直木賞受賞の垣根涼介さん、歴史小説執筆開始から10年での受賞に「今日はたまたま僕の日でもあったのかな」

「極楽征夷大将軍」(文藝春秋)で第169回直木賞に輝いた垣根涼介さん(57)が19日、東京・内幸町の帝国ホテルで行われた受賞会見に登場した。
3回目のノミネートで受賞となった垣根さんはオレンジの鮮やかなシャツ、ジーンズにニット帽をかぶって登壇した。
「こういう、まばゆい場所に出るのは随分、久しぶりで若干、緊張しております」と冒頭、話すと「僕は10年くらい前から歴史小説を書き始めたんですが、この10年で他の賞も含めて5回くらい候補には挙げてもらったけど、すべて受賞に至らず。今回もどうかなと思ってましたが、6度目でこういう檀上にいることができて、本当にホッとしています」と話した。
「笑って読んでくれればいいという気持ちで今回、書きました。僕自身は一生懸命書いていますが、読む方は面白おかしく読んでくれて、最後に何かが残ったらいいなという気持ちで書いています」と続けると、「連載に2年半かかって、その後、1350枚くらいに削ったのが一番辛かったです。その苦労が報われたのがうれしかったです」と話した。
最後に「今回はいろんな方々の後押しがあって受賞の運びになった。それは分かった上で、今日はたまたま僕の日でもあったのかなって感じですね」と冷静に締めくくった。
選考委員を代表して会見した浅田次郎氏は「1回目の投票で4人が残りました。垣根さんと永井さんが同点でトップ。2度目の投票を行った結果、同じ得点で同じ時代物2作に決まりました」と話した上で「垣根さんの作品は足利幕府の成立を描いた大変な力作。長い歴史の時間を巨視的に見ている重厚な作品で愚直なまでの力作という評価でした」と評した。(中村 健吾)