「何でしょう、この得した気分」読書した金額は35万円 通帳での見える化と予約制の24時間貸し出しで3年連続日本一の図書館 一方、図書館リストラで住民困惑の自治体も…

夏目キャスターの視線で取材に行く「なつめのめ」。今回は、図書館です。利用者の伸び悩みや財政難の中、名古屋市では図書館のリストラが始まろうとしているんです。一方、工夫を凝らして3年連続で日本一となった図書館の秘密も取材してきました。
名古屋市の千種図書館。高度成長真っただ中の1968年にできた、いかにも歴史あるたたずまいですが…
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(夏目キャスター)「現在耐震化工事を行っているんですね。足場も組まれています。気になるのはこの千種図書館、だいぶ老朽化が進んでいるのがわかるんですが、実はエレベーターがついてないんですね」
利用者を待ち構える30段の階段。今は耐震工事中で、本の貸し出しはこの小さなスペースだけで行っています。しかし、今後もエレベーターなどバリアフリー化に向けた施設の改修は予定されていません。
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そのワケは、名古屋市は今後図書館の大規模再編計画を始めるからです。使えるうちは古いまま使って、新しいところに移転するそうなんです。
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名古屋市には現在、鶴舞中央図書館近くの中区を除く15区全てに、合わせて21の市立図書館があります。鶴舞を除けば全てがほぼ同じ規模ですが、多くが築50年前後となっていて、作り変える必要があります。
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「なごやアクティブ・ライブラリー構想」というこの計画。第一弾は老朽化が進んでいる千種・東・守山・名東の4区。
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現在5つの図書館がありますが、このうち東区と守山区の3つの図書館は規模を縮小。千種区・名東区の2つは更に小さな規模に縮小し、移転。そしてこれまでより大規模な図書館を星が丘付近に一つ新設します。
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過去にない規模の再編ですが、問題は大幅に縮小される図書館があることです。
訪ねたのは、大幅縮小の対象にあがっている名東図書館。ここで利用者に話を聞いてみました。
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(図書館の利用者)「この(名東)区に住みだしたのも、自転車で子どもたちが行ける範囲に図書館があるというのがあったので、(なくなると)困ります」「お金がかかるかもしれないけど。とてもつらいです」
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施設の老朽化と図書館の利用者が市民の1割程度と低い状況が続く中、より市民が利用したくなる施設を目指すといいますが、現在およそ400坪、9万冊を取りそろえる名東図書館は、再編後は広さ90坪と4分の1以下となり蔵書も半分以下になる見通しです。
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また、再編で規模が縮小されてしまうと、現在40人を超えるボランティアが活動し、年間2000人を超える子どもたちが利用している、読み聞かせの会を開くスペースがなくなってしまうおそれもあるのです。
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(図書館の利用者)Q.地域に図書館があると 子育てのしやすさはある?「もちろん近くだったからありがたかったので、(このまま図書館が)あってほしいですね」
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一方こちらは、名東図書館の近くにあるNPOの子育て応援拠点。
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子供用の紙芝居や絵本などは名東図書館から借りているもの。図書館の司書に選んでもらった絵本を、1回20冊ほど借りることで活動ができています。(読み聞かせのボランティア)「子どもたちが(本を)手に取って選ぶ“場”もなくなるし…」「名東区の文化がなくなってしまう」
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こうした声をどう思うのか。名古屋市教育委員会に聞いてみると…名古屋市教育委員会 磯部裕司 主幹)「人口が減っていく中で、今ある施設をこれからも維持していくという事はなかなか難しい。やはり一定の選択と集中はしていかなければならない」
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名古屋市教育委員会の担当者はこのように述べ、計画通り大規模再編を進める方針を示しました。人口の多い中心部には本が増え、他では減ることになる今回の図書館再編。図書館学を研究する専門家はこう話します。(都留文科大学 図書館学 日向良和 教授)「財政規模がそれなりにある名古屋市のような政令指定都市の中で、施設の統合、特に図書館の統合を検討する必要性に疑問を感じるところですね。維持できるのであれば維持していくべきだと思ってます」
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一方、使いやすい魅力的な図書館のヒントが、意外と近くにありました。
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(夏目キャスター)「入るとすぐ右手、こちらカフェスペースになってるんですね」夏目キャスターが訪ねたのは、2017年オープンした「安城市図書情報館」。複合商業施設の中に作られています。
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(安城市 アンフォーレ課 足立 結さん)「同規模自治体の中で(貸出数)1位という記録をいただいています」
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オープン翌年の2018年から3年連続日本一の貸出冊数を記録した、もっとも利用されている図書館なんです。
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(夏目キャスター)「すごく開放的、そして綺麗。あとですね、ただシーンとしている図書館ではなくて、何となく生活とすごく近い距離にある図書館だなっていうのを感じます」来たくなる秘密の一つがこの特設展示コーナー。書店のようにおすすめの本を紹介し、手に取りやすいように並べています。そして、本だけではありません。
(夏目キャスター)「こちらが図書館の児童書のコーナーなんですけど、このコーナーの一角、0歳から3歳までのお子さんが遊べる、そして選んできた本をここで読むことももちろんできるそうなんですが、子育ての相談もできるそうなんですよ。こういうのを子育て世帯は望んでいるんですよ」
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「電車好きなの?」(子ども)「ポッツポー、でんちゃ」「(子どもが)生き生きしています」
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全国的にも珍しいこんなサービスも。(安城市 アンフォーレ課 足立 結さん)「本を24時間いつでも受け取りができる機械になっています。年末年始でもいつでも年中受け取りができます」
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Webで本を予約し、図書館の外にある機械の中に自分専用のカードを差し込み、しばらくすると…
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(夏目キャスター)「来ました来ました。なんか自動販売機というか車の立体駐車場というか、面白い」
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そして今回、夏目キャスターが一番気に入ったサービスが…(安城市 アンフォーレ課 足立 結さん)「こちら読書通帳になりまして、利用者が過去に読んだ本を記録することができる通帳になっています」
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今までに借りた本のタイトル、日付、そして本の定価まで記録した「読書通帳」なんです。
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(夏目キャスター)「見てください、今までに読んだ本、累計合計金額35万円。何でしょうこの得した気分」
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(安城市 アンフォーレ課 足立 結さん)「こちらも無料で読めているわけなので」こうした数々の工夫があって、1日平均なんと1700人以上、年間52万人の入館者があるんです。図書館は子供から大人までお金をかけずに学べる大切な行政サービス。名古屋市の大再編には利用者第一のアイデアが求められます。
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2023年5月26日放送 CBCテレビ「チャント!」より