帝国の栄光は何処へ… イギリス軍が過去イチ弱い!? 高官も「ナポレオン戦争以降で最悪」と嘆き

2023年7月4日、イギリスの下院で開かれた国防委員会の会合で、衝撃的な報告がありました。イギリス軍の大半の戦車と艦艇が戦闘可能な状態にないというものです。一体なぜこんなことになったのでしょうか。
2023年7月4日、イギリスの下院で開かれた国防委員会の会合で、衝撃的な報告がありました。それはイギリスが保有している兵器の稼働率が、極端に減少しているという事実です。
帝国の栄光は何処へ… イギリス軍が過去イチ弱い!? 高官も「…の画像はこちら >>揚陸艦に乗る「チャレンジャー2」戦車(画像:イギリス陸軍)。
報告では、一例として陸軍の戦車と海軍の艦艇で即時に作戦可能な戦力が公表されましたが、それによると現状で戦闘準備が可能な戦車は40両、艦艇に至っては計12隻の駆逐艦とフリゲートしかないことが明かされました。
この件に関して、首相や国防相をサポートする、いわゆる制服組のトップであるトニー・ラダキン国防参謀総長が不快感をあらわにし、ナポレオン戦争(1803年5月18日~1815年11月20日)以来、最も規模が縮小していると指摘。さらに、「わがイギリスは現在“狂ったように”装甲戦闘車に投資しているが、それは“10年後に”利用可能となるだろう」と皮肉たっぷりに語ったのだとか。なお、その後には「軍全体に言えることだが、我々はより装備を充実させる必要がある」とも付け加えたそうです。
安全保障に詳しい同国国会議員も、現状では北大西洋条約機構(NATO)に満足な兵力を供給するなど幻想であると見ているようで、このままでは、ロシア関連の問題で何らかの有事が発生した場合、対処できないと批判しています。
イギリス陸軍は、数字の上では「チャレンジャー2」主力戦車を約200両保有しているといわれていますが、稼働率が極端に低下しているようで、2020年の段階で稼動率50%という数字を出し、問題になっていました。さらにその後、ウクライナに供給するなどの動きがあったものの、その分の14両を差し引いたとしても、この3年で同戦車の稼働率はさらに半分にまで落ちているとのこと。このハナシが本当なら稼働率は約25%。現在すぐに動ける車両が40両しかないという報告も、偽りではなさそうなことがわかります。
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23型フリゲート(画像:イギリス海軍)。
軍艦の方は大小の艦艇合わせイギリス海軍は70隻保有していますが、空母に関しては「プリンス・オブ・ウェールズ」がトラブル続きで満足に動いておらず、原子力潜水艦に関しても維持費の高さが長年指摘されており、稼働率は最小限に抑えられているといわれています。
イギリス軍の戦力低下の一番の原因は予算の削減にあると見られています。2010年代からイギリスは大幅な防衛予算の削減を行っており、人員削減なども並行して実施していました。
しかし、ボリス・ジョンソン政権時代に、若干の安全保障戦略の見直しを図り、老朽化した装備の更新などを行っていました。ロシアによるウクライナ侵攻が始まった2022年2月以降は、欧州での脅威を鑑みて、ひとまず国防費をGDPの2%程度という割合を維持しつつ、2030年まで段階的に3%まで引き上げる方針をリシ・スナク首相は立てています。しかし、年11%にも上るインフレ率の影響もあり、上手くいっているとは言い難い状況です。