「逮捕まではされないと思っていたんですが…」市川猿之助(47)秋復帰の楽観論がはびこっていた澤瀉屋は大将不在で放心状態…それでも「猿之助が贔屓していたAを我々も守らなければ」の甘ちゃんな声も

「逮捕まではされないと思ったんですが……」こう嘆息を漏らすのは、警視庁に母親の自殺をほう助した容疑で逮捕された市川猿之助(47)が大将を務める「澤瀉屋」の関係者だ。歌舞伎界では興行的に市川宗家の「成田屋」(市川團十郎らが所属)と肩を並べるだけに、大黒柱の早期復帰を夢想していた関係者も少なからずいたという。しかし、下手の考え休むに似たり。澤瀉屋の淡い期待は、むなしく梅雨空の果てに消えていった。
5月18日の事件発生時は、明治座で開かれていた「市川猿之助奮闘歌舞伎公演」の真っ最中。昼夜2公演を務めていた猿之助の代役に、おいの市川團子(19)=市川中車(57歳、香川照之)の息子=と、中村隼人(29)の2人をあてて乗り切った。続く「六月大歌舞伎」(6月3日~25日、歌舞伎座)では「性加害報道」で表舞台から消えていた中車が主役を演じ、猿之助の代役を務めた中村壱太郎(32)も活躍、舞台は連日満員で澤瀉屋の底力を見せつけた。
明治座でおこなわれた「市川猿之助奮闘歌舞伎公演」
これで安心したのか、歌舞伎の興行元である松竹は猿之助が10月まで舞台を休演することを発表していた。これは言い換えると、11月以降の「猿之助復帰」をにらんでいたからにほかならない。父の四代目段四郎と母と「心中」してひとり生き残った猿之助が、本当に強制捜査を免れると思っていたのだろうか。松竹関係者が語る。「猿之助はああみえて、強運の持ち主。今回も中村隼人だけでなく、劇作家の横内謙介さん(スーパー歌舞伎などの作品を多数手がける)らを中心に『守る会』的な組織が自然と出来上がっていた」松竹には古くから警察OBも表に裏に出入りしており、「サポート」を提唱する向きもあったという。「普通に考えれば『逮捕はない』ということは考えにくいのですが、実際、松竹や澤瀉屋内でそういう話はでていました。ある警察OBも『なんとか逮捕させないように呼び掛けてみる』と言っていたという話を聞いた程ですから、まさかの逮捕に放心状態です。でもこうなった以上、猿之助にはとにかく早く真相について、自らが知っていることを正直につまびらかにしてほしい」(前同)高をくくっていた松竹および澤瀉屋の関係者だが、一部の弟子筋からは不安とも不満ともつかない声も上がっていたという。
2012年、猿之助襲名時の記者会見(写真/共同通信)
「最近は弟子筋からも、四代目に対して『警察の調べに心神耗弱のふりをしているのではないか』などというような陰口が聞こえるようになった。今後の舞台に関しては、四代目のあけた穴は、立役は隼人、女形は壱太郎で行くという方針が決まったそう。来月には、中車が人生初の宙乗りに挑み、話題をさらうだろう」(前同)
抜けた大黒柱はもう留置房の中だ。簡単に引き戻せないとわかれば、変わり身が早いのも世の常だが。「事件発生直後は『團子の完璧な代役』、6月は『中車の主演復帰とその予想以上の出来栄え』で乗り切り、来月は『中車宙乗り』でも話題を集め、チケットは売れるだろう。日本人は基本判官びいきだから(苦笑)。でも、その次の”目玉”はなくて、特に8月の『新・水滸伝』は今からお通夜の予感しかしない。あと、可哀想なのは7月に出演する浅野和之さんだね。猿之助が抜擢し、重用してきた俳優のひとりだが、あれは猿之助がいる舞台だからこそ“スパイス”として生きる。猿之助がいないなかでメインキャストのひとりとして、歌舞伎の訓練をしたわけでもない浅野さんが出るというのは無理がある。しかも歌舞伎座ですからね。本人も当惑していると聞いていますよ」
子供時代の市川團子
澤瀉屋関係者は続ける。「そもそもここ数年の猿之助の舞台はもう、いかに彼をすばらしく見せるかというだけの舞台。5月明治座の『不死鳥よ波涛を超えて』も44年ぶりの再演、六月大歌舞伎の『吃又』の『浮世又平住家の場』の幕も53年ぶりの再演。この幕は、主人公の妻である『おとく』が活躍する舞踊劇で、もちろん、おとくは四代目が演じるはずだった。つまり、両方とも四代目の四代目による四代目のためのステージでした」松竹や澤瀉屋に「逮捕まではない」と楽観論がはびこっていたのは、猿之助が自らを「替えの利かない存在」にまでガチガチに固めていてしまったからではないか。次代の「猿之助」と目されている團子にしても、四代目の承認がなければ継承は叶わない。「四代目は後援会の食事会で『止め名にするも私の胸の内三寸』と『猿之助』の名跡について話していた。猿之助を名乗るからには、周囲をひれ伏させるようなカリスマ性が最重要で、同情論や名跡を途絶えさせてはいけないという理由だけで継がせられるものじゃないんです」やはり松竹や澤瀉屋にとって「猿之助逮捕」は激痛だった。しかし、ご都合主義の楽観姿勢がこの体たらくを招いたことも間違いない。ある歌舞伎関係者はこうあきれた。
目黒警察署にはいる猿之助を乗せた警察車両(撮影/集英社オンライン)
「澤瀉屋の一部では猿之助が『最愛』と遺書まで残したマネージャーのAが、文春の直撃を受けてひどい裏切り発言をしてからも『猿之助が贔屓していたAがあんな発言をするはずがない。仮にしたとしても自分がヒールになることで猿之助を守ろうとした発言に違いない』と受け止めていた。彼らの中には『だから我々もAを守らなければ』とまで言っている人までいるのだとか。人がいいというか、世間知らずというか…」
※「集英社オンライン」では、今回の事件について取材をしており、情報を募集しています。下記のメールアドレスかTwitterまで情報をお寄せ下さい。メールアドレス:[email protected]@shuon_news取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班