自衛隊銃乱射事件で注目の第10師団 元幹部が明かす「小銃紛失…の画像はこちら >>
岐阜市内の陸上自衛隊日野基本射撃場で発生した小銃乱射事件。渦中の第10師団第35普通科連隊は、過去にも小銃を紛失する前代未聞の事件が起こっていた。さまざまな不祥事が起こっている第10師団について、幹部を務めた筆者が明らかにしていく。
第10師団第35普通科連隊は、今から10年前の2013年に89式小銃を演習場内で紛失し、見つからないまま未解決で終わる事件が発生した。
県外の部隊なども動員し、紛失した東富士演習場に泊まり込んで数ヶ月に渡って演習場内の全ての草を刈って捜索を行ったが、未だに見つかっていない。
もし演習場に不法侵入した第三者によって持ち去られたとすれば、これは深刻な問題であり、その可能性について慎重に考慮するべきだ。
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筆者が幹部を務めていた第10師団では不祥事が相次いでいる。
例えば、第10師団の第33普通科連隊(三重県津市久居駐屯地)では、令和4年度の1年間だけでも、新隊員同士の暴行事件や新隊員教育隊班長から新隊員への暴行事件に始まり、パワハラ、セクハラ、銀行口座の他人への譲渡などの問題が相次いだ。
これらの問題は筆者が第33普通科連隊の幹部から陸士までを含む範囲で確認したが、そのほとんどが公には報道されていない。
小銃乱射事件の捜査のように、自衛隊で起こった犯罪は、警察ではなく警務隊という内部の組織が捜査を行う。警務隊も同じ自衛官なので、詳細情報が外部に公開されることはない。
また、陸上自衛隊には、内部の諸問題を匿名で聞き取る「監察アンケート」制度が存在するが、監察官という監査業務を行う者もまた自衛官。
そのため、このアンケートを通じて得られた情報の取り扱いや結果の公開にも問題が存在し、通報しても報われていない実情がある。
第33普通科連隊においても、監査の結果「お咎めなし」という事例が令和4年度にあり、筆者は実際に第33普通科連隊の複数の隊員から確認している。多くの組織で外部監査が一般的に行われる中で、このような事態は大きな問題ではないだろうか。
第10師団で起きている不祥事は、できるだけ早く対策を講じることが求められている。また、隊員による内部告発は重要であり、その労力と勇気を適切に評価するべきである。
監査制度についても、その有効性と公正性を改めて検証し、必要であれば改善する必要がある。2016年のイラク日報問題とそれに伴う稲田防衛大臣と岡部俊哉陸上幕僚長の辞任は、情報の非開示がどれほどの問題を引き起こすかを示している。
それから数年経った現在も、情報の公開と透明性が求められている。現状が続けば、小銃乱射事件のような事態が再び起きる可能性も全く否定できない。
外部に弾薬を持ち出しテロを企てるなどの事実が捜査によって明らかになったとしても、それは組織改革の重要性を改めて示すものである。自衛隊には制度や人事の見直しを、読者には問題の理解と認識の深化を求めたい。
安丸仁史(やすまるひとし):1994年福岡生まれ、福岡育ち。防衛大学校(人文・社会科学専攻)中退後、西南学院大学文学部外国語学科卒業。 2017年陸上自衛隊に幹部候補生として入隊。
職種は普通科で、小銃小隊長や迫撃砲小隊長、通訳などを務める。元レンジャー教官。 現在は複数事業を経営。