、「クローズド・テリトリー」といって、他の加盟店をテリトリー内に出店させないようにするものです。

2つめは、「オープン・テリトリー」で、テリトリー内に出店する店舗の数に上限を設けます。

3つめは、「優先的テリトリー」で、本部が新たな店舗の出店を検討する際は、まず、テリトリー内の加盟店へ優先的に声をかけて出店権を与えるというものです。

4つめの「期間限定テリトリー」は、開店後の一定期間に限り、テリトリー内に他の加盟店を出店させないようにします。

ただし、こうしたテリトリー制があっても、競合他社の出店によってシェアが奪われる可能性は否定できませんので、その点は注意が必要です。
6.法定開示書面と契約書の内容を比較する

フランチャイズに加盟する際、本部と加盟を希望する人の間でフランチャイズ契約を結びますが、その準備段階で「法定開示書面」が用意されます。

法定開示書面とは、「中小小売商業振興法」に基づくもので、フランチャイズ本部は契約前に、フランチャイズへの加盟を希望する人に法定開示書面を交付し、内容を説明することが義務付けられています。

気を付けなければならないのは、フランチャイズ契約書には、法定開示書面には記載されていない文言が書かれている場合があるという点です。契約後に内容が異なることに気づいても、原則的には、契約書の内容が有効となります。

そのため、事前に必ず法定開示書面と契約書の内容を比較しておきましょう。
7.競業避止義務の範囲や守秘義務を確認する

契約期間満了後のことを考え、競業避止義務の範囲や期間も確認しておきましょう。また、フランチャイズに加盟して得た知識やノウハウには、守秘義務があります。これらもあわせて把握し、無用なトラブルは避けましょう。
■フランチャイズで起こりやすいトラブルを把握しよう

フランチャイズには、起業や業界が初めての人でも挑戦しやすい、本部のノウハウが活用できるなどのメリットがあります。その反面、フランチャイズ特有のトラブルが発生することがあるのも事実です。

トラブルを回避するためには、どのようなトラブルが起こりやすいのか事前に把握し、注意点をよく頭に入れておくことが大切です。フランチャイズへの加盟を考えるなら、そのメリットを充分に生かせるよう、トラブル回避のポイントも押さえておきましょう。

武藤貴子 ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント 会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中 この著者の記事一覧はこちら