卓球部&女子硬式野球部部長兼務の仙台大・髙橋仁学長・・・ガンバる東北人

仙台大の高橋仁学長(67)は、長年にわたって宮城県の教育の最前線で仕事を務めてきた。21年4月から学長に就任し、現在は卓球部と女子硬式野球部の部長も兼務。多忙な職務の合間を縫って多くの部活動を現地で応援する“スポーツ大好き学長”の素顔に迫った。(取材・構成=岩崎敦)
高橋氏と仙台大の出会いは約12年前にさかのぼる。角田高の校長を退任し、県の教育庁で勤務していたころに東日本大震災が起こった。スポーツで宮城の児童に元気を取り戻させるために始めた「ジュニアスポーツパワーアップ事業」の担当となり、仙台大と協力しながら事業を進めた。
「以前から体育系大学として頼りになる大学だと思っていました。これをきっかけに、仙台大のことをより理解できるようになってきましたね」
様々な縁が重なって19年4月に副学長へ就任。2年後から学長を務めることになった。
「私が教えていた高校までの学校文化とは全く違うので、最初は戸惑いもありました。規模が大きく先生方は専門分野に取り組んでいる。研究とのバランスをどう取るか、いろいろと考えました」
多忙な毎日を過ごす中で、部活動の応援に喜びを感じている。今春の仙台六大学野球リーグは東北福祉大との一騎打ちとなり、優勝をかけた最終節は1勝1敗で月曜の第3戦までもつれた。土日の第1、2戦は問題なく応援できたが、月曜は会議があった。
「午後から会議があったので途中まで見て戻りました。ただ川平のキャンパスだったので(会場の東北福祉大野球場からは)10分ぐらい。また球場に戻って優勝の瞬間も見ましたよ。バンザイして、また次の会議に戻りました(笑い)」
野球以外にもサッカーの大学選手権など、時間の許す限り応援に駆けつけている。
「スポーツが大好きなので、できるだけいろんな部活の大会に顔を出したいと思っています。感動する場面が多いし、勝っても負けてもスポーツはいいですね」
学生時代は卓球部だったこともあり、現在は卓球部部長も兼任。5月には宮城県卓球協会の会長にも就任した。
「前任の柴田会長は私の高専時代のコーチでした。会長は元日本代表選手で、何か月か見てもらって強くなれた。私が仙台大に移るときに『手伝ってくれ』と言われて副会長になりました。柴田会長が昨年度でご勇退されることとなり、後任の会長に指名されました。仙台大は上海体育大と提携していますが、4年前に訪問した際に、大学内にある卓球学院の院長が柴田会長と親しかったことが分かって一気に打ち解け、あの時にも『縁』を感じました。コロナが落ち着いたこの6月には学生2人が上海体育大に約1か月卓球留学します。技術だけではなく見聞を広げるいい機会にもなりますね」
4月には東北地方の大学で初めて女子硬式野球部を創設。こちらも部長を兼任している。
「東北の大学に女子野球部がなかったので受け皿をつくりたかった。アイリスオーヤマさんがスポンサーについてくれ、地元の柴田町、角田市、白石市からも応援をいただけています。日本一を目指すだけじゃなく、女子野球で地域を元気にしたい。オフには小学生女子を対象にした野球教室などもやりたいと思っています」
WBC日本代表の宇田川優希投手(オリックス)をはじめ、ソフトバンクの大関友久投手、体操で9月の世界選手権代表に決まった南一輝選手ら、一流アスリートを輩出している。
「成功するには都会に行かなきゃ、という考えがメジャーですが、南選手は地方からでも世界を目指せる例をつくってくれた。我々はそのような環境をつくるのが大事だと思っています」
スポーツを通じて学生に教えたいことがある。
「スポーツって勝つ人は1人で、あとは全部負けるんです。その負ける中から何を学ぶかが大事で、その後の人生の糧となり得る。今はコロナの制限がなくなり、部活も遅い時間までできるようになりました。学生の皆さんも張り切っています。国際交流にも力を入れ、様々なことに挑戦できる大学にしていきたいと思っています」
◆高橋仁(たかはし・ひとし)1956年1月25日、宮城・名取市生まれ。67歳。東北学院大卒業後の80年に宮城県立山元養護学校の教諭として赴任。利府高、柴田高などを経て2004年から角田高校長に。07年から宮城県教育庁勤務を経て12年からは教育委員会教育長、19年4月に仙台大副学長就任。21年4月から現職。趣味は映画観賞と落語。