物事の核心に迫る「大石が聞く」。今回は「活字離れ」「本離れ」と言われているなか、昔ながらの「街の本屋さん」を取材しました。60年以上地元密着、そしてある分野に特化した書店。それぞれの強みとは。
どんどん姿を消す「書店」 街の本屋さんの生き残り策とは? “…の画像はこちら >>
店構えに大きな本が目印の、名古屋市西区の書店。
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(小学生の姉妹)「これ買う?どうする?」60年近くこの場所で、地元の本屋さんとして愛されてきました。(大石アンカーマン)「こちらにはよく来られる?」
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(男性客)「もう50年来なんですよ。いま還暦になったんですが10歳の時から来ています。ここの本屋がなくなったらどうしようかと思っているくらい、ないと困る場所」
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50年通い続ける男性に…。
(女性客)「私たちだと大きな本屋さんはちょっとなかなかね…探すのが大変」散歩ついでに毎日やってくる女性。何かおもしろい本はないか、ふらっと立ち寄っていろいろ探すにもちょうど良い広さです。
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76歳の服部順子さん。長年一緒に店を守ってきた夫は9年前に亡くなり、今は1人で店を切り盛りしています。
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(服部書店 服部順子さん)「(夫が亡くなって)9年だから、くたびれちゃって辞めようかと思うけど、近所のみんなが『辞めたらいかんよ』と言ってくださるから本当にありがたい。娘は1人東京にいるんです」
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(大石アンカーマン)「娘さんは跡を継がない?」(服部順子さん)「継がないです」
長年ここに本を卸している取次業者の横井さんも、街の書店が置かれている厳しい環境についてこう話します。(新進 横井淳一 部長)「やっぱり書店の数が年々減っておりますし、紙の本の売り上げ自体もすごく減少している。斜陽産業になりつつある」
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大型書店への集約化やAmazonなどのネット通販の拡大で書店は年々数が減り、この20年でほぼ半減。約1万1000店にまで落ち込んでいます。
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そんな中、1つのテーマに絞ることで生き残りを図る書店が。
(大石アンカーマン)「名駅のほど近く、名古屋市中村区にやってきました。こちらに、ある特色を生かした本屋さんがあるんです」出迎えてくれたのは店長の堀江さん。2022年12月にこの店をオープンさせました。
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(NAgoya BOOK CENTER 堀江浩彰 社長)「名古屋駅の近くで、名古屋の本だけを扱う本屋をやってみたいと思い始めましたた」
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実は置いているおよそ700冊すべてが「名古屋関連本」というのが店の売りです。
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(NAgoya BOOK CENTER 堀江浩彰 社長)「こちらは“なごやぐらし”というカテゴリーに分けていて、名古屋で生まれたり暮らしたことがある著者の本を集めた棚」
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著者が名古屋にゆかりがある本を集めたゾーンです。(大石アンカーマン)「藤井聡太さんは愛知県瀬戸市ですもんね」(堀江浩彰 社長)「瀬戸はセーフです」
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(大石アンカーマン)「愛知の人なんだ名古屋の人なんだというと、食いつきはいいですか?」(堀江浩彰 社長)「この人も名古屋なんだこの人も愛知なんだということで、びっくりする人が多い」また、一見名古屋とどう関係があるのか、分からないような本も…
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(堀江浩彰 社長)「こちらは絵を描いている方が愛知」
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絵本の挿絵を描いた作家や、物語に出てくる舞台などが“名古屋”に関係あるのです。
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愛知であれば名古屋関連本に含めてしまうアバウトさもありますが、どこにそれが出てくるのかを探す楽しさもあります。そのほか、“大須”など名古屋を舞台にしたお話の本を集めた「なごやばなし」というコーナーや、コメダ珈琲やドラゴンズなど名古屋にまつわるネタを集めたコーナーも。
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名古屋駅近くとあってターゲットは観光客ですが、地元の人にもぜひ足を運んでほしいと話します。(堀江浩彰 社長)「名古屋の人にも見てほしかった。こういう作家さんがいるとか、こういうネタがあるとか、こういう食べ物があるとか」
ここでは古書・古本のコーナーもありますが、そこで1番売れていたのはCBCにゆかりのある本でした。(大石アンカーマン)「元CBCアナウンサーの中島公司さんの本。これアナウンス部にあったので、私も読んだことありますよ」
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(堀江浩彰 社長)「これはNAgoya BOOK CENTERの古書部門で一番売れている本です」
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この「名古屋 味どころ」は店頭に並んで半年たらずでおよそ20冊が売れました。売上げは徐々に伸びてきていますが、書店経営で生計を立てていくには大型店舗でないと難しいと感じています。(堀江浩彰 社長)「本自体の利益率がすごく低い。1000円の本が売れたとして利益は220円くらい。本屋で暮らしていこうと思うと、かなりの数を売らないといけない」
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それでも町の書店を守りたいという思いから、ビルのオーナー業やデザイン会社など、本以外の収入源を確保しています。
(大石アンカーマン)「愛知、名古屋で苦しくなったら、どうですか東海3県に広げたら」(堀江浩彰 社長)「それはしないですね。コンセプトが薄れちゃうと、店の根幹が揺らいでしまいますので、だめルートまっしぐらになってしまうので。そうならないように、こだわりは強く持った上でいきたい」
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名古屋市西区で60年近く書店を営む服部さんも業界の厳しさを肌で感じています。(服部書店 服部順子さん)「あっという間に世の中が変わって、うちなんか小さな本屋になってしまった。大きい本屋ばっかりになっちゃったから」
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(大石アンカーマン)「この業界について、どのようにみている?」(服部順子さん)「すごく悪くなったと思う。衰退した」
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跡継ぎはいないため、服部さんの代で店を閉めることに。それでも、地元の人に支えられていると実感しています。
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(服部順子さん)「若い子も来てくれて『このコミック売れているよ』『これたくさん入れた方がいい』と教えてくれる」
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お店の一番目立つ場所には、店に良く来る地元の若者や子どもがおすすめのマンガがずらり。コミュニティの繋がりこそ、「町の本屋さん」の強みです。
(服部順子さん)「縁があってここで店をやらせてもらって、皆さんにかわいがられてここまでやってこられた。体がしんどいから辞めると言うとみんなが『辞めたらだめだよ』と言ってくれるから、揺れ動いています」
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2023年6月22日放送 CBCテレビ「チャント!」より