「壊し屋」小沢一郎氏を筆頭に立憲の過半数が「反泉」路線へ。離党ドミノ→野党再編の引き金になるのは小池都知事?

今国会での衆院解散が見送られ、「今なら立憲が野党第一党のままでいられたのに、秋以降の選挙になると、維新の準備が進んで、野党第一党の座を明け渡すのでは」と弱気の声が漏れる立憲。小沢一郎氏ら党内の議員が泉健太代表の路線に異を唱え、「小沢グループ」が立ち上がるなど、党内は揺れている。一方の維新も、次期衆院選で立憲の獲得議席を上回れるかは微妙な情勢だ。両党の攻防が続くなか、野党内の主導権をとろうと、野党再編が一気に進む可能性もありそうだ。
「現在の党に十分な力量がないことは、謙虚に真摯に認めつつ、他の野党とも十分に連携すべきだ」泉氏が内閣不信任決議案を岸田文雄首相に突きつけた6月16日、小川淳也前政調会長は有志議員との会見で、泉氏の「共産党さんとも(候補者調整は)基本やらない」という方針に異を唱えた。会見に出席した10人ほどの議員の中心にいたのは、これまで数々の政党の分裂の渦中にいたことで「壊し屋」の異名をもつ小沢一郎氏。小川氏は「これは倒閣運動ではない」と“泉おろし”を否定したが、立憲衆院議員の半数を超える53人が賛同しているとも強調した。全国紙政治部記者が解説する。
小沢一郎氏(共同通信社)
「立憲の議員にとって、野党候補を一本化できるかどうかは、自分の選挙の勝敗を左右する死活問題。たとえば、会見で小沢氏の隣に座った東京5区の手塚仁雄氏は『東京都内の選挙区の一部は共産にゆずってもいい。その代わり、自分の選挙区に共産候補を立てないでほしい』という考え。一方、泉代表は連合の意向に配慮し、国民民主党とは協力したいが、共産とは候補者調整をせず戦うという姿勢。野党共闘をめぐる路線対立が、改めて表面化した形です」さらに永田町を驚かせたのは、小沢氏を中心とするグループが21日に発足したことだ。「小沢氏に近い牧義夫衆院議員ら15人ほどが、定期的に勉強会を開いていくそうです。小沢氏自身は前回の衆院選の際、小選挙区で負けるなど、かつての威光は見る影もありません。ですが、わざわざこのタイミングでグループを立ち上げたことで、党内では『やはり泉おろしでは』との見方が出ています」(前出の全国紙政治部記者)無視できない規模の「反泉」の動きに、泉氏も対応を迫られている。泉氏は21日夜に出演した「ニコニコ生放送」で、岡田克也幹事長が小川氏らから、野党候補一本化の要望について話を聞いたことを明らかにした。そのうえで「(他の野党と)やれたら一緒にやるということも、可能性としては持ってきていた。とはいえ、今の状況ではそんなことばかり求めても仕方ない。この状況では立憲自身が頑張るしかない」と理解を求めた。党内の議員からは「党内外に遠慮して発言がコロコロ変わり、何をしたいかわからない泉氏には、遠心力がはたらくばかり。もっと堂々として、リーダーシップを発揮してほしいのに」と呆れの声がもれる。
立憲では、内部で声をあげるだけでなく、党を見限って出ていく動きも目立ち始めた。6月15日には松原仁氏が、希望していた東京26区からの出馬を認められなかったとして離党。もともと保守的な立ち位置で知られ、維新の議員らとの勉強会にも参加していたことから、いずれ維新入りするのでは、とささやかれている。全国紙政治部記者は、松原氏の離党は“離党ドミノ”の引き金になるかもしれないとみる。
立憲民主党の判断は?(泉ケンタ事務所facebookより)
「今回、解散が見送られ、衆院選までに時間的余裕ができたことで、離党者は増加するのではとみられています。党内では、松原氏に近い保守系議員らの名前が『離党予備軍』として取りざたされています」すでに地方では、立憲を離党する流れが加速しつつある。「たとえば岐阜県では、立憲公認での衆院選出馬をめざしていた元職が離党。次期衆院選では、れいわ新選組からの出馬を模索しています。小選挙区でなかなか勝てない候補者にとって、比例復活できそうな政党かどうかは重要。両党が比例で獲得できそうな議席数や、小選挙区で勝てなかった者同士の惜敗率争いを総合的に考え、落ち目の立憲よりも、れいわのほうが復活の可能性が高いと踏んだのでしょう」(前出の全国紙政治部記者)
野党第一党にもかかわらず、脱出の動きに歯止めがかからない立憲。一方で、維新の勢いも十分ではないようだ。「政党支持率では立憲を上回る維新ですが、小選挙区で勝てる見込みがあるのは、大阪など関西圏の選挙区にとどまりそう。小選挙区と比例を合わせた議席で立憲を上回れるかは微妙です」(立憲関係者)それでも、維新が一気に旋風を巻き起こすカギとなる人物がいるという。「小池百合子東京都知事です。70歳の小池氏にとって国政に舞い戻るチャンスは限られており、維新から担ぎ上げられるのは、悪い話ではありません。維新にとっても、小池氏と連携できれば、全国で支持を広げる足掛かりになります」(全国紙政治部記者)
小池百合子東京都知事(本人facebookより)
こうして維新が勢いを増せば、一気に野党再編が進む可能性もありそうだ。この記者は「立憲が野党第二党になってしまったら、ニュースで取り上げられる機会も減ります。今の立憲には『党の理念や政策に共感しているから』というよりも『野党第一党だから』という理由で所属している議員も多い。衆院選に向けて、どこが野党第一党になるかを見極めたうえでの野党再編が進む可能性もあります」と見立てる。解散は見送られても、各議員の生き残りをかけた激しい戦いはすでに始まっている。取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班