名古屋入管の施設に収容されていたスリランカ人の女性が死亡した問題で、亡くなる直前の女性の様子を映した監視カメラの映像の一部が、21日に名古屋地裁で公開されました。ウィシュマさん(死亡する11日前):「長い時間食べてない、長い時間寝てない、1カ月、1週間」 名古屋入管の施設のベッドに横たわる、スリランカ国籍のウィシュマ・サンダマリさん(当時33)。
弁護団が公開した、ウィシュマさんが亡くなる11日前の監視カメラの映像です。職員:「分かった。病院に行けるようにボスにお話しするけど、今日行けるかどうか分からないから」ウィシュマさん:「担当さん、今やってあげて」職員:「連れて行ってあげたいけど、私の力じゃ、私パワーないからできない。権力ないからさ」
消え入りそうな声で職員に体調不良を訴えるウィシュマさん。これらの監視カメラの映像が21日に法廷で公開されましたが、この異例の対応に至るまでには長い月日がかかりました。 遺族は、ウィシュマさんが亡くなってから1年が経った2022年3月、名古屋入管がウィシュマさんに必要な医療を提供せずに死亡させたとして、損害賠償を求めて国を提訴。
「死に至った真相が知りたい」と、亡くなる直前の295時間分が記録された監視カメラの映像の公開を求め続けました。しかし国は「保安上の支障がある」として映像の公開を拒否。 提訴から1年近くが経った2023年2月、名古屋地裁がそのうち5時間分の映像について、法廷で公開するという”異例の決定”を下しました。ウィシュマさん遺族側の指宿昭一弁護士(2022年12月):「ウィシュマさんの事件の真相を社会に対してはっきりと伝える、そういう役割を持っていると思います」 法廷で初めて映像が公開された21日、名古屋地裁には84の傍聴席に対し152人が傍聴券を求め、行列をつくりました。
ウィシュマさんの妹のワヨミさん:「結構時間かかったけどやっと上映することになり、私からお願いしたいのはできるだけ来ていただいて、(映像を)見てくださいということ」
裁判は午前10時半に開廷。妹のワヨミさんは映像が公開される直前に退席してしまいましたが、もう一人の妹のポールニマさんが、モニターに映る姉の様子を真剣な眼差しで見つめました。 法廷の大画面には、ウィシュマさんが職員に体調不良を訴える様子が映し出されたほか、ウィシュマさんがベッドから落ちたまま這い上がることができない様子などが映し出され、傍聴した人の中にはハンカチで口を押さえながら見入る人もいました。
傍聴した人:「常識的に見ると、彼女はとても辛い状態にあった。医者に見せるべきだったと思います」別の人:「(入管の)中の人の命と健康を守る責任があるのにも関わらず、ビデオの中に映っていた人にそういった責任感が全く感じられませんでした」 ただし、ウィシュマさんがバケツを抱えて嘔吐する場面などは、「気分が悪くなる人が出るかもしれない」という裁判所側の判断でモニターが黒い画面に切り替わり、公開された3時間半の映像のうちおよそ40分間は音声も流れませんでした。
21日午後に会見した妹のポールニマさんは、「どれほど姉が残酷な状況にさせられたか、ビデオを見た皆さんが自分の目で分かったと思います。姉がどういう状況だったか、残りの映像も見てほしい」と語りました。
法廷での監視カメラ映像の公開は、7月12日の裁判でも引き続き行われる予定です。