資産運用・投資のお悩みを解決 第8回 新NISAの注意点は? 気づかないうちにリスクを取り過ぎる危険も

来年から始まる新NISA。非課税で投資できる枠が最大1,800万円に拡大され、生涯にわたって利用できる制度となりました。多くの人にとっては、NISAだけで資産形成が完結することになります。

NISA枠が拡大し、資産運用に取り組みやすくなることは大きなメリットです。一方で注意すべき点もあります。

資産運用はライフステージで変える

そもそも、資産運用は一人ひとりのライフステージによって変えていく必要があります。

たとえば、20~30代などこれから長く働く人が老後のために運用するときは、高いリスクをとって高いリターンを目指すことができます。使う時期がまだ先だからです。金融危機が起こって資産が大きく目減りしたとしても、相場が回復するのを待つことができます。

一方で、すでにリタイアした人やリタイアが間近に迫っている人は、リスクを下げて資産運用をするのがよいと言えます。資産を使う時期に入っており、相場の変動で資産を大きく目減りさせることをできるだけ避けたいからです。

下の図は、資産運用をするときのリスクとリターンの関係を示しています。横軸がリスクで縦軸が期待できるリターンです。

これから20年、30年と資産運用をしていく場合は、右上のような株式を中心とした資産配分がおすすめです。ある程度のリスクを取りながら高いリターンを目指す運用です。

一方、リタイヤ後もしくはリタイアが間近に迫っている場合は、左下のような株式の割合が少なめの資産配分がいいでしょう。高いリターンは期待できないものの、リスクをしっかり抑えて運用する方法です。
知らず知らずリスクを取りすぎる可能性も

いま「つみたてNISA」の投資先として人気があるのは、リスクをとって高いリターンを目指す株式の投資信託です。実際、米国株(S&P500など)や世界株(「オール・カントリー」など)に投資しているという人もいるかもしれません。

たとえば資産の多くが預金であり、ごく一部を株式投資にまわしているのであれば問題はありません。

気を付けなければいけないのは、新NISAになると、投資枠が1,800万円へと大きく拡大する点です。最初は資産のごく一部で投資していたはずが、いつの間にか投資額が膨らみ、リスクを取り過ぎていたということにもなりかねないからです。

同じ理由で、ライフステージの変化にあわせて資産配分もより慎重に考える必要があります。

たとえば20代で投資を始めるときには、ある程度リスクをとって高いリターンを目指すのもよいと思います。しかし同じ資産配分で30年、40年と運用を続けていくのは無理があります。リタイアが近くなったときにリスクを取り過ぎている可能性が高いからです。
リスクを見極めて新NISAと長く付き合う

ではどのように行動すればよいでしょうか。ポイントは自分に合った資産運用をすることです。

新NISAの枠は1,800万円と大きいので、多くの人は長い時間をかけてNISAと付き合うことになります。

もしリスクを取り過ぎてしまうと、相場の動きを見て不安になったり、株価が急落したときに資産運用をやめてしまうかもしれません。将来のために資産運用をしているはずなのに、それでは本末転倒です。長く続けるためにも、自分に合った資産運用をすることが大切です。

リスクを抑えるには、株だけでなく債券や金、不動産など資産を分散するのがおすすめです。参考までに、ウェルスナビは5段階の資産配分を用意しており、自分が取れるリスクに合った資産運用を行うことができます。どのような資産配分で投資しているかはホワイトペーパーで公開しています。

また自分がどれくらいのリスクを取れるか迷った際は、無料で診断を受けることができます。ライフステージに応じた資産運用をするうえで参考になると思います。

自分にあった資産運用をすれば、結果的に長く続けていくことができます。

牛山 史朗 ウェルスナビ 執行役員 リサーチ&クオンツ 働く世代の誰もが「長期・積立・分散」の資産運用を行えるようにしたいという想いから、2015年12月にウェルスナビに入社。金融工学の専門知識を活用し、自動の資産運用サービス「WealthNavi(ウェルスナビ)」の資産運用の仕組みを開発・リードしてきた。ウェルスナビ入社以前には、三菱UFJ信託銀行で個人向けの資産運用アドバイスなどを担当した後、野村證券にてグローバルな投資戦略の開発を行った。京都大学工学部で人工知能を研究、京都大学大学院情報学研究科で金融工学を専攻。 この著者の記事一覧はこちら