アルファードVSヴェルファイア、どっちが人気? 新型登場で関係は変わるのか

トヨタ自動車「アルファード/ヴェルファイア」(略してアル/ヴェル)がフルモデルチェンジを実施した。新型でアルファードは4代目、ヴェルファイアは3代目となる。トヨタ製ミニバンのフラッグシップであり、兄弟車でもある2台はどちらが人気なのか。新型登場で関係性は変わるのか。販売台数を見ながら考えた。

○登場時はヴェルファイアが圧倒?

このクラスのトヨタのミニバンはもともとアルファードだけだったが、2008年にアル/ヴェルの2台体制になるやいなや、まずはヴェルファイアの人気が爆発した。2段重ねの4眼ヘッドライトを持つ個性強めの顔つきが熱烈なファンを獲得した結果だろう。

確かに、この世代のアル/ヴェルを比べると、アルファードは先代から引き継いだちょっと上品なハイノーズデザインであるのに対して、ヴェルファイアはエアロパーツを装着した姿がばっちりと似合うヤンチャ系。こっちのほうが30~40代の子育て層、つまり若いミニバンオーナー層に受けた。がんばって(長期ローンもいとわず)手に入れることができたら「すごいでしょ」を周囲に自慢できるのは間違いないし、ヴェルファイアがその願いを叶える“憧れのクルマ”になったのである。

これに加えて、ヴェルファイアの販売チャンネルだったネッツ店が、アルファードを販売するトヨペット店の約2倍の数の店舗を構えていたという相乗効果もあった。2010年の販売台数はアルファードが約3.5万台程だったのに対し、ヴェルファイアは約6.1万台と圧倒的に差をつけていたのだ。

しかし、次の世代交代が行われた2015年になると、アルファードが約4.4万台に対してヴェルファイアが約5.4万台と両者の差は次第に接近してくる。この世代のアル/ヴェルのマイナーチェンジモデルが出る直前の2017年には台数でほぼ互角となり、2018年にはアルファードが約5.8万台、ヴェルファイアが約4.3万台とついに台数で逆転する。翌年はさらに差が開き、アルファードがヴェルファイアのほぼ倍に近い数字になっている。

アルファード逆転の理由もデザインによるものだろう。より強面の顔になったヴェルファイアよりも、そこそこの派手さと上品さを兼ね備えた顔のアルファードに人気が移ったのだ。特にアルファードの最上級グレード「エグゼクティブラウンジ」が、企業のオーナーや要人などVIPを乗せる「ショーファードリブン」のクルマとして認知され、「VIP専用車=アルファード」という代名詞的存在になったのが大きかった。

そして、全てのトヨタ販売店がアル/ヴェルの両方を扱うようになった2020年には、アルファードが約9.1万台だったのに対し、ヴェルファイアはわずか1.8万台と大きく差が開いてしまった。ヴェルファイア消滅の危機である。

ところが、6月21日に行われた新型アル/ヴェルの発表会では、ヴェルファイアの存続が明らかになった。トヨタ執行役員のサイモン・ハンフリーズ氏はプレゼンで「2人は誰に愛されているかを知っている」「愛されてきたアイコンを捨てるなんて、本気か?」の演題でそのいきさつを紹介。アルファードが自信をつけすぎたことでヴェルファイアは廃止の運命をたどりそうになったのだが、この話が社内に広まると開発チームだけでなく、経営陣や販売店、一部のVIPユーザーなどから「絶対に認めない」と反対意見が殺到、今後も2台はそれぞれの個性をいかしつつ、ライバルとして激しく戦い続けることに決定したのだそうだ。

新型アル/ヴェルの差別化や販売台数の見通しについては、デザインを担当したトヨタ車体 デザイン戦略企画室の横井聡グループ長から以下のような話を聞くことができた。

「今回の2台を見ていただくと、特にヴェルファイアは従来の過激さを少し抑えた、モダンで上質感が感じられるデザインになっています。もっと押し出し感が強いクルマをお望みの方には、よりアグレッシブなグリルをオプションで用意しました。ヴェルファイアには専用グレードとして、ハイブリッドより強力な2.4L直列4気筒ターボエンジンや特別なチューニングを施した足回り、フロントパフォーマンスブレースを追加した高剛性ボデイなどを搭載する特別な1台を用意しています。運転する喜びがしっかりと感じられるクルマに仕上がっていると思います。現状は、『高級ミニバン=アルファード』のイメージが定着したことで販売台数で大きな差をつけられていますが、8,500台/月という販売予定の中で、両者の割合を7:3あたりまで戻せたらと思っています」

原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら